(株)旺文社が、全国の高等学校におけるICT活用状況を調査。ICTの教育利用に関する近年の傾向と課題について、過去2年分の調査結果との比較を交えた分析結果を公開しました。
タブレット型PCを校内に1台以上導入している高等学校の割合は、昨年度調査から微増の36.2%、2年前からは6.6ポイント増でした。地域別にみると、関東、関西、九州・沖縄の3地域では、いずれも40%を超えており、ICT活用機器としてタブレット型PCが注目され、導入・配備が全国的に広がっていることがうかがえます。また、導入校では「生徒1人1台配備」と答えた高等学校の割合は19.3%となり、大幅増となった昨年度調査からさらに2.4ポイント増となりました。
タブレット型PC導入高等学校に対し、活用状況について調査したところ、昨年調査時から12.5ポイント増え、全体の67.7%が「十分活用できている」あるいは「まあまあ活用できている」と回答。また活用にあたっての課題としては、昨年度と同じく「教員の活用スキルの引き上げ」「ネットワーク環境の整備」「十分な端末数の配備」が、回答数の上位を占めました。「生徒の情報モラルの向上」は昨年度より増えており、学校で生徒自身によるICT利用の機会が増えたことによって、情報倫理に対する教育面での課題が表面化していることがわかりました。
学校側での環境構築とは別の観点でICT機器の利用実態に注目すると、「生徒の私物端末(スマートフォン・PC等)」を使用していると答えた高等学校は全体の19.3%に上り、昨年から6.8ポイント増。また、学校における生徒私有のモバイル機器端末の使用制限状況についてみると、全体の7割弱の学校が「持参・使用を禁止している」と答える一方で、「学習などの目的であれば校内で自由に使用できる」の回答割合は、昨年の調査から4.5ポイント上昇。生徒の私物端末を教育目的に利用する動きが高まっていることを裏付ける結果と考えられます。こうした動きは、学校現場での「BYOD」の導入として近年注目を集めており、予算面などでICT端末の調達に課題がある場合において、生徒が使い慣れた自分の所持端末を、校内のネットワーク通信を通じ学習面においても利用することで、多くの費用をかけずにICT活用のメリットを学校現場に創出する、有効な方策として期待されています。
今後の展望については、2020年度の大学入試改革の流れを受けて、対策の必要性が高まる「英語4技能」についての指導や「eポートフォリオ」の導入など、ICTと密接に関わるトピックについて、活用への課題意識やサービスの充実を期待する意見が多く見られました。一方で、ICT導入によるペーパーレス化やデータ活用などによって、教員の教務を効率化する、授業内容をより深化するといった、既存課題の改善においても、その利用意義が見出されていることがわかりました。
教育改革の流れを受けて膨張・多様化するICT活用への期待と課題が変化する時期となっているようです。旺文社では、各高等学校の実情に則した教育ICTサービスの提供と、活用のためのサポートに取り組んでいきます。