文部科学省では、広く学術研究や教育施策の推進などに活用できるよう、昨年3月に「『全国学力・学習状況調査』の個票データ等の貸与に係るガイドライン」を策定し、「全国学力・学習状況調査」の集計結果データ(個票データ及び匿名データ)を大学の研究者や公的機関等に一定期間貸与する仕組みを設けています。
個票データの利用申込受付及び貸与は年2回、匿名データの貸与は2ヶ月に1回程度(利用者申し出受付は随時)を予定しています。貸与に当たっては、申出者に対して分析・公表等の個票データ等の利用目的・趣旨が以下のいずれかに該当することを確認します。
1.我が国の児童生徒の学力、学習状況又は生活習慣等の把握・改善を目的としていること。
2.我が国(又は教育委員会)の教育施策の改善・充実に資することを目的としていること
調査結果の取扱いには注意を必要とすることから、匿名化の度合いに応じて貸与・公表するデータを3段階に分けています。
「個票データ」は、学校名も含む全ての情報が含まれるデータの中から、申出される研究に必要最小限の範囲のデータに限って、有識者会議による審査の上で貸与されますが、個々の児童生徒の解答用紙番号は貸与されません。国が公表していない教育委員会名・学校名が明らかになるデータを貸与または公表する場合には、貸与前は文部科学省が、公表前は申出者が当該学校の設置管理者の同意を得る必要があります。
「匿名データ」は都道府県名を含む地域情報等に関するデータを削除するなどの匿名化を行った上で、全国の児童生徒から一定割合、無作為に抽出されたデータです。ガイドラインに基づいた利用を行う場合に、児童生徒個人、学校、設置管理者を特定することは困難です。個票データよりも簡易な審査で貸与されます。
「パブリックユースデータ(疑似データ)」は、調査結果の統計的性質を一部保存した上で、集計表の統計量から乱数を発生させて作成した疑似データをホームページ上に公表します。特定の児童生徒個人、学校、設置管理者を示すモノではなく、データは教育目的等のため試行的に、個別情報の秘匿を気にすることなく自由に利用できますが、導かれた分析結果は実証研究の結果とみなすことはできません。
全国学力・学習状況調査はその数値的な結果がクローズアップされがちですが、こうした研究に結果を使われる事が重要な意義の一つではないでしょうか。個人情報に十分配慮した上で、有効に活用してもらいたいですね。