パラリンピックやパラスポーツを題材に、親子で障害者のリアルを聞き、学び、一緒に考えてもらうことを目的に、オンライン版「NEC親子向けジュニアアカデミー」(主催:日本財団パラリンピックサポートセンター、協賛:NEC)が11月29日(日)に開催され、約60組150名の親子がオンラインで参加した。
(写真提供:日本財団パラリンピックサポートセンター)
■「あすチャレ!」プログラムを全国で展開
日本財団パラリンピックサポートセンターは、パラスポーツを通じて、一人ひとりの違いを認め、誰もが活躍できるダイバーシティ&インクルージョン社会の実現を目指す「あすチャレ!(あすへのチャレンジ)」プログラムとして、小中高等学校を対象とした「あすチャレ!ジュニアアカデミー」、大学生から起業、自治体向けの「あすチャレ!Academy」(ともに協賛:NEC)を全国で展開している。
■講師が障害当事者だからこそ伝えられる経験を体感
今回の「NEC 親子向けジュニアアカデミー」は2020年8月からスタートした、オンライン版「あすチャレ!ジュニアアカデミー」をベースに、講師が障害当事者だからこそ伝えられる経験を体感し、共生社会に向けて何ができるかを親子で考えた。
■パラ・パワーリフティングで東京パラリンピックを目指す山本さんが講師に
講師を務めたのは車いすユーザーのパラ・パワーリフティング選手で、東京2020パラリンピック出場を目指す山本恵理さん。先天性の二分性脊椎症により、生まれつき足が不自由な山本さんは、パラ水泳の近畿大会や日本選手権に出場。2016年5月、東京都主催のパラリンピック体験プログラムで初めてパワーリフティングを体験し、「もう一度、夢を追いかけよう」と決意。現在、選手として東京パラリンピックを目指すことになった。
■水泳嫌いの山本さんが水泳教室に通うことに
幼い頃からスポーツが苦手で、水に入るのも怖かったという山本さんを見た母親は、水泳教室に通わせようとしたが足が不自由な子供を受け入れてくれる水泳教室は、なかなか見つからなかった。それでもあきらめなかった母親は「障害児のための水泳教室」を新聞で見つけて、そこに通うことになる。
■どんな苦手なことでも1回は挑戦を
水泳教室に通うのが嫌だった山本さんは、溺れる演技をすれば、やめさせてもらえると思ったが、水に入って溺れようとしたところ体が浮いて、自分が泳げることに気付く。その時、「水の中ならば、こんなに自由なんだ」と感じたことを、今でも覚えているという。その経験から「どんなに苦手なことでも、必ず1回は挑戦して」と語る。
■夢をあきらめずに持ち続けて
その水泳教室で「パラリンピックに出場しないか」と声をかけられたのが山本さんの大きな転機となった。それまでパラリンピックという言葉も知らなかったが、小学校3年生の頃からパラリンピックに出場することを夢見て努力を重ねることになる。その後、ケガにより一度は夢をあきらめるが、新たにパラ・パワーリフティングでの出場を目指すことになる。「最初に思い描いた夢は、ぜひ持ち続けて」と子供たちにメッセージを送った。
■車いすに関するクイズを出題
続いて山本さんから参加者にクイズを出題。「車いすで5㎝ほどの段差を乗り越えられるか」という質問に、子供たちは答えを書いたボードを掲げていく。解答は半分ぐらいに分かれたが、車いすの前輪を浮かすことで10㎝ぐらいの段差ならば乗り越えることができる。実際に山本さんが車いすの前輪を浮かせて見せると、子供たちから驚きの声があがった。
■工夫次第で多くのことを乗り越えていける
「車いすの人は車の運転ができるか」というクイズも子供たちの解答は「できる」「できない」に分かれた。これは「できる」が正解。足を使うことができないが、手元のレバーを押すことでブレーキがかかり、引くことでアクセルが作動する。このように工夫することで、障害があっても多くのことを乗り越えていけると知ってほしいとする。
■やりたいことがあったら自分から発信
小学生の時に引っ込み思案だった山本さんは、遊びたくても自分から声をかけることができなかった。母親から「どうして友達と遊ばないの」と聞かれて、「誘ってくれないから」と答えたが、母親からは「遊びたいのなら自分から声をかけなければダメ」と叱られた。それから自分のやりたいことを発信することの大切さを学んだ山本さん。「みんなもやりたいことがあったら、恥ずかしがらずに自分から発信して」という。
■明日からチャレンジしたいことをノートに
最後に山本さんから参加した子供たちに「明日からチャレンジしたいこと」をノートに書いてと呼びかけた。子供たちは「バスケットボールのドリブル」「サッカー」「ボウリング」など、それぞれがチャレンジしたいことをノートに書いてイベントは終了した。