ろう・難聴児や外国につながる子供のために、小中学生向けの映像授業約1600本に字幕をつける「やさしい字幕」プロジェクトを公開。オンライン学習が困難となっている子供の学習機会を保障する。
■オンライン学習が困難や難聴児や外国につながる児童に向けて
NPO法人eboardは、映像授業とデジタルドリルで個々に応じた学習をサポートするICT教材「eboard」を、国内800か所以上の学校、学習塾、NPOなどに提供している。ICT教材「eboard」は新型コロナウイルス感染拡大に伴う学校休校期間に、オンライン授業に取り組む学校などで利用された。一方、聴覚障害や日本語への配慮を求める要望などが相次いだことから、ろう・難聴児や外国につながる子供の学習機会を保障するため、本プロジェクトの開始に至った。
■文章を簡素化してAIによる自動翻訳の精度を向上
「やさしい字幕」は、字幕の表示量の調整、言葉や文章構造の簡素化を行うことで、学習のハードルが下がるよう編集された字幕。文章の簡素化を行うことで、AIによる自動翻訳の精度が上がるため、各国言語の翻訳字幕を使った学習の支援に利用することができる。
■約1000名の在宅ボランティアを募集中
「やさしい字幕」プロジェクトでは、字幕の作成・編集に協力してくれる企業・団体などの社員や個人を合わせて、約1000名の在宅オンラインボランティアを募集している。
※以下の3つのグループの子供たちを主な対象に、計7万人以上の学習機会を保障する。
①ろう学校の児童・生徒、難聴児
日本国内では、字幕がついた映像授業が限られていることに加えて、複雑な文章や表示量の多い字幕を読むことに困難を抱える子供が存在する。通常学級にも難聴の子供がいるが、聴こえのレベルは一人ひとり異なるため、その多くが学習や学校生活の中で支援を必要としている。
②外国につながる日本語の支援が必要な子
2018年の文部科学省調査では日本語指導が必要な児童生徒は全国に48238人いる。こうした子供たちに加えて、最大約2万人に不就学の恐れがあることが分かった。外国人が多く住む自治体や地域では、その支援が進んでいるものの、外国につながる子供が在籍する学校が散在する地方群では支援が難しい状況にある。
③発達障害などの学習の困りごとを抱えた子
特別支援学級や個別の支援を受ける通級に在籍する児童生徒の数は、年々増加しており、文部科学省の調査では、特別支援学級や支援学級以外の通常の学級に在籍する児童生徒のうち約6.5%にも発達障害の可能性があるとされる。障害や認知に関わる特性により、それぞれの子供たちにあった教材や学習方法は様々だが、聴覚による情報の処理が苦手な子の中には、視覚情報である字幕が学習の助けになる子もいる。