科学技術振興機構(JST)理数学習推進部は、2004年度から中高生を対象とした国際科学技術コンテスト支援事業を実施してきた。今年は7月に「国際生物学オリンピック」を日本で開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、リモート大会である「IBOチャレンジ2020」に変更して8月11日(火)・12日(水)に行われた。
■毎年、7教科の大会を支援
JSTでは数学、化学、生物学、物理、情報、地学、地理の7大会を支援し、毎年31名の高校生を選手として派遣。教科ごとに筆記、実験、フィールドワークなどの試験を開催してきた。すべて個人戦で、出場選手の成績順に10%に金メダル、20%に銀メダル、30%に銅メダルが授与される。国内大会の1次選考の参加者は増加を続け、2019年には21,186人と過去最多を記録した。
■新型コロナウイルスの影響で中止やリモート開催に
各教科の大会は毎年夏に、各国持ち回りで開催され、2020年は生物学の大会が長崎県で開催される予定だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、地学と地理は中止、物理はリトアニア大会を延期してヨーロッパでリモート開催、そして数学、化学、情報、生物学はリモート開催となった。
■長崎県で開催予定の生物学大会はリモート開催が決定
第31回国際生物学オリンピック2020長崎大会の組織委員長である浅島誠氏(東京大学名誉教授、帝京大学学術顧問・特任教授)によると、2020年1月21日までは予定通り長崎県での開催を予定していた。その後、新型コロナウイルスの流行拡大に伴い、検討が重ねられ、3月25日に長崎大会の中止を決定。その後、リモート大会に向けて動き出した。
■予想を上回る53か国・地域が参加
各国にリモート大会の参加の意思を確認したところ、最終的に53か国・地域の参加が決定。昨年のハンガリー大会と比べると約74%の参加率だが、リモート大会としては予想以上の国から賛同を得ることができた。
■日本から参加した4名の高校生は全員メダルを獲得
「IBOチャレンジ2020」は、8月11日・12日の2日間にわたりオンラインで開催された。世界各国から202名の中高生がリモートで参加。日本では東京・千代田区の科学技術館を会場に4人の生徒が出場し、1日目は実験試験、2日目は筆記試験が行われた。8月24日(月)には成績が発表され、末松万宙さん(栄光学園高等学校・3年)が金メダル、金久礼武さん(高知学芸高等学校・3年)、川本青汰さん(京都府立洛北高等学校・3年)、松房愛実さん(桜蔭高等学校・3年)が銀メダルを受賞するなど全員がメダルに輝いた。
■学校では学べない専門的な分野にチャレンジ
金メダルを受賞した末松万宙さんは「国際大会に出場するだけでなく、そこに至るまでの過程において、多くのことを学ぶことができた。学校で学ぶこととは異なり、専門的な分野から出題され、そうした意味でも大会への出場は新鮮だった。国際交流プロジェクトでは世界中の高校生と話し合えるということで楽しみにしている」と感想を語った。
■国際交流プロジェクトで海外の選手とポスターを作成
リモート大会ならではの初の試みとして、国際交流プロジェクトを企画。それぞれ国の異なる4名の選手が1つのグループとなり、過去の大会に出場したOB・OGがファシリテーターとして参加。「進化」「多様性と海洋」「ゲノム編集」「感染症」の4つのテーマから1つ選び、オンラインで話し合った結果を2020年10月末までにポスターにして提出する。結果はHPで公開される予定。
■オンライン開催を通じて、現大会のあり方を改めて考える
オンラインでの開催に踏み切った理由として、浅島氏は「世界の同年代と実力を試す機会の提供」、「生徒本位のチャレンジの場の提供」、「新しい生物学との出会いの場の提供」、「次世代の人材育成と国際交流の活性化」の4点をあげる。今回、リモート大会を開催し、「現地で大会を行う理由を改めて考える必要がある」と湯島氏は語る。これをきっかけに、新しい教育スタイルや国際大会スタイルを考えることで、大会がより良いものとなることが期待される。
<令和2年度 科学の甲子園ジュニアエキシビション大会>
JSTは「第8回科学の甲子園ジュニア全国大会」の開催中止を受け、教育とオンラインを組み合わせた新しい科学コンテストの先駆けとして、「令和2年度 科学の甲子園ジュニアエキシビション大会」を以下の日程でオンライン開催する。2020年12月5日(土)オンラン筆記競技予選、12月12日(土)オンライン筆記競技本選、11月16日(月)~12月21日(月)特別体験プログラム。
■全国の中学1・2年生がオンラインで参加
この大会は、科学好きの視野を広げるとともに、次世代の科学イノベーションの創出を担う優れた人材の育成が目的。全国の中学1・2年生が各都道府県内で3~6人のチームを編成し、数学や理科の力を競う。チームは「オンライン筆記試験」と「特別体験プログラム」の両方、またはいずれかに参加でき、成績は「オンライン筆記競技」の総合得点で決定する。
■実施・協力体制
主催:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
共催:兵庫県、兵庫県教育委員会
後援:文部科学省(予定)、全日本中学校長会(予定)、全国中学校理科教育研究会(予定)
公益社団法人日本理科教育振興協会
都道府県教育委員会及び協働パートナーの協力を得て開催
■ 開催日程
エントリー期間:2020年11月16日(月)10:00~11月27日(金)17:00 まで
オンライン開会式:2020年12月5日(土)13:00~13:30(予定)
オンライン筆記競技予選:2020年12月5日(土)14:00~15:00
オンライン筆記競技予選結果発表:2020年12月10日(木)15:00
オンライン筆記競技本選:2020年12月12日(土)14:00~15:00
オンライン表彰式(本選結果発表):2021年1月12日(火)16:00~16:30(予定)
特別体験プログラ:2020年11月16日(月)~12月21日(月)
特別体験プログラム結果公開:2021年1月18日(月)から順次公開(予定)
■エントリーについて
エントリーの単位は、1チーム3名以上 6 名以内とする。同一都道府県内であれば学校が異なっても編成は可能。
エントリー資格は、中学校1年生および2年生相当の生徒とする。
エントリーはオンライン筆記競技と特別体験プログラムについて行う。特別体験プログラムのみ参加する場合もエントリーを行う。
エントリーの方法については、各都道府県教育委員会を通じて各学校に改めて連絡する。
■競技内容
オンライン筆記競技は、PC等を用い、自宅や学校で競技に取り組む。実施場所は感染状況を踏まえ、代表者および参加者が判断する。
オンライン筆記競技時にチームメンバー内の相談は可能(状況によりビデオ会議や電話等も活用可能)とする。ただし、解答にあたって教科書、参考図書、WEB上の情報、チーム外の人物からのアドバイスなどを参考にすることはできない。
オンライン筆記競技は予選と本選から構成される。
予選の結果により本選出場チームを選抜。具体的には、以下のいずれかもしくは両方に該当するチームが本選に進むことができる。
① :各都道府県内で予選1位のチーム
② :①のチームも含めた全体予選順位で上位 50 位以内のチーム
■特別体験プログラム
科学の甲子園ジュニアの実技課題を体験してもらうため、特別体験プログラムを実施。
実技課題は、各チームメンバーが自宅にいても、ビデオ会議や電話などでコミュニケーションを取りながら実施できる内容を出題。
実技課題は、順位付けや表彰は行わない体験プログラムとなっている。
特別体験プログラムのみの参加も可能。