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学校評価で学校改善(最終回) 「外部評価で」生徒が変わる

小山宣樹
小山宣樹
11年間教育行政に従事。工業高校学校長として学校改革に着手。現在全国工業高等学校長協議会で文科省委託事業の運営委員。

学力向上や生徒指導の問題解決は、指導の強化などの直接的な方法になりがちだが、発想を変え、地域の人々と協同する形での外部評価を導入することを提案したい。

全日制7学科、定時制2学科を有する和歌山県立和歌山工業高等学校では、平成26年の創立100周年を前に、教育計画を見直し、前回掲載の和歌山県立紀央館高等学校の成功例を参照して「地域との協同」を重視。学校のミッション(使命)とビジョンを「地域産業の人材育成」を中心に考えた。紀央館高でその効果が実践済みだったからだ。

生徒が地域産業の担い手として相応しくなることを目的に、地元企業等の要請に応える「ものづくり」を教育課程に位置付けた。建築科では和歌山県屋根工事業協会と共催し、日本独特の文化である瓦に興味・関心を持てるように「かわら職人による瓦葺き体験実習」を実施。産業デザイン科では、3Dプリンターを用いた地域の仏像等のレプリカやレーザー加工機による福祉用具を製作。創造技術科では、地元貴志川線の利用促進につなげる目的で「ミニたま電車」を製作。化学技術科では、'13食博覧会・大阪において「地球にやさしい循環型社会」を目指す実験教室を計画。使用済み油でバイオ燃料を生成してディーゼルエンジンやレーシングカートを動かした。

授業が地域や外部とつながると、生徒も地域や外部発信に関心を持ち、積極的になる。生徒は自主活動として、地域に出かけてロボット等のものづくりを小中学生に教えるようになり、これまで学校内で閉じていた実習授業や学習が外に開かれていった。日々の学習に、地元企業等外部の期待や要請に応えられたかという視点が加わるため、生徒と教員が共に考え、振り返り、修正して次の活動を継続していくアクティブ・ラーニング型の活動が実現。考える力や技術力等の向上、生徒の社会人基礎力の養成、地域貢献など様々な効果が上がった。

インターンシップについての評価方法も見直し、社会人基礎力12項目に関わる自己評価も実施。生徒の自己評価は高く、インターンシップ実施の意義の再認識と共に、現在不足している能力についての共通理解も進み、教育計画のさらなる強化が進んだ。同校では本取組の一層の強化に向けて、中間期末テストを廃止することで時間を生み出し、到達度テストを取り入れた自主的な学習の仕組み作りが始まろうとしていたが、自身の退職という壁に阻まれ、こちらについてはまだ実現していない。その有用性を訴求し、応援していきたい(了)

 

【2016年1月1日】

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