第43回教育委員会対象セミナー・大阪 ICT機器の整備計画/校務の情報化
10月17日に第43回教育委員会対象セミナーを大阪・CIVI研修センターで、11月2日に第44回教育委員会対象セミナーを札幌コンベンションセンターで開催した。大阪で開催された講演内容を紹介する。次回、第45回教育委員会対象セミナーは、12月6日に東京・KFCホールで開催する。
文部科学省情報教育課・松本眞課長補佐 |
「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が本セミナー前日である10月18日に公表された。「多くの教育委員会から問い合わせがあり、パブリックコメントも約200件届くなど調整に時間を要した」と述べた上で、ガイドライン策定の主旨について説明した。
新学習指導要領では小学校においてプログラミング教育が必修化されるなど、社会経済の変革に伴う教育内容の見直しが行われており、それに伴い文部科学省では、学校のICT環境整備の充実・強化を進めている。
教員が校務用PCを使って児童生徒の情報を管理する、教材を作成する、児童生徒が情報端末からインターネットにアクセスする等、学校の情報化が進むほど、ネットワークにおけるセキュリティ確保が求められる。
学校では、「教員」に加え、「児童生徒」も情報端末を活用し、それぞれが取り扱う情報の種類や機微度も異なる。この点は学校ならではの特徴であり、自治体・行政のセキュリティポリシーとは前提が大きく異なることから、学校や教育現場に特化したガイドライン策定に至った。
平成28年7月4日に、学校における情報漏えい事案が発生したことを踏まえ「教育情報セキュリティのための緊急提言」を取りまとめたが、今般、この内容も含めガイドラインとして取りまとめている。本ガイドラインは、総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえつつ、学校の特徴を想定しながら策定を進めた。例えば、電子黒板など行政ではほぼ活用されていない「情報機器」が学校には普及していること、学校には事務職員、教員、児童生徒が存在し、とりわけ児童生徒による情報端末の活用は、調べ学習等でのインターネット接続が前提とされていること、行政で求められている堅牢なサーバ室の設置は学校には難しく、職員室も含め児童生徒が出入りすることが想定されていること、ネットワークの接続形態も行政機関の方で集約しておらず、学校から直接インターネット契約をしている場合もあること、教員は教育を司る専門職であり、システムの開発・変更等を担うことが当初から想定されていないことなど様々だ。
セキュリティポリシーは本来、自治体が自主的に策定するものであることから、本ガイドラインは、情報化の進展に伴ってポリシーを見直す際に参照するもの、という位置付けだ。重要なポイントは、情報システム管理については現状、学校に任されている場合も多いが、本来は「教育委員会が情報システムを管理する」点を明確にし、さらに首長部局の情報システム部門と連携することである。特に、深刻なセキュリティインシデントへの対策や最新のインシデント事例の把握は、教育委員会だけでは難しく、情報システム部門との連携が不可欠だ。
最も時間をかけたのが、学校の持つ情報資産の分類である。行政系では機微度を3分類したが、教育系では、児童生徒がアクセスすることを前提とした情報資産もあることから、より細かく分類。運用しやすさを考えて分類方法の例示も増やした(ガイドラインP24〜31参照)。実際に各自治体で情報セキュリティ対策を講じるにあたり、本ガイドラインも参考にしながら、情報資産の機微度ごとに仕分けをすることが重要となる。
今後、さらに検討・整理を進めたい点は2点ある。1つがパブリッククラウドの活用について。現状のガイドラインはプライベートクラウドを前提にした内容が多い。パブリッククラウドの活用により運用費の低コスト化も進むことから、今後は、パブリッククラウド活用する際の考え方についても整理していきたい。
ククラウド活用する際の考え方についても整理していきたい。 次に、学習系システムと校務系システムの連携に関する検討だ。児童生徒のワークシートや制作物、小テストなど、2系統のシステム中で行き来する可能性のある情報が多いことから、安全に連携できる仕組みと要件についも整理する必要がある。この2点について、本年度から実施している「次世代学校支援モデル構築事業」で考え方を整理し、ガイドラインに反映していく計画だ。
本事業は3年計画だが、本事業に係る校務・学習系システムの調達は初年度になるため、本事業の終了を待たずして見直しを図っていきたい。なお全国10か所でガイドラインに関する研修も開催(詳細3面)。
【講師】文部科学省情報教育課・松本眞課長補佐
【第43回教育委員会対象セミナー・大阪:2017年10月17日】
【2017年11月13日】
1、国立教育政策研究所教育課程研究センター・鹿野利春教育課程調査官
2、文部科学省情報教育課・松本眞課長補佐
3、芦屋市教育委員会学校教育部打出教育文化センター・幸谷省吾主査
4、淡路市立一宮中学校・田渕一行教諭
5、朝来市立竹田小学校・國眼厚志教諭
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