教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化
第36回教育委員会対象セミナーを12月7日、東京・KFCホールで開催、12道府県から73名が参加した。次回は1月25日に福岡・天神クリスタルビルで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
神奈川県立 鶴見高等学校 柴田功教頭 |
「SNSは見るだけで十分」「特に発信することもないからやっていない」という教員は多い。一方で「SNSの問題を相談できる身近な大人であってほしい」、「先生に情報社会を生き抜く手本になってほしい」という思いを抱く生徒もいる。
教員と生徒のこうしたギャップを埋めるため神奈川県教育委員会では、高校生によるSNS講座を教員対象に実施した。開催のきっかけは「かながわハイスクール議会」での模擬議員の高校生の提言「先生にSNSを使ってもらうための講座を生徒主催で開催する」だ。黒岩祐治知事も賛同し、施策として決定。神奈川県教育委員会が教員にSNSを教えたい生徒を募集したところ、初年度は22名の生徒が集まり、SNS講座開催に向けて準備が進められた。
SNS講座の中心的役割を2年連続で担った神奈川県立光陵高等学校3年の加藤圭祐さんは「先生にSNSのことを、もっと知ってもらいたい」との思いから参加を決めた。講習前のリハーサルでは「講習ではなく単なる発表会」との指摘を受けたという。
「生徒は学習発表会の経験はあっても、研修講座は受けたこともなければ講師となるのも初めての体験。そこから仕切り直した」と柴田教頭(当時は指導主事)は開催までの苦労を語る。
講座は講義と実習から構成。講義では普段はどのような目的でSNSを使っているか、どれぐらい危険性を認識しているかなどを発表。続く実習では、情報端末を使って、参加した教員がLINEを体験した。LINEでのグループトークで「LINEはずし」も体験。1グループだけ意図的に外し、他のグループのやり取りを見られなくした。そこで、どのように感じるかを体験した。初年度の講習には約60名の教員が参加。半数以上がLINEは未経験で、講座後は「初めてLINEを使って刺激になった」、「スマートフォンを使ってみたい」という声が聞かれたという。
加藤圭祐さん |
「先生は1日の多くの時間を同じ場所で生活する身近な大人。これから先、困っとき、悩んだときに頼れる関係になることを望む」という高校生の声が紹介された。教員のSNSへの抵抗感は根強いが、柴田教頭は「高校生が時代の流れに逆行することはない。SNSに関しては大人が歩み寄るしかない。同じ目線に立ってくれることを望む高校生の声を皆に届けたい」と語る。
加藤さんは「大学のゼミに関する情報や災害時における情報など、若者にとってSNSは欠かせない存在。トラブルがあった際に相談できるように、先生にはSNSとはどういうものか知っておいてほしい」と話した。
到達レベルを4段階で示したルーブリックも作成。最低段階は「SNSを利用したことがない。興味もない」。柴田教諭は「SNSは影だけでなく、感動や喜びを多くの仲間と共有できるツールであるといった光の部分を語れる大人でありたい」と語った。
【講師】神奈川県立鶴見高等学校・柴田功教頭
【第36回教育委員会対象セミナー・東京:2016年12月7日】
【2017年1月1日】
1、文科省生涯学習政策局 情報振興室長・新津勝二氏/2、総務省情報通信利用促進課長・御厩祐司氏
3、相模原市総合学習センター 学習情報班・篠原真担当課長/4、文京区立湯島小学校・原香織校長
5、神奈川県立鶴見高等学校・柴田功教頭/6、神奈川大学附属中高等学校・小林道夫教諭
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