教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化
第36回教育委員会対象セミナーを12月7日、東京・KFCホールで開催、12道府県から73名が参加した。次回は1月25日に福岡・天神クリスタルビルで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 情報振興室長 新津勝二氏 |
第4次産業革命の対応が世界中で進んでいる。人工知能(AI)との共存は今後一層求められるようになる。教室だけが第2次産業革命(アナログ)のままでよしとするのか。それで子供たちの未来に責任が持てるのか、と問いたい。
学校現場に求められるものは、急激な変化にも対応できる「資質・能力」の育成とそれに向けた授業改善である。
今回の学習指導要領の改訂では、新しい時代に必要な資質・能力を3本の柱に整理している。「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」「学びに向かう力・人間性の涵養」。すべての教科等において資質・能力を3本の柱で整理することにより、教科等の関係が明らかになり、教育課程全体が構造化される。
また、すべての学習の基盤として、言語能力の充実とともに情報活用能力の育成が重要であり、タイピングやデータ保存などの基本的操作も含め必須の「資質」として明記。情報技術の進化にふさわしい情報モラルについても同様だ。
ICTの強みは「主体的・対話的で深い学び」の実現に大きく貢献できること。学習指導要領等の理念を実現できる環境づくり、即ち学校において日常的にICTを活用できる環境づくりが不可欠となっている。
情報機器活用が前提
高校の共通教科「情報」については、文系・理系を問わず、すべての高校生が情報の科学的な理解をベースにした内容を学ぶ共通必履修科目「情報T」(仮称)を設置。さらに、発展的な内容の選択科目「情報U」(仮称)が設置され、小中学校の情報教育との接続が図られる。
高大接続改革に向けても準備が進んでいる。高2段階で受ける「高等学校基礎学力テスト(仮称)」とセンター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を新設。基本的な学力の判定を行いつつ、思考力・判断力・表現力の判定にも重点を置くことになっており、記述式の問題の導入も検討されている。
これら新しい学習内容に対応するためには、教員の資質能力向上も欠かせない。
昨年12月の中教審答申では、新たな課題として、英語、道徳、ICT活用・指導法、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善などに対応した教員研修及び教員養成改革が求められている。
教員免許法一部改正では、各教科の指導で「情報機器及び教材の活用を含む」とされている。すべての教科において情報機器の活用が前提となることに注目いただきたい。
地方財政措置を活用
すべての児童生徒に情報活用能力を育成するにあたり、学校のICT環境の整備が急務であるが、現状では、自治体間・学校間の格差が拡大している。教育用PC1台あたり2・2人から8・2人まで、都道府県によって大きな隔たりがある。さらに、例えば東京都内でも市区町村によって、整備状況は大きく違う。普通教室の無線LAN整備率や電子黒板整備率も100%のところがある一方で、0%のところもある。
地方財政措置として整備費を予算積算しているにも関わらず自治体間格差が生じるのは、予算化が各自治体の判断に任されるためだ。しかし、学習指導要領の本来の趣旨は、全国どの地域であっても一定の水準の教育が受けられることである。
教育環境の格差が生じると教育の平等が保てなくなることから、地方財政措置の積極的な活用が急務といえる。ICTの特性・強みを考えれば、黒板と同じ道具として活用することにより効果が上がるのは明らか。中教審答申などを踏まえ、各自治体において積極的な環境整備の推進をお願いしたい。
現在、児童生徒の8割が何らかの形でインターネットを利用しており、平日の学校外で2時間以上インターネットを利用する割合は総数で5割を超えている。大人の知らないところでネットを通じて子供たちがコミュニケーションを図るような時代だからこそ、情報モラル教育を通じて、子供が自ら判断して行動できる力をつける必要がある。
【講師】文部科学省生涯学習政策局・情報教育課 情報振興室長・新津勝二氏
【第36回教育委員会対象セミナー・東京:2016年12月7日】
【2017年1月1日】
1、文科省生涯学習政策局 情報振興室長・新津勝二氏/2、総務省情報通信利用促進課長・御厩祐司氏
3、相模原市総合学習センター 学習情報班・篠原真担当課長/4、文京区立湯島小学校・原香織校長
5、神奈川県立鶴見高等学校・柴田功教頭/6、神奈川大学附属中高等学校・小林道夫教諭
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