教育委員会対象セミナー・札幌 ICT機器の整備計画/校務の情報化
11月10日、札幌コンベンションセンターで第35回教育委員会対象セミナーを開催した。北海道での開催は初めてであったが、51市町から124名が参集した。次回以降の教育委員会対象セミナーは、12月7日に東京・KFCホール、1月25日に福岡・天神クリスタルビルで開催する。
セミナー日程は教育家庭新聞Web (www.kknews.co.jp)へ
北海道教育委員会 教育政策課 情報化推進G 工藤雅人主査 |
工藤氏は「教育委員会の役割は、教育の情報化を推進するため、ICT環境の整備や教員の指導力向上を図る研修の実施である」と語る。「モデル実践校の教員の94%が忙しいと答えており、学校の事務作業の増加が、本来すべき教育内容に影響を及ぼしている」
そこで、道内全校が1つのシステムとデータベースで管理する「北海道公立学校校務支援システム」構想に着手。「小・中学校の約4割・約700校はへき地指定校であり、2割以上の学校が複式学級。それが広域分散している北海道において校務支援システムの整備は、事務削減に効果を発揮する」と考え、初年度である平成24年度、全道立学校268校と全42市町村88校の市町村立学校で運用を開始。その後、学校現場や市町村教育委員会からの要望をうけ全国で導入実績のあった民間ソフトウェアを活用するとともに、市町村ニーズに応じた機能を選択できるようにして、学校実態や財政状況を考慮した導入ができるようにした。
年間116.9時間の業務削減効果
新しいシステムについては昨年度からモデル実践校4地域28校で検証を開始。今年度はこの成果を全道に広げる。
導入により特に削減効果が高かったのが通知表作成機能で、年間70時間以上削減できた学校もある。「モデル校平均では日に約29分、年間では116.9時間の校務に掛かる時間が削減された。成果を上げている学校は、管理職が積極的に学校マネジメントに取り組み、教職員全体で取り組んでいる」
道教委には、専門人材を加配できる「事務職員加配」がある。恵庭市では、学校訪問型ICT支援・相談に対応するICT事務職員を加配。拠点校から市内13小中学校に巡回訪問している。「出勤後、全職員がグループウェアを開き、掲示板の掲載事項を確認」するようにした学校では、朝の打ち合わせ時間が大幅に減少。その時間に読書指導に取り組んだ。「いいとこみつけ」に全校児童の顔写真を登録した学校の実践は、モデル校内で拡がっている。
クラウドによるデータ一元管理により、これまで個人で成績などのエクセルデータを管理していた職員の精神的な負担が解消した。「エクセルよりもデータ信頼度は格段に高い」という。校務支援システム導入により、時間外勤務が減り、子供と向き合う時間や授業準備にかける時間が増えている。
モデル校でも導入効果に差があることについては「新たな取組に対して慎重になる傾向はある。短期的には慣れたやり方の方が、時間がかからないが、システム導入を校務の見直しや学校マネジメント見直しの契機として活かしてほしい」と語る。「学校を取り巻く諸課題などが複雑化・困難化し、校務が多様化されている中、その状況に応じて、どのように校務を運営し、変革していくのか。管理職の状況判断力や洞察力が重要」と話す。運用においては「事業者(EDUCOM、ハープ、NTT東日本)との緊密な連携も重要。ヘルプデスクの他、10拠点からの訪問サポートなど充実したサポート体制を構築している」と述べた。
【講師】北海道教育委員会 教育政策課・情報化推進G・工藤雅人主査
【第35回教育委員会対象セミナー・札幌:2016年11月10日】
【2016年12月5日】
1、北海道教育委員会・工藤雅人主査/2、札幌市教育委員会・情報化推進担当・伊藤彰英係長
3、東北大学大学院・堀田龍也教授/4、千歳市立勇舞中学校・大西智彦主幹教諭
5、千歳市立信濃小学校・林克哉教諭
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