特集:学習者用端末とデジタル教科書・教材活用
杉並区立天沼小学校(福田晴一校長・東京都)は、高学年での学習者用端末1人1台や教員用端末の活用をスタートして既に3年目を迎えた。今学期からは、学習者用・光村「国語デジタル教科書」の活用も開始。公開授業(関連2面)を翌日に控えた11月17日、5年生の国語の授業を取材した。授業者は村中裕佳教諭。
マイ黒板で思考を促す
総ルビ表示や縦持ち、横持ちなどそれぞれの方法で音読 |
児童は列ごとに、説明文教材「天気を予想する」を1段落ずつ音読している。
手に持っているのは、学習者用デジタル教科書の本文が映った学習者用端末だ。端末を縦に持つ児童、横に持つ児童、本文を総ルビ表示にしている児童がおり、それぞれ大きな声で自信を持って読んでいる。
積極的に書き込み内容理解が深まる
この日は筆者の「3つの問い」を本文から探し、その「答え」を見つけ、文のつながりについて考えた。児童は本文を素早く横にスクロールして「問い」の「答え」にあたる部分を探し、マーカーツールで線を引いている。スタンプ機能で「筆者の考え」「問い」「答え」などを記入している児童もいる。
村中教諭は教員用端末を使って、電子黒板に提示したデジタル教科書の画面上に、児童の発言内容を書き込み、共有した。
筆者の「問い」に対応する「答え」の部分については議論が続いた。「本文の『理由はふたつある』が『答え』である」、「それだけでは理由の内容がわからないから『答え』とは言えない」、「2つの理由がまとまった一文は第10段落にある」などだ。
新機能「マイ黒板」で思考を組み立てる
積極的な書き込みが内容理解を深める |
マイ黒板で本文の表やグラフをまとめた |
学習者用デジタル教科書の活用を始めて2単元目であるという村中教諭は「教科書を自分の端末で読むことができる、という新鮮さに、まず児童の興味関心が高まった。紙の教科書を読みたがらない児童もデジタル教科書だと積極的になる」と話す。
「トライ&エラーを繰り返しやすい点も、大きなメリット。デジタル教科書は、本文に線を引くことはもちろん、消すことも容易。興味を持ったことや初めて知ったこと、筆者の考え、表現の工夫など、国語では様々な視点で本文に線を引いていく。紙の教科書の場合、児童は、正解を聞いてから線を引こうとする。線を引いても簡単に消すことができるデジタル教科書を使うことで、間違うことを恐れずに積極的に線を引くようになった」
新機能「マイ黒板」も児童にとって魅力的なようだ。
「多くの時間、教員が占領している『黒板』が自分の手元にやってきて、それを自由に使えることに大きな喜びを感じていた。自分が作成した『マイ黒板』の画面をデスクトップに設定したいという児童もいた」
実際の授業では、「天気を予想する」で使われている資料を「マイ黒板」で表やグラフ、図、写真などに分類して整理。それぞれの説明内容について確認した。
「キーワードを本文から抜き出して、それを見ながら文章にまとめる児童もいた。思考を組み立てやすいツールとして、今後も活用していきたい」と語る。
今回、村中教諭は「学習者用デジタル教科書」のみの活用で授業を進めたが、「紙の教科書を見ながらデジタル教科書本文に線を引きたい児童もいるようだ。単元や内容により紙の教科書との併用も考えている」と述べた。
さらに、1人が教科書本文を映し、2人で考えながら書き込む「情報端末2人2台活用」の構想も考えている。
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福田晴一校長 |
福田校長は学習者用デジタル教科書を活用した授業について「もともと意見交換は活発なクラスだが、それがより強化されているようだ」と語る。「情報端末の教科書本文に積極的に書き込めるので粘り強く読み込むことができ、それが内容理解につながっている。そのため、自分の考えを発信したいという気持ちが働くと同時に、他人の意見も理解しやすく、議論に結びついている。思考の可視化にとどまらず、より深く読み取るツールとして機能しており、振り返りやすいので、柔軟な思考力を育むことができると感じる」と、児童の力を育むツールとしての期待を語った。
【2016年12月5日】
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