同志社中学校(木村良己校長・京都府)では、平成26年度の新入生293名がタブレット端末(iPad mini)を保護者負担で購入して活用している。同校図書・情報教育部主任の反田任教諭は、前年度の学校導入によるタブレット端末(iPad)などと合わせて現在約350台の管理を行っている。反田教諭に多台数のタブレット端末の管理と活用、端末の導入理由について聞いた。
同志社中学校は平成24年度、20台のタブレット端末(iPad)の貸与を受けて18時間の実証実験を行った。翌年度は40台を図書・メディアセンターに導入してオリジナルのデジタル教材を使った学習に活用した。
300台のiPad管理をMDMで負担軽減 |
導入の際に手間がかかったのは、タブレット端末の管理・設定だ。
最初に20台で検証した時は各タブレット端末のIDの設定、アプリの流し込みなどを1台ずつ手作業で行った。
その翌年は有線で管理用PC(MacBook)とUSB接続できる充電保管庫を導入。充電保管庫で一度に40台のタブレット端末を設定できるようにした。各種設定は、アップルコンフィグレータ(Apple Configurator)で行う。
その後さらに、昨年5月に1人1台タブレットを導入。同様にアップルコンフィグレータを利用して293台のタブレット端末の設定を行って生徒に配布。この作業には8日間要したという。
9月にはiOSとアプリのアップデートのため、300台以上のタブレット端末の設定変更が再度必要になった。全端末を回収、アップルコンフィグレータを利用するという作業にはおよそ3日間を費やしたという。しかも設定変更は5月の導入から半年間に3回、タブレットを回収して設定変更作業を行った。
そこで同校では12月から、タブレット端末のシステム設定などを統合的・効率的に管理することができるMDM(モバイルデバイス管理)システム「モビコネクト(MobiConnect)」(インヴェンティット社)の活用をスタート。これによりタブレット端末管理の手間が劇的に減少した。
「モビコネクト」はタブレット端末のWi‐Fi設定を一括で遠隔設定できる。設定の不具合が判明した際も、全台を回収して設定変更するのではなく、修正したファイルを配布するだけ良い。
反田教諭は「タブレット端末を最初の設定のままで利用し続けることは不可能。アプリの追加などに伴い、どうしても変更作業は生じてしまう」と話す。
しかし「モビコネクト」により、アプリケーションの追加・変更も容易になった。中学生という年代を考慮して生徒のタブレット端末にはAppStoreやiTunesStoreが表示されない設定としており、当初、新しいアプリのインストールには、全端末を回収して作業を行わなければならなかった。
「モビコネクト」では、クラス単位、学年単位など指定したタブレット端末のみにアプリを配信できる。教員が授業でフリーのアプリを使う時、事前に生徒の端末に配信、その後削除することもできる。さらに、台数制限があるライセンス購入したアプリを、使用するクラスの端末に配信し、授業が終わったら回収して別のクラスの生徒の端末に入れることも簡単だ。「学年、クラス、班、個人と様々々な単位で端末を管理することができるので、今後はこうした利用が増えるだろう」と反田教諭は考えている。
「モビコネクト」にはメッセージ同報通信機能があり、学年やクラスへの連絡に利用されている。生徒個人に直接連絡する手段は、プリントの配布、ホームルームでの連絡、保護者の携帯メールアドレスへのメール配信があるが、同報通信機能は生徒に直接メッセージを送ることができる点が高い評価を受けている。アドレス管理の必要はなく、個人情報管理の負担が軽減できる。
パスコード(パスワード)を再設定できるので、自宅で家族にパスコードを変更された、パスコードを忘れたなどという相談が生じた際、かつてはアップルコンフィグレータでパスコードを解除して再度設定をしていたが、モビコネクトではリモートでパスコードをリセットきる。
セキュリティ対策も強化されており、ブックマークやアプリの制限などを行えるほか、設定が変更されたら警告メールが管理者に届く設定になっている。先日、生徒が誤って変更操作をしてしまったときも、すぐに生徒のタブレット端末の状態を確認できた。
反田教諭は「システムを活用することで、管理の作業工程数を大幅に削減することができる。もちろん導入には費用がかかるが、その導入効果は絶大」とMDM導入の効果を話した。
同校は、今年度のタブレット端末導入にあたり、1授業あたり約40人の一斉利用にも十分耐えられよう、無線LAN設備を強化。Wi‐Fiアクセスポイント(以下、AP)を各教室に設置した。APは「ACERA 800ST」(フルノシステムズ)を採用し、授業を行う教室すべてと教科のメディアスペース、図書・メディアセンター計47か所に設置。2016年度には約900台の端末を整備予定で、それを見越した整備を念頭に、無線ネットワーク管理システム「UNIFAS」も導入。授業時、生徒端末がAPへ安定した接続ができ、ローミングもスムーズに行えるように設計した。
反田教諭は「今後、タブレット端末は他学年にも導入されていくため、インフラ面の投資は重要なポイント」と語る。
同志社中学校では、1人1台タブレット端末の導入と同じ時期に学習ポータルサイトを立ち上げた。
端末に教材を配布するに当たり、クラウドのポータルサイトを用意。現在、全生徒が、自宅で端末やPCを利用している。タブレット端末を持っていない生徒は、課題をPCからプリントアウトして課題に取り組む。
漢字の練習プリントをPDF化してアップしたところ、小テストの不合格者が減少した。これは課題に取り組む前に、課題をダウンロードするという、生徒が能動的な行動を取ることが、学習効果をあげているのではないかということだ。
教員も教材作成が楽になり、生徒はプリントが散逸しないというメリットがある。
英語科はiBooksで教科書の英文テキストに購入した音声データをつけた教材を作成。校内であれば音声データを配布する許可を得た上で、生徒に配布している。また授業で行っていた筆記体の書き方は、動画で配信するだけにした。
ポータルサイトを利用する教員やタブレットを配布していない3年生のダウンロード数も増えており、ICT活用の浸透とその効果を感じている。
【2015年3月2日】