NEW EDUCATION EXPO報告

教育関係者向け展示会・セミナーである第19回「NEW EDUCATION EXPO‐未来の教育を考える」が6月5〜7日東京で、20・21日大阪で開催され、多数の教育関係者が参集した。当日は学校教育における最新の教育システムやコンテンツや活用事例が紹介された。"教育の今が分かる"をテーマに各種講演が行われ、未来の教室で展開できる授業紹介や模擬授業、全国の教育委員会・教員の事例が多数発表された。その中からいくつかを紹介する。

PISA 調査と学力テストを分析―国立教育政策研究所・前所長 尾崎春樹氏

「総合的な学習」学力向上に貢献 「数学への不安」17か国中最も高い

国立教育政策研究所前所長の尾崎春樹氏は「PISA調査、全国学力・学習状況調査から見る日本の教育の現状と課題」について講演した。PISA(Programme for International Student Assesment)は義務教育終了段階の生徒を対象に、OECDが2000年から3年ごとに行っている調査だ。65か国・地域の約51万人を対象に実施された2012年の調査には、日本からも約6400人が参加し、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野で2000年以降最も高い平均点を獲得した。また、各分野の順位も、数学的リテラシーが前回9位から7位、読解力が8位から4位、科学的リテラシーが5位から4位と躍進した。

日本が大きく成績を落とし、"PISAショック"と呼ばれた2003年、2006年の調査結果から急ピッチに回復した要因の一つとして、尾崎氏は2000年から導入された「総合的な学習の時間」の効果を挙げる。

「『総合的な学習の時間』導入直後は現場も試行錯誤だったが、今回の対象者である15歳の子供が小学校3年生となり、総合的な学習の時間に触れ始める2005年までには少しずつ慣れ、成果を挙げられるようになった。この点は見逃してはならない事実」

さらに、この見解を裏付けるデータとして、文部科学省が小学6年生と中学3年生を対象に2007年から実施している全国学力・学習状況調査においても、「総合的な学習の時間」の趣旨に即した活動に取り組んでいる児童ほど平均正答率が高い、という結果を示した。

数学的リテラシーについては、レベル1以下(成績下位)の生徒の割合が2003年以降で最も少なく、レベル5以上(成績上位)の生徒の割合は2006年から引き続き回復基調を維持していることから、ここ数年でトップレベルにいる生徒の学力引き上げと全体の底上げが同時に実現したことがうかがえる。一方で、PISA調査の中で行われるアンケート結果からは、数学教育における日本独特の課題も浮き彫りとなった。

例えば、「数学は全く得意ではない」「良い成績を取っている得意科目の一つだ」といった項目に自分がどれくらいあてはまるかを答える質問で、自己の数学に対する能力を肯定する回答をした生徒の割合は、結果の抽出・分析対象となっている17か国中、日本が最も低い。また、「数学の授業に全くついていけないのではと心配になる」「数学の宿題をやるとなると、とても気が重くなる」といった数学への不安指標は、17か国中で最高となった。

数学への興味・関心についての調査項目でも、肯定的な回答をする生徒の割合は17か国中2番目に少ないという結果だ。「日本では『数学が好き』『数学の授業が楽しみ』といった回答をする生徒ほど高得点となる傾向が、他国よりも強い。これは言い換えれば、今後『どうすれば生徒が数学を好きになるか』という視点で努力を行えば、その効果が他国よりも大きくなるということ」。日本の生徒たちの学力にはまだ"伸びしろ"が残されていると強調した。

【2014年7月7日】

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