特別支援学校に在籍する児童生徒、特別な支援が必要な児童生徒は近年急激に増加しており、様々なニーズにきめ細かく対応することが求められている。そこで文部科学省は、「障がいのある児童生徒の教材の充実に関する検討会」(座長=岩井雄一教授・十文字学園女子大学)を設置。6月4日、第1回の討議を行った。協力者として、全国特別支援学級設置校長協会会長・近藤正幸氏、国立特別支援教育総合研究所総括研究員・金森克浩氏、日野市立平山小学校・五十嵐俊子校長ほかが参加している。
義務教育段階の全児童生徒数1040万人に対し、総計約30万2千人が特別な支援を必要としている。
平成24年5月1日現在、特別支援学校に在籍する子どもは約6万6千人、小・中学校の特別支援学級に在籍する子どもも増えており、約16万4千人。
通常の学級に在籍する特別な対応が必要な子どもは小学校で約6万5456人、中学校で6063人。約7万2千人。
さらに、通常の学級に在籍する発達障がい等の可能性のある児童生徒は6・5%程度の在籍率であることが分かっている。
■知的障がいは約11万人に
特別支援学校(幼・小・中・高)において最も多い障がいが知的障がいで、11万5355人が在籍する。特別支援学級及びその在籍者でも同様に知的障がいが最多で8万6980人、次いで自閉症・情緒障がいが6万7383人となっている。
通級による指導対象児童生徒数も増えているが、そのうち最も多いのが言語障がいの3万2674人。次いで自閉症が1万1274人だ。
「通常学級に在籍する発達障がいの可能性がある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」(平成24年3月実施)によると、「知的発達に遅れはないものの学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒の困難の状況にうち、主要なものは「学習面」4・5%、「不注意または多動性‐衝動性」3・1%、「対人関係やこだわり等」1・1%であった。
これら現状を踏まえた検討会における検討事項は、(1)発達障がいの児童生徒の使用する教材等の整備充実 (2)様々な障がいの状態に応じた支援機器の充実 (3)障がいの状態や特性等に応じた様々なアプリケーションの開発 (4)情報端末についての基本的なアクセシビリティの保証 (5)視覚障がいのある児童生徒のための音声教材の整備充実・高等学校段階の拡大教科書の発行ほか。
「必要な支援」「適切な指導」「ICT活用の可能性」検討
文部科学省の大山課長は「教材は学校教育に不可欠のものであり、多様性の対応のために教材を充実していくことは重要なこと。昨年7月に中央教育審議会でまとめられた報告書『共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進』が国の方針となる。平成25年度は特別支援教育再スタートの年」と述べた。
岩井座長は、「1人ひとりのニーズに合わせた対応を目的にしたICT活用が急速に進んでいる。デジタル教科書や電子黒板などのICT機器により、指導法の抜本的な変化があり得るのか、発達段階に従った適切な支援とは何か。教員のICT活用能力や財政の課題なども含め、学校現場の声も聞きながら検討していきたい」と述べた。
当日は、「デジタル教材については、必要な支援と適切な指導の2つに分けて考えたい」(坂井聡教授・香川大学)、「特別な支援が必要な子どもがタブレット端末等を持ちこむことに対して、不公平感を持つ教員や保護者もいる。『均等』と『公平』の理解についても課題があると感じている」(田代洋章氏・e‐AT利用促進協会)、「通級学級における支援が必要な児童生徒にフォーカスした検討を望みたい」(山岡修氏・全国LD親の会顧問)などの意見が出た。
教材に対する 発想を変える ―全国特別支援教育推進 連盟・大南英明理事長
一斉指導に慣れ過ぎてその枠から超えることができず「1人ひとりに応じた指導」の意味が理解できていない教員が見られる。例えば電子黒板は、従来の黒板の延長上の使い方にとどまっていることが多いように見える。もっとダイナミックな使い方があるはず。教材教具の充実とは、モノだけではなく、教員養成も含め、教員の教材に対する発想を変えていくことも含めた検討が必要。様々な課題を持つ生徒のどこに困難があるのかを見つけることは教員にとって簡単なことではないが、学校や個人でできないことを検討していきたい。
【2013年7月1日】
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