【校務の情報化】高性能サーバの導入で運用・導入コスト減―福岡県宮若市

 福岡県宮若市では1990年代から小中学校にPCを導入しており、情報化に取り組んでいる。しかしその管理は学校ごとに行われていた。このため学校側の管理負担が大きく、セキュリティ上も不安があったという。導入後10年を経、故障対応の負担も増加していたことから、リプレイスに着手。その際に注目したのが、PCの仮想デスクトップ化だ。仮想デスクトップ化のメリットと導入のポイントを教育委員会に聞いた。

運用管理の集約で問題を解決
UCSでPC約460台を仮想化

 宮若市では2011年、小学校2校・約120台のPC(教職員用・PC室用)を対象に仮想デスクトップ化を図った。PCの仮想デスクトップ化とは、アプリケーション処理や保存などをすべてサーバ側で行い、学校のPC端末は画面表示とキーボード・マウス入出力処理のみを行う仕組みだ。教員・児童用PCはアプリケーションのインストールや、データの保存はできない。

  宮若市が仮想デスクトップ化に着目した理由は「セキュリティの確保と管理・導入コストの低減」にある。

  市では2006年から光ファイバーにより、小中学校を含む市の公共施設50か所をネットワーク化、市役所で集中管理してきた。セキュリティ上の問題が発生するとアラートが上がり、情報漏えいを未然に防ぐ仕組みも導入していた。

  しかしアラートが上がるだけでは情報漏えいを完全に防ぐことはできない。また、USBによるデータの持ち出しやウイルス感染の危険性などの問題も生じていた。これらの問題は、管理対象のPCが分散しており、市による管理が複雑かつ大きな手間になっていたことが原因だ。

  そこでPCリプレイスの際には、集中管理方式によるセキュリティを向上する仕組みの導入を検討。さらに日常的な管理上の問題も解決したいと考えたという。

  その結果仮想デスクトップによるシンクライアント化を選択した。学校には端末を置き、その中身を市担当部局で集中管理できる仕組みで、故障の際には端末を変えるだけですむ。

■高性能サーバ 「UCS」のメリット

  2011年仮想デスクトップの導入時に採用されたのが、Cisco Unified Computing System(以下、UCS)だ。その後システムを順次追加、現在は、UCS7台で約460台のPCを仮想デスクトップ化している。

  UCSには、いくつか特長がある。

  高性能であるため、仮想デスクトップを大量に動かすことができる。これにより「動かせるデスクトップ数」で比較すると、低コストにつながる。

  高性能であることから、サイズもコンパクトかつ導入すべきサーバ台数が少なくてすみ、設置スペースも最小限に収まる。市役所や市教委などでサーバを管理する場合、設置スペースは限られているため、数百台分のPCがラック一本分のスペースで管理できるメリットは大きい。放熱量も低くなり、省エネにもつながる。管理性も高く、設置後は、追加したサーバもすぐに対応できる。配線もシンプルで、配線工事は不要だ。すべての作業をリモート管理できるなど、管理・メンテナンスコストも低減する。

高性能サーバ 「UCS」

■故障・障害が激減 管理を一層簡素化

  仮想デスクトップ化以降、宮若市の管理やパフォーマンスにはどのような効果があったのか。

  まず、故障が激減した。導入後1年以上を経たが、端末、UCSいずれについても故障・障害は発生していないという。学校からの問い合わせも激減した。

  UCSの管理システムにより、サーバ管理・運用がシンプルになった。ソフトウェアとデータを集中管理できるようになり、セキュリティのリスクも激減した。サーバ追加時の作業も同様で、必要な工数は他社製品と比較して1/4程度になったという。
既に仮想デスクトップ化をした学校では、教職員の校務用PCが1人1台となり、校務の情報化が進んでいる。

  宮若市の小学校では無線LAN化も進めており、PC教室の端末を普通教室でも活用できる環境になっている。仮想デスクトップ化により、普通教室への端末設置・活用の可能性も高まった。

  市では平成28年を目途に市庁舎内のPCを全て仮想デスクトップ化することを考えており、市庁舎内のマシン室を市役所外に移行するというクラウド化も視野に入れているという。

■高パフォーマンス 低コストでリプレイス

  デスクトップを仮想化する方法はいくつかあるが、宮若市の事例は「シンクライアントによる仮想化」だ。シンクライアント端末はOSが入ったPCであり、そこでシンクライアントソフトを動かす。シスコシステムズでは様々な端末の仮想化に対応している。

  技術革新によるネットワーク回線の高速化やサーバの高品質化により、大量PCの導入が低コストかつ高パフォーマンスで実現できるようになった。PCの大量リプレイスを控えている自治体にとって朗報といえそうだ。

【2013年6月3日】

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