タブレット端末の整備は、1人1台活用を想定した整備、グループ学習を想定した整備、特別支援学校・級での活用を先行した整備など学習者用のものが中心だ。中には、教師用端末としてタブレット端末を導入したケースもある。また、PC室の更新に伴い、導入端末をタブレット型として無線LANを配備した普通教室にタブレット端末を持ち込んで活用できるようにする整備内容も増えている。なおタブレット端末ではなく通常のPCを普通教室に持ち込んで使えるようにするというPC室整備を選択する自治体もある。
タブレット端末と電子黒板の連携を視野に入れ、連携システムとの同時整備が一般的だが、中には提示機器なし、タブレット端末のみという整備内容の自治体もあるようだ。
◆2年間で検証―大阪市
平成27年度のタブレット端末1人1台を目指し、大阪市では今年度から次年度にかけ、小学校4校、中学校2校、小中一貫校1校のモデル校で検証を進めていく。小学校での検証は3年生以上。授業効果や活用方法などを検証、スタンダードモデルを決定し、それを全市展開する考えだ。
整備内容は、電子黒板機能付きプロジェクター、児童・生徒用タブレット端末。
◆大規模整備―東京都・荒川区
荒川区教育委員会では来年度中に区立小中学校の全児童・生徒にタブレット端末を整備する計画だ。区立小学校24校、中学校10校の児童生徒約1万1200人に対応するという大規模整備として注目を集めている。全校の普通教室に電子黒板があることから、電子黒板とタブレット端末の連携を図りつつ協働学習やコミュニケーション能力の育成など学力向上に役立てる考えだ。
今期はモデル校整備に着手。モデル校は区立小学校3校をモデル校で推進をスタート。運用方法や導入効果の検証、マニュアル作成などを予定。
◆全児童配備―佐賀県・武雄市
武雄市教育委員会では授業への参加意欲向上を目的として今年度、市立小中学校の児童生徒約4000人にタブレット端末を配備し、授業で活用する。市では、フューチャースクール推進事業により2小学校の4〜6年生にタブレット端末を活用しており、その成果を受けた整備となる。市教育委員会では本年3月、全小中学校を対象にタブレット端末の配布について調査したところ、全学校が配布を希望したという。
武雄市によると、市立の全小中学校を対象とした取り組みは全国初。
◆PC室に設置―東京都・墨田区
墨田区教育委員会ではコンピューター室 更新時にタブレット端末を配備。 普通教室でも活用できるようにした。 PC室にはキーボードも設置 |
墨田区教育委員会ではPC室更新年度にあたる小中学校7校(小学校3校、中学校4校)を対象に、各40台のPCをタブレット端末とした。12・5インチ型タブレットで、普通教室に持ち込んで活用できるよう無線LANでも接続できる。協働学習を視野に入れた協働学習用ソフトウェアや電子黒板連携システムも導入。これに伴い、7校に対してプロジェクター6台、マグネットスクリーン6台、プロジェクター設置台6台も整備。現在操作研修を順次実施中。整備された学校では、普通教室でも活用できそうだと期待が高まっているという。
◆グループ単位で―兵庫県・姫路市
姫路市教育委員会では今年度予算において、学習指導要領に示されたICTを活用した授業を実施するための環境整備に取り組む。
具体的には、全市立小中学校の普通教室に指導者用PC、全市立中学校の普通教室に電子黒板機能付きディスプレイと書画カメラを整備する。また、協働学習用としてタブレット端末を整備する。タブレット端末の整備台数はグループ学習を想定しており、1セット11台(40人学級において4人1台+指導者用1台として計算)とし、各校について1セット、大規模校には2セット整備する。なお小学校においては、電子黒板と書画カメラは整備済であることから、本整備により、小中学校一貫した環境整備が実現する。同市の取り組みの1つである小中一貫教育と連携し、情報活用能力を育むとともに、ICT活用による質の高い授業の推進を実現し、学力向上を図る考えだ。
これら環境整備を最大限に活かすことができるよう、教職員のICT活用指導力の向上のため、情報化研修にも取り組む。
◆英語指導用に―愛知県・岡崎市
岡崎市教育委員会は、新規事業として「英語指導用タブレット型情報端末導入業務」に691万円を計上。中学校の英語指導にタブレット端末を導入し、個別またはグループ学習を進めることで、小学校英語を通して身に付けた英語力を一層高めるとともに、英語学習に対する強い関心や意欲が高められる。また、岡崎市現職研修委員会英語部が自作した副教材「Our City OKAZAKI」のデジタル版を活用。生徒は、タブレット端末を使って個の能力に合わせて効果的に学習が進められる。
◆指導者用として―京都府・京田辺市
京田辺市教育委員会は、教師用タブレット端末や電子黒板、書画カメラの全小中学校(小学校9校、中学校3校)への整備を昨年度中に完了した。
年齢条件や教室規模、日照条件などによりニーズが異なることから、整備内容は各校で選択できるように2パターンを用意。具体的には、既に全普通教室に整備済のデジタルTVに、タッチディスプレイ内蔵・教師用タブレット端末を導入して電子黒板化できるタイプとアノト式センサー対応マグネットスクリーン+短焦点プロジェクターの2種だ。書画カメラは70台を学校規模によって配備した。
全普通教室180学級への整備が昨年度に終了したことから、今年度は活用に注力するとともに、校務支援システムや無線LAN化を検討している。学習者用タブレット端末配備を想定し、小規模校から無線LAN化を検討する考えだ。
◆テレビ会議も―長崎県
長崎県教育委員会では、県内の市町立小中学校12校及び県立学校5校をICT教育推進モデル校に指定し、電子黒板やタブレット端末の効果的な活用について研究。その成果を発信することで、県全体のICT機器の整備促進と指導の充実を図る。さらに、離島地区を含めた県立学校や教育センター等18箇所にテレビ会議システムを導入し、外部人材による授業を支援していく。
このほか、これまで取り組んできた「未来の科学者発掘プロジェクト」を拡大し、今年度は「サイエンスリーダー育成プロジェクト」を実施。小・中・高校生を対象とした先端科学の実験や講義、理科・数学の教員を対象とした理数教育の指導法の研修等を実施する予定。これら事業にTV会議も有効に活用していく。
◆東京都・多摩市
机上にタブレット端末と |
多摩市教育委員会では、「学校情報環境整備事業」(3か年事業の初年度)として1億2500万円を計上。老朽化した教育用PCの入れ替えにあたり、タブレット端末等を中心とした「次世代教育システム」の機器・システム等を導入する。これにより教員の教務・校務負担の軽減を図る。多摩市では学校内で自由に使えるタブレット端末等の導入により、分かりやすく多様な授業の展開を期待している。
◆東京都・狛江市
狛江市教育委員会では、児童の学習に対する意欲を高めるため「情報教育推進費」として5921万円を計上。すべての小学校にタブレット端末合計246台が導入される。
あわせてデジタルコンテンツ作成・活用支援(緊急雇用)を実施し、ICTを活用した授業の補佐も行われる。
◆大阪府・寝屋川市
寝屋川市教育委員会では、市政運営方針の一つとして「夢を育む学びのまちづくり」を掲げ、ICT環境の充実が図られる。分かりやすい授業づくりを推進するため、小学校3・4年生の教室に電子黒板を導入するとともに、すべての小学校にタブレット型端末が導入される。
◆山梨県・昭和町
昭和町教育委員会では平成25年度事業として、タブレット端末の全小学校の導入を予定。ICT活用による教育環境の整備を進める。
導入を予定しているのは、押原小学校、西条小学校。なお常永小学校は既に導入済。
◆愛媛県・西条市
西条市教育委員会では日本経団連と共に「未来都市モデルプロジェクト」(教育分野)を進めている。今年度は西条市立神戸小学校をモデル校として、2年間に渡りICT活用に取り組む。
具体的には、全教室(普通教室及び特別教室)の電子黒板配備、児童生徒及び教員へのタブレット端末配布、ICT支援員(月2回以上、1日8時間)を配備し、教育の情報化及び校務の情報化の向上を目指す。市では既に全小中学35校に各1台の電子黒板を配備しているが、今年度は3校を対象に追加で1台配備する。また、特別支援学級(3校8台)にiPadを設置して活用を検証する。
ICT支援員も月2回配備する。これらの整備をもとに導入効果を検証し、平成27年度までに市内小中学校に対して環境整備を進めていきたい考えだ。
◆東京都・渋谷区
渋谷区教育委員会は、昨年度開校した渋谷区立小・中一貫校・渋谷本町学園のPC室にタブレット端末を導入した。
整備台数は小学校40台、中学校40台、計80台。渋谷区では無線LAN配備が進んでいることから、PC室から教室や校内に持ち出して学習することができるようにした。
提示環境としては、電子黒板やプロジェクターなどを活用している。
岡山県玉野市では、PC室の更新の際、タブレット型端末を3校に60台配備する。
◆秋田県
秋田県教育委員会は「特別支援学校ICT活用教育推進事業」として、特別支援学校にタブレット端末を導入するとともにICT支援員1名を配備し、障がいのある児童生徒の学習や経験を拡充する。
タブレット端末を活用した学習指導の実践研究を行っている学校の成果を県内に広く普及し、障がいのある児童生徒の学習や経験を拡充するため、タブレット型端末25台をあきた総合支援エリア内の盲学校、ろう学校、秋田きらり支援学校3校に導入する。
また、音声入力機能や読み上げ機能、多様な視覚情報等を活用し、児童生徒の障がい特性や、発達段階に応じた学習ソフトも開発する計画だ。
ICT支援員によるICT活用教育に関する教職員研修会も開催する。予算額は383万4千円。
◆長野県
長野県教育委員会では、ICTを活用した学力育成を目的に、特別支援学校にタブレット端末を導入。音声・言語による意思疎通が困難な児童生徒のコミュニケーションの基礎力を育成する。
◆神奈川県
神奈川県教育委員会では特別支援教育の充実として、タブレット端末等情報機器を更新し、特別支援学校の情報教育の充実を図り、生徒の就職率向上を目指す。
◆兵庫県・小野市
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小野市教育委員会は当初予算に80万円を計上し、特別支援学校にタブレット端末を導入。平成24年度に5台導入した事業をさらに拡充し、平成25年度は10台のタブレット端末を導入する。障がいのある児童生徒に対し、タブレットを用いた学習支援が行われ、障がいに応じた使用方法を民間事業も活用しながら研究を進めることで、学習意欲の向上や授業改革が図られるようにする。研究校・小野特別支援学校では民間プロジェクト利用により端末貸与を受けるなども含めて研究を継続中で、タブレット端末の活用は主に協働学習での事例が増えているという。市内の特別支援学級にも希望によりタブレット端末を貸与している。通級指導教室でも独自に1台整備をしている。
◆滋賀県・草津市
草津市教育委員会は「学校ICT推進費」として1307万円を計上し、45台のタブレット型PCを導入。そのうち10台のタブレット端末を、すべての学校の特別支援学級に持ち回って、子どもの特性に応じた活用が行われる。研究指定校1校には1クラス分のタブレット端末35台を導入し、無線LANアクセスポイントを使い、普通教室でタブレット端末を活用できるようにする。さらに遠隔地を結ぶ活動や子どもたち相互の協働的な活動を容易にするという考えのもと、思考力や表現力、プレゼンテーション力を育み、遠隔授業などを行う。
ICT支援員2名を配置、全小中学校を訪問しタブレット端末の円滑な導入および活用を促す。
行政利用で配備 稲敷市と飯館村
茨城県稲敷市では平成25年度事業として、行政事務の簡素化・効率化を図るため、災害発生時など非常時の通信連絡網の強化や市民サービスの更なる向上のため、タブレット端末を活用したネットワークシステムの構築に着手する。
飯館村では、「人と人とがつながる」を基本方針の1つとしてタブレット端末により村民どうしをつなぐ「村民の声ネットワークシステム運用保守」を今年度予算に盛り込んでいる。
【2013年6月3日】
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