【市町村教育長】教育の情報化を推進しています

児童生徒の学びを照らすICT―岡山県・倉敷市教育委員会教育長 吉田 雄平

 倉敷市教育委員会でも、学力向上を喫緊の課題と考えており、効果的な学習支援を行うためのICT整備と、基礎学力定着を目指した個別指導のための非常勤講師等の配置に予算措置を講じております。とりわけ、ICTはすべての児童生徒の学びを照らす教育機器として大変期待されることから、学習指導要領の完全実施に合わせて、平成22年度から本年度にかけて小・中・特別支援学校90校に計画的に整備して参りました。財政状況が厳しい中での整備ですから、学力向上に直結したものであることが求められます。

  文部科学省は、日常的にICTを活用して指導を行うことが、授業の改善、学力向上のためには欠かせないと「教育の情報化の手引き」で示しています。そこで、本市では「どの教室でも大きく映したい時すぐ使えるICT環境」として、普通教室に大型ディスプレイ装置と実物投影機を常設しました。その結果、例えば中学校では、大型ディスプレイ装置を常設する前の活用は43・5%でしたが、常設後は88・7%と激増しました。

  私事ですが、小学校の教壇に立っていた頃は、視聴覚教育が注目されていた時代でした。1時間に1度はOHP等で教材を大きく提示して子どもたちを引きつけようと、職員が一丸となって授業研究に取り組んでいたことを懐かしく思い出されます。大型ディスプレイ装置と実物投影機の整備が、児童生徒の学びを照らし、学力向上と先生方の授業研究の高まりをもたらすことを期待してやみません。

 


高松市版教育クラウドの構築―香川県・高松市教育委員会教育長 松井 等

  本市では、平成14年の校内LAN構築以来、校内サーバにおける教育情報の集中管理や、教員用パソコンの計画的導入など、教育の情報化を進めてきました。一方で、情報管理や教員の多忙化など、数々の課題が顕在化しているのも事実です。

  そこで、校務の効率化による教員の負担軽減、個人情報等のセキュリティ確保、非常変災等による教育情報紛失のリスク回避の3点を基本理念とし、学校管理職を交えた校務の情報化検討会を組織して意見集約を図りながら、教育クラウドの構築を進めてきました。

  まず、教職員がいずれの学校でも教育情報を素早く参照して利用できるよう、クラウド上の各校のフォルダ構成を統一するとともに、本市版にカスタマイズされたグループウェアを導入します。

  また、クラウドの利点を生かし、学校間の情報共有を促進するために、校長会や学校事務、研究会など、学校を横断するフォルダを設置します。

  さらに、教育情報を校外へ持ち出す必要のない環境づくりとして、自宅パソコンへのデータ保存や複写の制限など、十分な安全性を確保しつつ、自宅からのデータアクセスを可能とします。

  本年2月には大規模な導入研修を行い、4月から本格運用を始める予定です。さらに、本システムを基盤とした校務支援システムを、今後適切な時期に導入できるよう努めていく所存です。

 


校務の情報化を進めるにあたり― 徳島県・三好郡東みよし町教育委員会教育長 川原 良正

  東みよし町では今年度、徳島県内の先陣を切って、クラウドを利用した校務支援システムを導入しました。

  校務の情報化により、早速1学期末には、現場の教員から通知表作成など事務作業の負担が軽減され、有効な時間の確保ができたとのうれしい報告がありました。同時並行して、一般的には学校の裁量と捉えられそうな事務項目や形式についても、可能な限り町内で標準化し、煩雑さの解消やコスト削減に繋げました。私としては、確たる根拠なく続いてきた事務上の先例を重んずることなく、適切に見直しをかけ、教育活動においてこそ、学校の特色を打ち出してほしいと考えています。

  教育の情報化を進めるなかで実感したことは、トップダウンとボトムアップが車の両輪のように動いてこそ実現が可能になるということです。本町の場合、教育情報化コーディネーター1級資格を持つ教諭を中心に編成した、「校務の情報化プロジェクトチーム」の詳細な検討からなるボトムアップがあったからこそ、私も将来を見据えた決断を素早く下すことができました。それにより、検討のあとのシステム稼働、全教職員への研修などが約1ヶ月で完了するという、異例の速さで整備が進みました。

  今後はこれらの事例から、校務の情報化による成果や今後に向けての課題を詳細にまとめ、他地域の実践の参考としていただける内容になればと考えております。

 

【2013年1月1日】