【校務の情報化】子どもと向き合う時間を増やす

モデル校から段階的に導入―群馬県・富岡市教育委員会

教頭実務の一斉切り替えで浸透促す

 富岡市教育委員会では、「校務支援システム導入の目的は、子どもたちとの時間を増やすこと。そのためには、全員が使わなければ意味がない」と話す。同市の導入経緯と効果を指導係長・藤井清一氏と指導主事・若林俊作氏に聞いた。

校務の情報化

学校教育課・指導係長
藤井 清一氏

 富岡市では平成20年度より高田小をモデル校として「C4th」を導入、準備を進め、21年度から通知表を含めた運用を開始した。同時に市内小中学校・全17校で、まずグループウェア機能を活用。成績管理等を含めた校務支援システムの全面運用を開始したのは22年度からと、段階的な導入を進めた。

  「円滑な活用のためには、学校実務の中心である教頭がまずシステムに慣れる必要がある」という考えから、教頭実務の全面切り替えからスタート。平成21年3月、「C4th」全面切り替えの方針を周知すると同時に、学校配布文書など実務を中心に教頭会で研修を実施。以後、教育委員会からの文書連絡はすべて「C4th」を活用した。

  「一斉切り替えで当初は戸惑う場面もあったと思うが、活用頻度が多いことから、慣れるのも早かった」という。これにより、これまで印刷して配布・回覧していた県や市教委からの通知やアンケート、研修参加者の集約など連絡文書はすべて「C4th」上で閲覧や配布、集約・承認ができるようになった。各校教職員の文書提出遅延もほぼなくなり、教頭自身の事務負担も軽減した。教育委員会では、「教頭は、校内で最も頻繁に校務支援システムを活用する立場。教頭の理解を最初に進めることで校長や教職員も安心して活用を進めることができ、学校活用が円滑に進む」と話す。

■半年経過すると活用効果を実感

  次の段階は教職員レベルの活用推進だ。22年6月末から7月にかけて通知表作成の実務を中心に各校で研修。一度の説明でほぼ使えるようになり、導入して3学期が終わる頃には「慣れたら楽になった」と導入効果を実感する教員が増えた。

  システム導入により、運用の流れも変わった。例えば出席簿管理については、遅刻欠席連絡を最初に受けた教員がデータ入力することで、迅速に数字を把握できるようになった。昨年度末には初めて指導要録まで作成。震災があり、成績処理期に計画停電などがあったものの、予定通りに進んだという。

■事務の共同実施 スムーズに進む

校務の情報化

学校教育課・指導主事
若林 俊作氏

  群馬県では、平成19年度に「群馬県学校事務の共同実施要領」が施行されている。それを受け、富岡市でも全17校を3グループに分け、各校で分担して事務の共同実施を行っている。関連書類は全て「C4th」上にあり、どの学校からでも安全にアクセスできることから、共同実施もスムーズに進んでいるという。

■ 掲示板活用で ヨコの連携も

  掲示板活用も積極的だ。

  校長会、教頭会、小中連携部会、事務職員部会、養護教諭部会など、必要なグループの掲示板が数多く設定されており、会議のお知らせや決定・連絡事項などを共有している。なおグループ設定は、教委に申請することで追加できる。

■ 学校現場からの要望にも柔軟に

  校務支援システム導入のためには、校務用PCの全員配備が必要だ。同市では平成21年度のスクール・ニューディール政策による補正予算で校務用PCを配備。不足分は旧PCを使うなどして1人1台の校務環境を整備。現在も継続して配備中だ。校務の情報化は、市の大規模プロジェクトという位置づけで、市担当者が異動しても問題なく引き継ぐことができるようにした。学校教育課の指導主事はPCを2台所有、うち1台は市内イントラネットで「C4th」専用端末として機能している。

  県で実施されている校務関連の連絡協議会については、「他自治体の活用事例の共有で、有用性の理解が深まり、より活用を推進できる。情報交換は重要」と言う。「C4th」導入事業者であるEDUCOMも毎回同席しており、「バージョンアップにも柔軟に対応してくれる」と評価されている。同社担当者は、「様々な要望は活用いただいている証。現場の先生の負担が減るような活用提案とサポートを心がけている」と話す。

【2011年10月3日号】

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