■「学校広報」が学校経営課題に
インターネット・メディアの急速な普及は、社会の情報オープン志向をより強化してきた。企業も行政もその社会的責任に応じて、説得に足る成果を示すことが求められる時代である。もし、公(おおやけ)に対して消極的な情報開示姿勢が目立てば、「きっと表に出せないような事情があるに違いない」と不審がられ、隠蔽(いんぺい)が暴露すれば、組織の信用は地に落ちる。現代の社会にあって組織に不都合な情報を隠し持つ事は、メリットよりもリスクの方が大きいと考えられつつある。
このような背景を考えれば、学校広報はもはや学校経営課題のひとつといっても良い。むろん、学校に求められる広報とは、宣伝というより、まずは保護者の抱く関心や疑問に率直に応えることであり、保護者や地域との信頼関係を維持することにこそ意義がある。伝えるべきは、「地味でベタな日常」そのものを多様な視点から提供することにあり、だからこそ組織的な運用が求められるのである。
■更新しやすい仕組みを追求
学校用CMS製品の大きな特徴は、操作が簡単なうえに、チーム運用を前提とした設計になっていることだ。担当者、管理職を含め複数で記事を書く体制にすれば、記事にバリエーションが生まれるし、システムが記事を管理するから、異動や引き継ぎがあっても、蓄積された記事を無駄にすることがない。
だが、ひっくり返していえば、担当1人が負担を背負い、残りの人は全く無関心という従来型の運用では、おそらくシステムを有効に活かせない。CMSの導入によって著しく更新頻度が改善した自治体では、管理職研修を積極的に行う、校長決裁で迅速に記事公開するなどマネジメントの工夫をしているケースが多い。つまり、システムが使いやすいこと、手間がかからないことは、HP運用の必要条件だが、けっして十分条件にはならないということだ。
■震災とCMS
3・11の震災では、特に首都圏では電話の着信規制やメール遅配のため、深刻な連絡の途絶や混乱が起こった。そのなかで、インターネットとCMSが電話よりも有効に機能したという事実は多くの人々の認識を変えたのではないか。
ただ、緊急時の定石として、連絡手段は複数を状況に応じて切り替え対応できる体制が望ましいし、それらは普段から活用していなければ、いざという時に役立たないだろう。世田谷区の事例は、普段からマメに日記を更新し、保護者からの評価を一定得ている学校だからこそ、可能であったといえる。緊急時にだけCMSやtwitterなどを使うような発想では、このような機転の利く対応はできないと言える。
【2011年7月4日号】
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