■震災が中学校の認識を変えた
当初小学校ほど「学校日記」の導入に熱心ではなかった中学校だが、今年度急激に移行が進んでいる。理由は3月11日の東日本大震災の影響だ。
「中学校では、小学校のような日常のきめ細かい発信にそれほど重きを置いておらず、学校日記という概念に前向きとは言えませんでした。しかし震災が起こり、緊急連絡という性質がクローズアップされ、導入が進みました」
震災当日、中学校では卒業を控え、校外学習に出かけている学校が多かった。地震が起きたのは学校への帰路につく時間の前後であった。
携帯電話もつながりにくく、交通機関もストップ。連絡メールは活用されたものの、キャリアの関係で、大幅な遅延が見られた。そんな中、教育センターでは、世田谷区のネットワークや固定回線によるインターネット閲覧は無事であり、「学校日記」へのアクセスが急増していることを確認。そこで、連絡メールは遅延が出ていること、学校日記は稼働しており、アクセスも上がっていることを教育センターから各校に連絡した。
各校はすぐに子どもたちの状況を学校日記にアップ。校外学習に出かけていた学校では、学校から引率者の携帯電話に連絡、学校は、現在の状況や学校の対応を固定PCから学校日記に随時発信していった。結果、学校日記へのアクセスは通常の10倍以上にも上った。
「世田谷区の場合、『学校日記』を通じた緊急報告は連絡メールより迅速でした。職場のPCからアクセスする保護者も多かったようです。その結果、『緊急連絡』できる仕組みについての必要性と重要性が中学校に急激に高まりました」
区議会でも緊急時における連絡方法が話題に上り、教育センターの報告を聞いて「ICT導入の効果や役割がようやく理解できた」と発言した議員もいたという。
「学校日記」を通じて必要な連絡が迅速にでき、保護者がいち早くアクセスした学校は、日常的に「学校日記」を活用している学校であった。震災を通じ、日常的な活動の有無が緊急時に力を発揮する、という面が再認識されたといえる。
「震災時に最も困ったことは、子どもたちを帰宅させたのか学校で預かっているのかを保護者が知る手段が確立されていなかった点です。帰宅させたものの、マンションのオートロックが起動せず学校に戻った子どももいました。学校側にとっては、保護者がいつ引き取りに来ることができるのかを知ることも難しい状況でした」
そこで今後の課題として、保護者との連絡を双方向にやりとりする仕組みも考えているという。
「学校関係者評価等アンケート活動や、学校からの連絡の確認メッセージをもらう等の機能が考えられます。こうした機能があれば災害時の保護者との連携がスムーズになります。このような仕組みが現場サイドで必要とされているか、学校側と協議を進め、有効で使いやすい仕組みを検討していきたいと考えています」と話す。
【2011年7月4日号】
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