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“協働力”を育む取り組み進む

ICT教育

 12月3日、「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」(清水康敬座長・東京工業大学教授)が総務省で行われた。本研究会では、フューチャースクールにおいて協働教育を円滑に進めるためのガイドラインを策定することが目的。ガイドラインは、ICT機器を利活用した協働教育を円滑に進めるための指針となるよう、タブレットPC、インタラクティブ・ホワイトボード(以下IWB)、無線LAN等の学校・教室への環境構築や運用における留意点、推奨システム、必要な経費、協働教育事例や利活用シーンについてまとめられる。

 清水座長は本研究会について、「文科省と総務省が双方の領域を守りつつ連携しており、総務省の役割は、無理なく協働教育が実現するためのインフラ整備を中心にしたガイドラインを策定していくこと。教育的観点においては文科省の役割であり、明確な役割分担がある。『協働教育』の観点に特化している点も特長」と、会の趣旨を再確認した。
ガイドラインについて各委員からは、「協働教育がなぜ必要なのか、そのためにタブレットPCがなぜ必要なのかについて、行政はもちろん、財務課にも理解できるガイドラインが必要」、「IWBとタブレットPCにより、従来のスタイルの協働学習とどう異なるのかという点を明確にしてデータ化し、インフラ整備に盛り込んでいけるものとする」という意見が出た。

【中間報告】
環境構築をほぼ終了 課題と可能性を模索

  現在、各校の環境構築と機器配備をほぼ終了し、10月より順次授業活用が始まっている。東日本地区については、事業者であるNTTコミュニケーションズが、西日本地区については富士総研が報告した。実証が進むにつれ、教室配置による電波の混線や保管庫からのタブレットPCの出し入れ等の準備時間ほか課題が見え始めており、それらの課題にひとつひとつ対応しつつ活用が進められている。

■東日本地区

ICT教育

  東日本地区では各校のネットワークについて、セキュリティ面、速度面を考慮し、グループVPN網、光アクセス回線で設計。無線LANアクセスポイントは各普通教室に2か所、体育館には4か所を設置した。回線障害等に備え、校内には補完サーバも設置。授業の円滑な進行に配慮した。学校の要望から、書画カメラ、プリンター、デジタルカメラ、メモリーカードを全校に配備した。
 タブレットPCについては、教員用にはデジタル教科書、児童用にはデジタル教材など各学年の必要性に応じてインストール。独自教材も利用できるようにした。また、児童がタブレットPCで作成した「もぞうしファイル」をIWB画面に投影できるようにした。
 これらの環境を踏まえ、各校では、タブレットPCを使っての個別学習(ドリル教材)、調べ学習、もぞうし機能と連動したグループ学習、グループ発表などが幅広く進められている。

  長野市立塩崎小学校は、社会科見学授業でタブレットPCを校外に持ち出して写真なども撮影している。ICT支援員は、葛飾区立本田小学校では30コマ、石川県内灘町立大根布小学校では40コマ支援した。

■西日本地区

  各校ではタブレットPCを用いた調べ学習や手書きドリルソフトを使った個別学習、子どもたちがネット上で一枚の模造紙に書き込むことができるツール(「OneNote」や「コラボノート」※)を使ったグループ学習、発表学習などが進められている。
 教員用タブレットPCは管理職、学級担任、教務主任、専科教員に配布。追加整備の要望が高いのは、教員用タブレットPCから児童用タブレットPCへの画面転送機能、既にPC教室導入済みの学習ツール(ジャストスクール、キューブキッズ他)、書画カメラなど。電波強度を考慮し、無線APは教室の中心に設置。タブレットPCは自動ログオンに設定した。

  大阪府箕面市立萱野小学校では国語科で「コラボノート」を活用。班ごとにニュース番組を作成、発表した。
広島市立藤の木小学校では、児童が「OneNote」上で定規を使うなど、実際のノートと同じ感覚で使用。児童の教え合いも進んでいる。

  徳島県東みよし町立足代小学校ではタブレットPCを全児童123人で、朝の一斉ドリル学習や、調べ学習で活用。児童がタブレットPCで解答した画面をIWBに提示し発表したり、IWBの2画面・4画面提示機能による解答比較や解説などを行ったり、タブレットPCに記載した児童の意見や学習のまとめなどを表示し、発表や意見交換にも活用している。

  佐賀市立西与賀小学校では6年生が、1年生にタブレットPCの操作や算数の手書きドリルの計算を教えている。また、1年生にどのように教えたら良いかについて6年生同士で話し合っている。

「事業仕分」 忸怩たる思い

  同日の会議では、フューチャースクールの事業仕分結果についても言及された。
総務省・森田政務官は、事業仕分結果について「残念ながら廃止判定となり、協力してくれている現場の先生たちに申し訳なく、忸怩(じくじ)たる思い。しかし事業仕分結果は最終決定ではない。現場からの声も反映し、拡充分も含め、予算は残る方向になる目途が立ってきた」と述べた。
 総務省・平岡秀夫副大臣は、「事業仕分では厳しい評価であったが、フューチャースクール指定校を見学して新しいツールの新しい使い方を模索している学校を目の当たりにし、ガイドラインの必要性を強く感じた」と話した。
堀田龍也教授(玉川大学教職大学院)は、「事業仕分結果は理不尽。日本のICT活用状況は世界的に見て遅れている。未来に向け、どのようなインフラが必要かを実証することは非常に価値があること。1年で廃止ということは、あってはならない。どんな形であっても継続すべき」と述べた。

  事業者であるNTTコミュニケーションズと富士総研は、「3年継続する事業としてスタートしたものであり、今年10月に導入し、来年4月から本格的に活動しようと実証を重ねている最中の事業仕分結果は、先生や児童に申し訳ない。先生も児童も、継続を希望している。ようやく環境に慣れてきたところ。これがなくなることに不安の声が上がっている」と学校現場の声を報告した。

ガイドラインは2000部作成

  ガイドラインは2000部を作成予定で、各都道府県・市町村教育委員会に配布する。HP掲載も予定。※「OneNote」=テキスト、音声、手書き、Web画像など様々な形のデータを集約できるデジタルノート。マイクロソフトが提供。「コラボノート」=ネット上でノートを共有し、自由に書き込むことができる。提供はJR四国コミュニケーションウェア。

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デジタルTV・電子黒板

“見せて理解・考え深める”授業を展開 成果拡める ―教育ICT活用普及促進協議会

 教育ICT活用普及促進協議会(井上孝美会長・財団法人日本視聴覚教育協会会長)は、昨年10月から1月にかけ、「教育ICT活用実践研究発表会」ブロック発表会を全国7ブロックで開催中だ。同発表会は、文部科学省生涯学習政策局の実施した「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究」(平成20年度より2年間)及び「電子黒板を活用した教育に関する調査研究」(平成21年度)(以下、両調査研究事業)を実施しており、両調査研究事業で得られた実践成果を広く学校現場に浸透させるために開催された。なお、2月25日には、文部科学省で全体報告会を実施する予定。

■関東甲信越地区

ICT教育
▲ 子どもたちが各自発見したものを説明する

  11月5日に実施された関東甲信越地区ブロック発表は、横浜市立茅ヶ崎小学校で開催され、電子黒板や書画カメラ、デジタルカメラ、デジタル教材などを活用した授業が展開された。授業で活用されたICT機器は、電子黒板や書画カメラ、デジタルカメラ、NHK学校放送番組など。

  2年2組の生活科「だいすき茅ヶ崎のまち」(授業者 浜田賢二教諭)では、「茅ヶ崎のまち探検」のひとつとして、「しぜんさがし」の授業を公開した。
 前時までに児童たちは、まちの中で自分たちが発見した「しぜん」について、みんなに見せたいこと、伝えたいことなどをワークシートにまとめている。当日は、書画カメラを使い、「きのこ」や「みどり色の実」、「センリョウ」、「どんぐり」などの実物やスケッチを皆に見せながら、「さくらんぼのような形で、実が赤い」、「実の中にある種がねばねばしている」、「きのこの裏に、貝のように線の模様がある」など、自分たちの言葉で「発見したこと」を発表。中には電子黒板の書き込み機能を使って説明する児童もいた。

事例集を作成

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▲ 実験を全員で共有した
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▲ DSで個別指導しやすい個別学習

  関東甲信越ブロックでは、「教育ICT活用実践事例集」をまとめた。関東ブロックの小学校13校、中学校12校、小中一貫校1校の研究成果が23事例掲載。デジタル教科書、電子黒板、書画カメラ、デジタルビデオカメラ、自作教材、動画クリップ等をどの授業のどの場面で活用したかについて、指導案にまとめられている。

■関西地区

 関西ブロック発表会は、12月1日に開催され、堺市立深井西小学校で公開授業が行われた。同校は電子黒板機能付デジタルテレビ(52インチ)や実物投影機などが全教室に整備されており、公開授業では、デジタルテレビやモバイル機器、テレビ会議を取り入れた授業などが公開された。

  6学年保健体育の授業「病気の予防(たばこの害)」では、たばこの葉を溶かした水と、普通の水にミミズを浸し、起こる変化をデジタルテレビ上に映し、たばこの害について理解を深めた。

  5学年算数の授業「角柱と円柱」は、教室専用ニンテンドーDSi LL(以下、DS)を活用した。校内にある立体物をDSのカメラ機能を使い撮影し、形の仲間分けをクラス全体で行うことで、立体の特徴を学んでいく。
授業のまとめでは、DSを使った練習問題を活用して学習の振り返りを個々に行い、学習内容の確かめを行った。児童からは「先生、レベル1クリアできたよ」などの声が上がっており、楽しみながらも、集中して個別学習に取り組んでいた。問題の解答状況は教員のPCでリアルタイムに確認することができるので、授業内で個別指導もしやすい。DSは算数、理科などの科目で、週に1〜2回程度活用している。

  3学年総合の授業「私たちの町『堺』」では、堺市内の北八下小学校3年生とテレビ会議で交流した。近隣の工場や公園、川の様子などの手作りのポスターや、写真を掲示しながら発表し合うことで地域の共通点や相違点を知ることができる授業内容となっていた。

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【2011年1月1日号】


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