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小学校外国語活動(以下、小学校英語)が来年度より本格実施される。英語ぎらいをつくることなく、コミュニケーション能力素地の育成に寄与する取り組みとは何か。株式会社成美堂は9月18日、小学校教員や教育委員会を対象に、小学校外国語活動必修直前特別セミナー「英語ぎらいを作らない指導のコツ、やってはいけないNG集〜よりよい外国語活動のために」を都内で開催。全国から小学校教員が集まった。
▲松山大学大学院教授・ |
「週1回45分間の活動で、全員が英語好きになり、ネイティブ並みに話せるようになるわけはない。ではどんな活動に取り組むべきなのか。言語学習というスタンスではなく、コミュニケーション能力の低下という課題に小学校英語を通じて取り組み、その素地の育成につなげていくことが小学校英語の役割だ」
そのためには、決まったフレーズを繰り返してやりとりする学習スタイルは適さない。反射的に繰り返すため、耳を傾け、相手の気持ちや考えを理解しようとする過程が抜けるからだ。「他教科では、考え、相手の立場を尊重しながら発言する活動が推奨されている。それは小学校英語も同じ。大切なことは、英語ができるようになることではなく、どのように関わり合い、気持ちを伝えることができるかということ。周囲に耳を傾けられることがコミュニケーションの素地となり、国際理解の第一歩となる。その素地は、中学や高校の英語学習に役に立つ」
例えば、英語で道順を教える活動に、相手が道に迷った幼児だと想像して説明するなど、場面を与えて考えさせていく。初めて会った外国の方には、きちんと聞きとれるようにゆっくりと自分の名前を言う。それがコミュニケーションの質を高める活動に結び付く。
次に重要なことは、「英語で意味を処理できる活動」だ。例えば、黒と白で何色になるのかを英語で尋ね、英語で答えさせる。英語で「6÷2」を出題するなど、他教科と連動させる。これは、全教科を担当する学級担任だからこそできる活動だ。「外部講師に丸投げすることは、子どもたちにとって不幸なこと。外部講師は、定着が前提の英語指導に慣れている。1週間に1回程度の学習で定着しきれていないのに次に進む、というパターンを繰り返すと英語嫌いを育ててしまう危険がある」
聞く活動も大切だ。発音は、聞き取れるようになってこそできるようになるからだ。「しかし、急ぎすぎてはいけない。シャワーのように聞かせるとよく言われるが、シャワーのように聞いていては、シャワーのように流れていく。楽しく集中して考えながら聞く活動こそ必要だ。それに関しては、小学校高学年向けの聞くドリルが不足していると感じる」と述べ、金森氏が監修した教材「歌っておぼえるらくらくイングリッシュ(全2巻)」(成美堂)を紹介した。同教材は基本的な語彙や表現を盛り込んだ全63曲で、小学校高学年の発達段階に合わせたオリジナルソングも多数収録されている。
▲ペンで触れるとネイティブの音声が出る「らくらくペン」
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2001年より小学校で英語活動の取り組みを開始した遠藤教諭。「ゼロから始めて10年経った。そこで感じたことは、小学校英語活動が授業改革の視点になるということ。全人教育として取り組むことで、教員が変わり、子どもも変わっていく」と述べる。
セミナーで遠藤教諭は、英語ノート「世界のあいさつ」で国旗のピクチャーカードを使った活動を紹介、参加者は実際に体験した。
参加者は4枚の国旗カードを日本、フランス、ロシア、イギリスの順に持ち、まず隣の人と日本語であいさつしてからじゃんけんをする。勝者は、2番目の「フランス」を提示できる。同じ国旗を持つ人を見つけてペアになり、「ボンジュー」とあいさつ、ジャンケンをする。勝者は「ロシア」の国旗を提示、再度同じ国旗でペアを探し、あいさつ、ジャンケンをするという活動だ。最後はペアの相手がいない人が残るが、そこからは終わった人があいさつの相手として自主的にヘルプする。協力活動である。
参加者は「負け続けていると次第に相手を見つけることが難しくなってくる。ペアを見つけたときはとてもうれしい」と感想を述べた。遠藤教諭は「次第に相手が見つけにくくなるけれど最後まであきらめずペアを探す点を見落とさずに評価したい。小学校5、6年生は友達関係が固まり、男女が交友しにくくなる時期ですが、その問題を軽減し、学級作りに寄与する活動を展開しやすい点が英語活動の特徴」と述べる。ゲーム終了後、初対面同士で多少硬い雰囲気だった教室内は、なごやかな雰囲気に変わった。
また、「楽しく聞く活動」のひとつとして、「らくらくペン」(成美堂)を使った活動も紹介した。これはSDカードが入った音声ペンで、ピクチャーカードや音声シール、掛図などに触れるだけで、英語の音声が出せる教材だ。必修化に伴いALTのいない授業も増える中、PC操作なども不要で、担任ひとりで英語の音声指導ができる点、英語ノートに対応している点が高く評価されている。
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らくらくペンで掛図をタッチすると、単語や歌、掛図内の動物の自己紹介やクイズなどが発音される。遠藤教諭は動物たちがたくさんいる掛図を提示し、「Who am I?」と問題を出してから「I'm watching TV.」「I'm not a flog.」とヒントを出して考えさせる活動を紹介した。掛図1枚には100以上の音声が埋め込まれており、全5枚で計500以上の音声を聞くことができる。
また、「らくらくペン」の「英語シール」には単語約1200語、例文約750、構文約120、歌・チャンツ42曲が収録されており、中学校1年で学ぶ語彙の約6割がカバーされている。例えば「英語ノート」の単語カードに貼るなどして音声教材を手軽に自作できる。再剥離シールなので何度もはがして使うことができる点も便利だ。
遠藤教諭は「英語活動がそれほど盛んではないと、週1回のALTの授業をわきで見ている教員もいたりする。まずイングリッシュルームを作り、英語活動にふさわしい雰囲気作りからスタート。『らくらくペン』の大型掛図を教室に貼っておくと、休み時間には子どもたちがやってきて楽しみながら取り組んでいる」という。
【2010年10月9日号】