最新IT教育―実践、成果を報告― | ICT|フィンランド教育 |
● 千曲市教育委員会
● 四条畷学園小学校
テレビ会議でALTが授業
和歌山市では、全小学校52校に対し、ALTは5人で各校には1学期に1回程度の派遣回数にすぎない。しかし外国語教育はALT中心であり、本来TTを務めるべき学級担任の外国語教育におけるスキルも不足しているなどの課題があったと角田氏は話す。そこで、これらを解決するためのプロジェクトについて報告した。
課題解決のために和歌山市では、教育イントラネットを利用した市内語学学習支援システム「ATR‐CALL BRIX」を構築し、教員の語学力向上を目指した。
小学校外国語活動の円滑なスタートに向け、小中学校の教員を対象に放課後、ALTによる教員向けコミュニケーション英語クラスを開設した。
それに加えて中学校教員には、個別学習のために、語学学習システム「ATR‐CALL BRIX」を提供し、発音やヒアリングの訓練などができるようにした。
さらに、英語の授業において「21世紀型スキル」育成を目指して思考支援型授業を盛り込むために、オンラインによるプロジェクト学習「Intel Teach」も研修に盛り込んだ。
また、5人のALTを効率的に運用できるよう、電子黒板とタブレットPCを整備し、テレビ会議を使ったALTの授業を展開。子どもたちは、ほぼ毎日、20分間休みを利用し、テレビ会議システムでALTから授業を受ける。これによりネイティブとの交流時間が大幅に増えた。角田氏は、「短時間でも毎日の取り組みにより成果が期待できる」と話す。
また、iPod touchを児童に1人1台配備し、iPod touch用英語教材を開発、朝学習などで取り組んでいる。(報告 和歌山市立教育研究所 角田佳隆氏)
デジタル教材が浸透 研修会も意欲的に
千曲市の公立小学校における英語教育の特徴は、市教育委員会の事務方が積極的に現場に赴き、学校の実態や教員の声に耳を傾けつつ、実践内容を検討するなど市をあげて国際教育を推進している点だ。平成18年度より国際理解教育の方針を策定し、それまで外国語支援員が中心となっていた小学校での英語教育を担任主導に切り替え、教員がより主体的にかかわるよう意識変革を促した。平成19年度には、小学校におけるALT不足解消のため、中学校担当のALTが小学校も担当可能なことから、2名のALTが小学校を担当することになった。また、教材選択は各学校単位に任せたところ、デジタル教材を持つジュニアホライズンの使用率が高いことが判明した。
地元にある信州大学との連携によりデジタルコンテンツを改良し、小学校向けのコンテンツ発信を開始。同年夏より、小5、6年生を対象に、1泊2日のイングリッシュキャンプをスタートしている。ALT10名と児童50名が参加し、学校で習う英語を実践的に使う、さらにまったく学校で英語教育を受けていない児童が英語に触れるチャンスを作る、の2点を目的に据えた。
平成20年度からは、デジタル教材導入校が増大し、学校単位でコンテンツ使用のための研修会が頻繁に行われるようになる。平成21年度は、市職員の学校実態調査により、ALT人材不足が依然問題であることから、2名から4名へ増大。地元の外国籍の人材を掘り起こし国際教育理解の一助になるイベント開催などにより、英語活動が活発化している。
昨年度、国から補正予算が下りたことにより市内小・中学校全13校に電子黒板が配置され、ICT支援員の導入もあり、デジタル教材を使用した授業がさらに活発化している。同教育委員会の強みは、現場の声を直接聞く事務方が予算請求者である点であると強調する。(報告 教育委員会教育総務課 松本賢志氏)
英語活動は全学年で
児童数583名、21学級の横須賀市立鴨居小学校では、平成17年度から先進的な外国語活動を展開。研究結果より次の4点を推奨した。(1)高学年だけでなく、全学年で活動(2)全校体制で活動(3)英語教室を準備(4)カリキュラムの整備
(1)1〜4年では総合的な学習の時間などを使って学校裁量の時間を設定した。(2)学校生活全般に英語を親しむ工夫をする。例として、室名、担任名、教室内の備品などの英語表示や日本・海外都市の時間を示す時計を設置し、ごく自然に英語や外国に関心を持つ環境が整えた。毎週の全校朝会では毎回、児童からなる「国際委員会」が前に出て歌詞をパネルで示し、英語の歌を歌う。(3)机のない椅子だけの通常教室を専門教室「ハロールーム」に指定。ALTを迎えて行う外国語活動は基本的にこの部屋を使用する。教室の一角は壁で仕切られ、裏側は教材保管庫となっており、教材センターとしての役割を果たし、教員がみなで共有する。楽しい英語掲示物もふんだんにあり、自然と楽しむ環境だ。(4)目指すべき6年の姿を念頭に、6年間を見通したカリキュラムの作成を目指す。実際の授業展開には担任とALTの連携を強め、ALTは担任の授業プラン作成段階から相談に乗り、共に授業を作るパートナーとして機能している。
現在、同校にはALTが常駐しているが、今後の課題として、ICT機器を積極的に活用し、より効果の高い活動を目指す。(報告 同校村松雅校長、須賀崇夫教諭)
課外活動で英語塾も
大阪府大東市にある私立四條畷学園小学校では、英語の世界に自分から飛び込んでいこうとする子どもを育てることを目的に、「意図的不完全英語教育」を提唱している。英語を相手に伝えるために「とても大事なこと」と「急いで学習する必要のないこと」を区分けし、小学校段階では、不完全ですき間のある英文を学習する。例えば、私「I」、ギター「guitar」、演奏する「play」の3つの単語を示して英文を作り、”I play ☆ guitar”のように冠詞を☆マークにして抜き取った形を提示し、初期段階では、このすき間を気にせず英語そのものを意識の底に入れていくことを目指す。学習を繰り返すうちに、児童は☆に何が入っているかに興味を持ち始め、冠詞の存在を経験的に理解していく。
放課後にはATR CALL英語塾を実施。ATR(国際電気通信基礎技術研究所)での20年間に及ぶ音声言語学習機構に関する研究の成果から誕生した、コンピュータを利用した英語学習システムだ。
日本人が英語を学習するときの聞きとりや発音の学習メカニズムを、最新の音声技術を用いて多角的研究し、その成果に基づき英語の「音」にフォーカスする学習メソッドで、小学生から大人まで、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく鍛えることが目的。週1回30分、年間25回の課外活動として取り組んでおり、3年生から6年生の希望者が受講することができる。(報告 同校高橋豊副校長)
【2010年10月9日号】