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校務の情報化 ―千葉県印西市教育委員会

デジタル職員室・デジタル校務全校導入で
全市一斉に校務の情報化

 千葉県印西市教育委員会では昨年度補正予算により、校務用PCを全教職員約600名に配備、それに伴い校務支援システム「デジタル職員室」と「デジタル校務」(株式会社 内田洋行)を導入した。導入の経緯と活用について印西市教育センター指導主事の松本博幸氏に聞いた。

学校サーバ管理から教委サーバ管理に

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▲ 印西市教育センター
指導主事 松本博幸氏

市町村合併で教委一括管理に

 印西市では平成21年度まで、各校ごとに学校サーバを設置し、教育委員会がサポートしながらエクセルやワードで各帳票などを作成、成績処理なども行っていた。ある程度のデータ共有は進んでいたものの、個々のファイルデータの連動は実現していなかった。
 平成22年3月、合併により新「印西市」が誕生。「合併に伴い19校から29校と校数が増えましたが、さらに10校分の学校サーバを追加するのはコストも管理負担も大きい。そこで補正予算を活用し、教育委員会でのサーバ一括管理に切り替え、校務用PCを教職員全員に配備、一括管理できるようにしました。しかしPC配備だけで活用は進みません。校務処理が効率的にでき、しかもセキュリティ対策を万全にしたシステムが必要と考えていました」
 そこで松本氏は、校務用PCにどのようなソフトが必要か、市内教職員にアンケート調査を実施。「ワードやエクセルなどのオフィス系」「画像処理ソフト」「校務に役立つもの」などの要望があった。
 それらの要望から、オフィス系ソフトと相性がよく、それまで活用していた成績等校務関係のエクセル書類やワード書類も可能な限り流用でき、Webベースで活用できる「デジタル職員室」と「デジタル校務」を導入した。

全文検索で必要な書類に たどりつける

サーバ管理
▲ 印西市の小中学校を
一括でサーバ管理

 3月末導入、4月から即全校一斉に活用をスタートした「デジタル職員室」は、学校専用ポータルサイトだ。初期画面には、行事予定、各種諸連絡、時間割などが表示され、校務システムや各種諸連絡、掲示板、連絡メールシステム、教委サーバの各種コンテンツ、Webなどにワンクリックでたどりつくことができる。各校の教材・文書データを全市で共有することも可能だ。全文検索できるため、必要な書類を検索して取り出すこともできる。
 全市単位で備品管理ができる点も便利だ。
 「年数を経るごとに備品管理は大変になりますが、備品の経過年数や破損状況も全市単位ですぐに把握できますし、行事によって楽器などの台数が必要になった場合、必要な備品を検索して教育委員会の備品を借りることもできます。どの学校が持っているのかもすぐに分かります」
 「デジタル校務」は小中学校各1校ずつのモデル校からスタート。モデル校で各種帳票などのカスタマイズや仕様、使い勝手を検討した。全市導入の際の教員の不安を取り除き負担を軽減するためにもモデル校での検証は必要であるという。

業務効率は大幅に向上

点検する時間大幅に軽減した

デジタル
▲ “出勤したらすぐにデジタル職員室を起動。
時間割や連絡事項がすぐわかる。
デジタル
▲ デジタル職員室から、 校務ソフトや
教材フォルダにアクセスできる。

 導入効果は大きかった。「ある程度の帳票や成績管理はエクセルやワードなどで進めていたので、それを資産として活用できました。また、課題であった各帳票データの連動が実現したことで大幅に業務が効率化しました。在籍管理の一元化は校務の情報化で最も効果が期待できる部分です」
 成績表や出席簿、指導要録などのデフォルトを変更したいときも簡単だ。
 「各校により少し枠を広げたい、文言を変えたいといった微妙なレイアウト変更をひとつひとつ業者に依頼するのではなく、微妙な変更は教員ででき、かつそれをシステムに反映させることもできる点が使いやすい」と話す。
 在籍管理についても大幅に業務効率が向上する。「転出、転入、出席簿、指導要録など、これまでは変更点をすべて目で確認していましたが、ひとつの入り口で反映できるようになり、点検業務が大幅に軽減されました」
 保健・健康管理についても導入効果は高い。視力、聴力、耳鼻科、体力テストなど、各種健康管理情報が一元管理できるので、各担任と養護教諭が連携しやすくなり、きめ細かい情報収集と分析を指導に反映することができる。
 また、出欠情報や健康データ、評価内容がすべて反映される通知表や指導要録の作成は校務システム導入の最大のメリットだ。児童生徒ひとりひとりに関する各教員の「気づき」もすぐに共有できるため、日々の評価を反映しやすくなった。
 これらモデル校の成果を受け、2学期からは在籍管理、保健管理、体力テスト、備品管理のシステムを全校でスタートする。
 なお成績管理は年間を通じて実施することで成果が上がることから、来年度からの導入とした。
 今後の目標としては、「これらのデータを保護者も共有し、子どもの成績の推移や健康状態をひと目でわかることで、学校と保護者の連携をより密にしていきたい。さらに、千葉県内も同様のシステムを導入して頂き、教員が異動しても同じシステムを活用できるようになればさらに利便性は高まり、児童生徒へのきめこまかい支援を実現できる」と考えている。

【2010年9月4日号】


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