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平成21年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」(速報値)が6月22日、公表された。本調査結果は、学校におけるICT環境の整備状況と、教員のICT活用指導力について全公立学校を対象に文部科学省が毎年調査しているもので、経年変化をみることができる。本年の調査結果は平成21年度の補正予算による整備が反映されたものになっており、いずれの項目も大きく上まわっている。
なお調査基準日は例年3月1日であるが、本調査に限っては3月31日までの整備状況が記載されている。
調査によると、コンピュータ1台当たりの児童生徒数は6・4人となり、昨年度の7・2人/台から上昇している。また、教員の校務用コンピュータ整備率は98・3%と、昨年度の60%を大きく上昇した。
教員のICT活用能力については、5項目すべてにおいて三重県がトップ、愛媛県は2位となった。沖縄県及び京都府、茨城県も5項目すべてにおいて上位に入っている。和歌山県、富山県、千葉県、大阪府などは下位であるものの、今年度調査において整備に関しては飛躍的に伸びていることから、次年度以降の伸びが期待できそうだ。
普通教室の校内LAN整備率は、81・2%前年比で17・2%増。
30Mbps以上の超高速インターネット接続率は65・5%とまだ低いが、高速インターネットの接続率は96・7%となった。
電子黒板の整備状況は約5万6000台。うち、テレビ一体型は約2万4000台、ボード型は約1万1000台、ユニット型は2万1000台。昨年度までの1万6403台を大きく上回った。
コンピュータ1台あたりの児童生徒数・平均値は6・4人/台であった。昨年度の7・2人から整備が進んでいる。トップは、山梨県の4・2人/台だ。IT新改革戦略の3・6人まであと一歩と迫っている。昨年度4・8人/台でトップであった鳥取県であるが、今回は4・7人/台と3位。
前年から大きな伸びを見せたのが、神奈川県と大阪府だ。神奈川県は、前年の9・8人/台から7・2人/台となった。大阪府も同様に、前年9・2人/台から、6・4人/台と全国平均に達した。
今回調査において整備率の伸びが最も大きかったのが、教員の校務用コンピュータだ。本年は98・3%と、昨年度調査の60%を大きく上昇した。 最も整備率が高いのは、134・2%に達した長野県。100%以上の数値を示した都府県は前回調査では山梨県のみであったが、今回調査においては、高知県、島根県、大分県、東京都を含め24都府県にものぼった。80%に達していない都道府県は、青森県、京都府、大阪府、奈良県の4府県のみ。
普通教室の校内LAN整備については平均で81・2%の整備率となり、昨年度の平均整備率64%から伸びを見せた。
最も整備率が高いのは99・7%の富山県。中でも特に伸びたのが大分県(98・3%)、大阪府(98・1%)で、前年の約2倍の整備となっている。鹿児島県(90.4%)、千葉県(97・7%)も大きく数値を伸ばした。90%を超えているのはこのほか、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、兵庫県、徳島県、長崎県。東京都(70・7%)や和歌山県(74・2%)も前年比では大きく伸びているものの、80%は超えていない。
60%を満たしていないのは、青森県と奈良県の2県となった。
30Mbpsの超高速インターネット整備率平均値は65・5%。昨年度の60・5%からわずかに上昇した。50%に達していない件は、栃木県、千葉県、高知県の3県だ。
電子黒板のある学校の割合については、昨年度平均26・3%から大きく上昇したものの、いまだ58・8%となっている。興味深いのは、大阪府が79・3%とトップとなったこと。神奈川県も77・5%と3位、東京都は75・8%と5位。整備の遅れが目立っていた地区の伸びが目を引く。
補正予算による整備が進み、全体として数値は大きく躍進している点は喜ばしい。しかし喜んでばかりはいられない。これで十分とはいえないからだ。本調査により、これから解決していかなければならない課題がより明確になったともいえる。
まず、校務用PCの整備がほぼ100%に達しつつあるとはいえ、それを活用するための仕組みについては各都道府県ばらつきがあるという点。校務用PC整備の調査となっているため、授業に活用するためのPC整備にもいまだばらつきがある。中には事務職員や養護教諭に配布されていない、という自治体もある。事務職員用のPCが未整備であった職員がそれについて担当部局に問い合わせると「事務職員にはすでに配布済であると思っていた」という回答だったと聞く。これも、ばらつきの一つといえる。
次に、数値的には飛躍的な伸びを見せた電子黒板ではあるが、全教室配備にはほど遠い状況であるという点。
毎時間気軽にちょっとしたことにも使える、プリントや教材を提示したりコンテンツを投影したり、子どもたちがそれを使って発表するという環境になっている自治体は多いとはいえず、例えば中学校では「使いたいとは思うがPC室に1台のみの整備で、PC室を英語科が毎時間使うわけにはいかず結局日常的な活用につなげにくい」という状況であるところがまだ多い。今後、課題はひとつずつクリアしていかなければならないだろう。
整備状況の数値の伸びと比較して、こちらの数値は、伸びは見られるものの、大きくはない。
大項目5、小項目18について調査したなか、大項目の中で最も「できる」という回答が多かったのが、前回の調査同様「教材研究、指導の準備、評価などにICTを活用する能力」で、73・9%であった。最も「できる」と答えた割合が低いのが、「授業中にICTを活用して指導する能力」で、58・5%。「児童・生徒のICT活用を指導する能力」についても60・3%と同様の数値だ。
なお大項目で比較的「できない」ものは、「授業中にICTを活用して指導する能力」であり、3〜4割弱の教員が、授業中での活用ができていない。
小項目別にみると、最も「できる」ことが「授業で使う教材や資料などを集めるために、インターネットやCD‐ROMなどを活用できる」で81・6%。最も「できない」ことが「児童がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用してわかりやすく発表したり表現したりできるように指導する」で、54・2%であった。
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整備が進めば、活用は進む。そう期待するならば、本調査における整備の数値の伸びは次年度、教員のICT活用能力の数値に結び付く可能性が考えられる。
授業の準備や成績評価にPCを活用している教員の数は、校務用PC配備が進んだことから、より増えることが予想される。
しかし、伸びがそれほど期待できない部分もある。
最も達成率が低く伸び率も低い、生徒のICT活用を指導する能力「児童がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用してわかりやすく発表したり表現したりできるように指導する」に関して「できる」と答える教員を増やすには、普通教室における整備強化がポイントになるからだ。子どもたちがICTを使って「すぐに発表できる」「気軽に発表できる」教室環境のためには、プロジェクターや電子黒板等の大画面でコンテンツや教材を提示できる整備が重要だ。
授業中にICTを活用して指導できると答えた教員の達成率が他項目に比べて低いのは、授業ですぐに活用できる環境にまで達していないからであり、その点がまだ数値的にも心もとない状況といえる。
本調査については、デジタルテレビの整備調査項目はなく、別途調査結果を待たなければならない(現在文科省が集計中)。テレビはテレビとして視聴したりDVD教材の投影などに活用する、という教員も多いが、ある程度の大きさがあれば、提示機器として活用することも可能だ。そのための追加機能や追加機材を考慮、導入・活用することも視野に入れ、整備を生きたものにしていくことが望まれる。
【2010年7月3日号】