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エネルギー教育は「社会科」「理科」「総合」で
  新学習指導要領に、新しい視点のひとつとして「エネルギー教育」が盛り込まれた。エネルギー教育は、主に「理科」「社会科」「総合」で扱われる。しかし、「エネルギー」を切り口とした教材はほとんどないのが現状だ。そこで、電気事業連合会では、NHKの関連団体が企画した小学校におけるエネルギー教育教材DVD「ようこそエネルギー図書館へ」の制作に協力。本年10月、全小学校に配布された。DVD制作に関わった、谷川彰英氏(筑波大学名誉教授・前副学長)、長谷川康男氏(筑波大学附属小学校・副校長)、鷲見辰美氏(同校教官)に、制作意図と活用法を聞いた。


筑波大学
谷川氏

 DVD「ようこそエネルギー図書館へ」の全体監修に携わった谷川氏は「火力、原子力、水力、風力、太陽光―エネルギーのもと?には様々なものがある。環境を悪化させず、かつ持続可能な社会に向け、我々はどのようにエネルギーと付き合っていくべきか。それを判断できる子どもを育てるには、様々な立場から、正しい情報を提供、そこから判断する必要があり、各教科から捉えることは理にかなった流れ」と述べる。

 学級担任が多くの教科を担当する小学校においては、「理科ではエネルギーの科学的な見方を、社会科では社会的な役割や価値を、総合では調べ学習を通して未来の発展性を」教えるといった教科横断的な取り組みはむしろ馴染みやすいと言える。

 「エネルギー、法律、環境、経済、金融など、現代社会は解決すべき問題が山積みだ。最終的に判断し意思決定するには、社会的要素、科学的要素などあらゆる面から総合的に考えていく必要がある。エネルギーは、世界と日本の関係を学ぶ良い視点になる。理科の学習は社会科に、社会科の学習は総合へと結びついていく。小学校高学年で積極的に取り組み、感情論ではなく、合理的な結論を導くための判断材料の基礎となる学習を行ってもらいたい」

<理科>
目に見えにくい「エネルギー」意識化


付属小教官
鷲見氏

 「理科」では、新学習指導要領から新しく入った単元「電気の利用」(6年生)で、「エネルギー」を取り扱う。

 小学校段階で「電気」「力」など目には見えないが確かに存在する「エネルギー」に対する実感を持ち、中学校では抽象的な世界感にイメージをもって取り組めるようになってほしい、というのが本教材の狙いだ。電気は見えないので理解させにくい、電気学習のイメージがわかないなど理科でエネルギーや電気などについて教えることがそれほど得意ではない先生にも使いやすいように配慮した。

 主に理科を担当した鷲見教諭は、「『エネルギー』は目に見えにくく、手の上に乗せて見せる、というわけにはいかず、実態のイメージを掴みにくいもの。そこでDVDでは、まず電気についてイメージで学ぶ。その後、実際に手回し発電機で電気を作り、日本国内の発電所と同じ仕組みであることを説明、仕組みを体験できる流れで取り組むことができる」と話す。

<社会科>
便利な暮らしを支える「エネルギー」学ぶ

 「社会科」では、「これからの自動車づくり」(5年生)の中で、電気やガソリンなどのエネルギーについて学ぶ。主に社会科を担当した長谷川氏は「高学年で社会科嫌いになる子どもは多い。それは、身近な社会から少し離れた実感が伴いにくい学習内容に移行するから。エネルギーについてもそれは同じ。ハイブリッドカーや電気自動車など、知ってはいるものの、それらがエネルギーで動いているということ、エネルギーの種類により様々な違いが生まれるという理解まで辿りついていない」と述べる。

 そこでDVDでは、エネルギーを視覚的に理解しやすい映像を収録。最初に、エネルギーについてのイメージを持ってから学習を進める。


付属小
長谷川副校長

 「今我々が便利な生活を送ることができるのも、全てはエネルギーのおかげ。特に電気エネルギーの貢献度は多岐に渡る。今後も便利な生活を維持していくには、エネルギーの利用方法やその特性について学ぶ必要がある。持続可能な社会の中でどうエネルギーを考えていくべきか、そのために必要な情報を得る必要がある」

 4年生から扱い始める「環境問題」だが、小学校社会科では、経済的な視点からはほとんど取り組んでいないこともあり、その多くが「環境を守ろう」という結論に終始しがち。

 「経済的な視点を教えず環境問題を教えると、自然や環境を守る、という結論で終わってしまう。ところが現実問題では、経済的な側面も重要な要素。様々な要素から環境保全を考える必要がある」

<総合的な学習の時間>
 「調べたい」意欲を
 生むきっかけ作りを

 「エネルギー」は、主に調べ学習のテーマとなる。しかし「エネルギーについて調べよう」という投げかけでは漠然としすぎており、深まりのある学習になりにくい。そこでDVDでは、エネルギーについてヒントとなるような映像を収録、子どもたちが「調べたい」テーマを意欲的に設定しやすいよう工夫した。

 例えば、地球が置かれている現状、現在のエネルギー事情、自分たちにできることなどだ。実際に教材を使って「総合」の授業を行ったところ、家庭の電力メーターを毎日測定し、どのような生活をするとエネルギー量が減るのかを調べた子どももいた。

 自家発電で自宅の風呂を温める実験や、たい肥を作って植物の成長変化を見るなど、「日常生活の工夫」が省エネにどう結びつくかを調べ、実際に体験していく学習が可能になる。

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 小学校向けエネルギー教育教材DVD「ようこそエネルギー図書館へ」が完成した。本年??月には全国の小学校に無料配布されている。小学校の授業で使いやすいように「理科」「社会」「総合」の各教科に分かれており、学習指導案やワークシートも用意。説明やビデオ、クイズなどで構成。新学習指導要領に準拠した学習指導案付き。

【社会編】(全22分)
 @身近にあふれるエネルギー Aエネルギーと人類の生活 Bエネルギーのこれから

【理科編】(全23分)
 @身近にあふれるエネルギー A身近なエネルギー「電気」 Bエネルギーのこれから

【総合編】(全12分)
 @便利なエネルギーを使う代償 A今の生活を捨てられる? Bクリーンな発電 C未来を生きていくのはわたしたち
▼企画・制作 財団法人NHKインターナショナル・株式会社NHKエデュケーショナル ▼問合せ=電気事業連合会 電話03-5221-1440

【2009年11月7日号】

関連情報リンク
→「小学校社会科」‘暗記科目に逆戻り’は誤解。考えるための新しい視点追加 文部科学省教科調査官・澤井陽介氏(091112)


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