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▲ 国際バカロレア機構 アジア太平洋地域責任者 ジョン・スイッツアー氏 |
国際バカロレア機構のアジア太平洋地域責任者のジョン・スイッツアー氏が1月に来日、今後の展開や国際バカロレアの有効性について聞いた。
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EUのボローニャプロセス、日中韓が中心となったキャンパスアジアはそれぞれ、欧州、アジアの高等教育圏や大学間交流、単位互換などを目指す試みだ。大学生や大学教員の域内交流や質の高度化を目指すこれらの取組みに対して、国際バカロレア(International Baccalaureate、以下IBと略)は全世界を対象に初等中等教育における教育の質と世界の大学への共通入学資格を付与・保障する。(詳細 http://www.ibo.org/)
人や物が国境を越えて全世界規模で移動・滞留するグローバル化の時代にあってニーズが高まり、IBプログラム実施校数は「5年ごとに倍増している。2020年には1万校を超える」とスイッツアー氏は予想する。
現在、IBプログラム実施校は全世界140か国に3115校あり、約90万人の生徒がIBプログラムで学ぶ。日本にはインターナショナルスクールを含めて実施校が19校あり、このうち5校が日本の学校教育法第1条に該当する学校だ。(5校は加藤学園暁秀中・高、立命館宇治中・高、玉川学園中・高、東京学芸大学附属国際中等教育学校、AICJ中・高)
「英国の元首相のトニー・ブレアが1つの地域に1校以上のIB実施校をと言い残して退任したが、それが実現して英国では100校以上の公立校でIBプログラムが行われている。また、中国にも実施校が80校(うち特別行政区の香港に30校)ある」
韓国が5校と少ないのは、韓国籍の生徒は韓国内ではインターナショナルスクールに入学が許されないからだという。
IBには高校2、3年生を対象にしたDP(ディプロマ・プログラム)、11〜16歳を対象としたMYP(中等教育プログラム)、3〜12歳を対象にしたPYP(初等課程プログラム)がある。DPでは文学(第一言語)、語学(第二言語)、個人と社会、数学、実験科学、芸術など選択科目、計6科目を履修。加えて分析的思考を学ぶ「知の理論」、体験的活動を重視する「創造性・活動・奉仕」、自分でテーマ設定して研究する「課題論文」(欧文で4000ワード、日本語で8000字)に取り組む。
DPはかなり高度で、しかも第一言語を日本語で文学を取った場合には、日本語で学ぶがそれ以外は英語で学ばなければならない。
また、日本の教室で一般的に行われている、社会的に既得の「正解」とされる知識を暗記・理解する型の教育ではなく、答えのない世界を模索し正解案を自ら導き出す問題発見型の教育である。フィンランドなどでも行われている教育方法であり、これまでの「正解」に寄りかかる教育ではなく、問題発見型の教育が日本でも一層求められる。
DPを日本語で履修することはできないのだろうか。
「言語も含めて我々の組織がそれだけの言語をサポートできる体制になっていない。MYPなら日本語でもできるので、日本語でMYPを履修しながら英語の力を培い、DPにつなげることもできるかもしれない」とスイッツアー氏は述べている。
IBは国際連盟の職員の子弟が通っているインターナショナルスクールで起こり、そこからスタートした。本部はスイスに、カリキュラム評価センターがイギリスにある。また、ヨーロッパ・アフリカ中東地域、北米地域、アジア太平洋地域、ラテン・アメリカ地域の4地域事務所で各地域のIB実施校をサポートする。
IBプログラムのカリキュラム改善はどのように行われているのだろうか。
「5年ごとに見直している。例えば科学では、世界中の大学でサイエンスに求められていることを5年間リサーチしながらその後半の2年間かけてカリキュラムを改善・試行してから、実際に学校に導入している。こうしたプロセスを全教科で行っている」
大学生数が世界規模で激増し、中国、インドを筆頭に世界的に留学生数が増加している。スイッツアー氏は国内の優秀な学生を引き止め、また国外の優秀な学生に日本の大学に来てもらうために、IBの資格を日本の大学が積極的に評価することが大切だという。
【2011年2月5日号】
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