前号(8月22日号)に引き続き、8月4日・5日に佐賀県で開催された「平成23年度全国養護教諭研究大会」から、記念講演とシンポジウムの様子を紹介する。記念講演は、(独)国立病院機構福岡病院名誉院長の西間三馨氏。シンポジウムは、宮城県子ども総合センター所長の本間博彰氏がコーディネーターとなり、学校長、養護教諭、学校医、教育委員会の4名が学校保健活動における取り組みを発表した。
学校におけるアレルギー 疾患への対応について
講演する西間三馨氏 |
西間氏は、文部科学省が(財)日本学校保健会の協力により取りまとめた「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」の内容に沿って、様々なアレルギー疾患の症状について説明。
「ぜん息の場合、発作が出なくなっても、気管支に傷が残るなど、普通の状態に戻っていないので、発作が治まっても治療を怠ってはいけません。治療は主に薬を使って行われますが、ぜん息はアレルギー疾患なので、発作の原因となるホコリや動物の毛、タバコなどを周りから減らすなど環境整備が必要です」と発作を引き起こす要因などが挙げられた。
近年は「食物アレルギー」の子どもが増えているが、食物アレルギーを引き起こす原因食物を判断するには、「明らかな症状の既往がある」「食物負荷試験が陽性」「IgE抗体などの検査が陽性」などがポイントだという。
「低年齢の子どもの3大食物アレルギーは、牛乳、卵、小麦で、小学生以上になるとエビやカニなどの甲殻類が出てきます。食物アレルギーでショックを起こすなど緊急を要する場合は、アドレナリンの皮下注射が有効です」と西間氏は述べた。
佐賀県立杵島商業高等学校養護教諭の末次多希子氏は、生徒の健康意識が低いと感じたことから、口腔内の衛生についての保健指導を実施。むし歯の原因菌数の検査を生徒自らが実験形式で行うことで「自分の体を大切にしなければいけない」と意識させた経験を紹介。
兵庫県立神戸高校の校長・岡野幸弘氏は、平成21年に新型インフルエンザの国内初感染者が同校で確認された時の体験を報告。感染が確認された後、学校医から教職員に対して「新型インフルエンザは多くの場合、重症化はしない」「高校生のように体力があれば数日で治る」と説明してもらったことにより、保護者に対して理解が得られる説明ができたという。
前東京都医師会学校医委員会副委員長の山田正興氏は、学校における感染症対策などについて述べた。感染症の対策は平時の対応が重要で、特に学校では養護教諭が中心となり、児童生徒の予防接種の有無を確認することが重要。また、4月に学校で配られる調査票を確認して、未接種者がいないかを把握することが大事だと話す。
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熊本県教育庁体育保健課指導主事の松島裕美氏は「心の健康アドバイザー事業」について報告。この事業では県内を13のブロックに分けて事務局を設置し、学校からの相談に応じて精神科医や小児科医などの専門スタッフを派遣。事務局スタッフは養護教諭が務め、地域のコーディネーターとしての役目を担う。取り組みの成果として、「学校保健支援の基盤ができつつある」「教職員が安心できる」など、学校からの声を紹介した。
4名の発表を受け、コーディネーターの本間氏は「学校保健において、保護者や関係機関との連携は、もはや当たり前のこと。学校内の連携が取れていないと組織の中で孤立する恐れがあるので、学校内での意思疎通を図ることが、養護教諭にとって重要なテーマ」とシンポジウムをまとめた。
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・全国養護教諭研究大会開催 校内外の連携役に(110822)
【2011年9月19日号】