8月27日・28日、横浜市立中学校教育研究会学校行事部会(会長/六角橋中学校・日下部幸雄校長)が行った「自然教室候補地 視察会」に同行し、実際に自然教室の実施場所として評価の高い施設を取材した。
高校生が語り継ぐ 長野で学ぶ平和学習
地元の長野俊英高校生徒が「象山地下壕」 の中を案内し平和の尊さを語り継ぐ |
横浜駅をバスで出発した一行は、東名自動車道を経由し中央自動車道で茅野方面から長野県へ。最初の目的地、長野市にある「遊学城下町」松代へ向かった。
最初の見学地は、太平洋戦争末期に軍部が本土決戦の最後の拠点として極秘裏に計画した「象山地下壕」。終戦まで約9か月間、子どもを含む地元住民及び朝鮮から動員された労働者が掘削に従事。総延長10キロ以上が掘られたが、現在の見学エリアは約500メートルだ。
戦後、忘れ去られようとしていたこの地を、1985年に長野俊英高等学校の教員と生徒が調査し、保存公開を市に依頼。今では、土屋光男教頭率いる郷土研究班の生徒が、中高生などの団体に対し、工事の方法や工事に伴い生じた悲しい事故の体験談、住民が立ち退きを迫られた史実、労働者と地元住民とのふれあいなどを紹介し、一味違った平和学習が可能だ(1度に3〜4クラスに対応)。「僕たちの考えを押し付けるわけではありません。考えるきっかけにしてほしいのです」とまとめる生徒の言葉には、参加者から大きな拍手が起こった。
また、松代は真田家の城下町として美しい街並みを残す。一行は、真田宝物館、文武学校を訪れ、伝承されてきた大名道具の収蔵・展示を、ボランティアガイドの案内で見学。藩士の子弟の学問・武芸を奨励するために建設した文武学校は、現在でも座禅を組むなど利用する学校がある。
自然の素材あふれる 体験活動がたっぷり
青竹に生地を巻いてパン作り |
松代を離れて、1時間強、宿泊地の菅平高原へ到着。夕食前に、「やまぼうし自然学校」のスタッフの指導のもと、火おこし、青竹に生地を巻きつけて炭火で焼く、パンとクーヘン作りを体験。子どものように笑いが起き、作業に取り組む姿は、大自然がなせる技だろう。大人がこれほど夢中になるのだから、子どもたちは言うまでもない。実際の学習時には、森に入って自然を観察するネイチャートレイル、森林整備など人気の体験と組み合わせられる。
2日目の朝は、室内の体験プログラムのうち、森のキーホルダー・ドリームキャッチャー・くるみのストラップの3種に挑戦。約2時間かかるストラップ作りでは、延々とくるみの硬い殻を削る。ともすると飽きてしまうような作業だが、「自然界の物を材料にして体験をしてもらっています。それは、例えばリスやねずみがどれくらい時間をかけてくるみを割って実を食べているのかなどが実感できるからです」とスタッフの瑞慶覧明子事務局長は話す。
農村で得た食体験 生徒の心に刻まれる
「ほっとステイ」ではありのままの農村を体験 |
菅平高原から約1時間の旧・武石村(現・上田市)で、長野県下8か所で実施している日帰り農村体験「ほっとステイ」の様子を聞いた。体験内容は、その日自分たちが入った家庭(1家庭に約5〜6人)で、その日行う農村のひとコマ。9時30分から6時間、毎日異なった体験ができる。武石地区は昨年、約5300人が体験に訪れた。
夫婦2人暮らしの飯田家では、農作業と川遊びが中心。昼食は弁当を持参するが、1品は家庭の味を体験する。飯田家は、自家製の野菜で作った「肉じゃが」が定番。後日届いた手紙を読むと、「野菜が新鮮」「肉じゃががおいしかった」などが多く、本物の食体験が心に刻まれたようだ。「詳しいことを聞かなくても、話していると家庭環境が複雑な時代だなと感じる」と話す秀範さん。まるで本当の孫のように受け入れている。
2日間を終えた参加者からは、「県の皆さんの思いがあふれていた」「民泊が多いなか日帰りの体験でも効果があることを感じた」など見て・触れて・味わって・体験した声があがった。
【2011年9月19日号】