第13回教育委員会対象セミナー大阪 タブレット端末活用と学力向上・校務の情報化

 10月11日、教育家庭新聞社では大阪で第13回教育委員会対象セミナーを開催。参加者は大規模市から小規模市町所属の方まで幅広く、昨年度同時期大阪開催のセミナーを大幅に上回る参加者が集まった。各自治体の予算確保におけるそれぞれの工夫が興味深い。次回第14回教育委員会対象セミナーは東京で、11月20日に開催する。

指導者用タブレット端末デジタルTVで学力向上―大阪府・堺市教育委員会

  堺市では今年度から、指導用タブレット端末とデジタルTVを活用した授業改善に向けた整備を進めている。

  長年にわたり学校教育の情報化に取り組んできた堺市では平成17年から教育専用イントラネットを構築。データセンターに各種サーバを設置し、グループウェアやTV会議などを活用してきた。

  校務系ネットワークと教育系ネットワークは完全分離。基盤となるネットワークは平成18年から稼働を開始しており、各学校のPC教室から校務系・教育系ネットワークを配線。校内LANは平成22年に整備完了している。

  教育活用では、ノートPCを「教室で班ごとに使う」、「教室のTVにつなげて一斉授業に使う」、「教室後方に設置して調べ学習に使う」3つの活用スタイルを提示して進めてきたが、重量のあるノートPCの持ち運びやTVとの接続作業などの負担感などもあり、日常的な授業活用には至っていなかった。

  そこで、タブレット端末の導入を検討。タブレット端末の利点は(1)持ち運びのしやすさ (2)操作が簡単 (3)起動が速い など。「学力向上」を目標に、タブレット端末を無線LANでTVにつないで資料等を提示、机間指導の充実を図ることを想定した授業環境を「堺スタイル」と名付け全市一斉整備を目指す。堺スタイルでは、教室内で動きながら提示内容を操作することができ、児童生徒が自席から操作することもできる。教員には、これまでの授業スタイルを一変させる目的ではなく、これまで難しかった資料提示が簡単に実現するなど、授業の質を高めるための整備であると説明。デジタル教科書はサーバ配信型で活用する。

  これまでの経験から、長期にわたって整備する手法では活用が進みにくいと感じており、タブレット端末活用成功のためには全市一斉整備が重要なポイントになると考えた。

  そのため、効果検証として事前にタブレット端末を4台購入し、1つの小学校で「堺スタイル」での授業を先行実施。その中で、タブレット端末を活用した授業と従来方式での授業も比較。これは現場教員からの提案で実現した。両授業を比較すると、授業における効果が現れ、例えば授業中に発表できる児童の人数が増え、モチベーションも上がる。児童からは「友だちの説明をたくさん聞くことができる」「先生の説明が分かりやすい」などの声が上がった。

  これらの検証結果をビデオや資料にまとめ、実証された効果の説明としての共通理解のためのエビデンスとして活用。その結果一斉整備が実現し、約1500台のタブレット端末が今年度1月までに全小学校に導入される。

  それに向け、今夏は事前研修を39回実施。教員の参加率はこれまで以上に高く、期待度がうかがえるものとなった。

  研修後、どのような活用をしたいのかを聞くと、700に迫る活用事例が集まった。研修前は「どう使えば良いのかわからない」と言っていた教員が、研修によって活用イメージが沸いたということで、手応えを感じている。事例は現在精査中で、全教員にフィードバックを予定している。

  12月25日には教育フォーラムを実施予定で、教員の活用事例を発表していく予定だ。

[第13回教育委員会対象セミナー大阪]

【2013年11月4日】

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