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義務教育初のエネルギー教育「放射線」
理科教育コンサルタント・小森栄治氏に聞く

  ─「放射線教育」を円滑に進めるためには─

小森栄治氏
理科教育コンサルタント
小森栄治氏

 新学習指導要領により、義務教育で「放射線」が取り扱われる。現在理科教育コンサルタントとして、学校教員や教員志望の学生、子どもたちに理科の楽しさや実験のノウハウを伝える活動を行っている小森栄治氏は、今春、中学校理科第1分野「科学技術と人間」に対応したDVD「偉人たちとの授業―放射線を知る」を監修。「経験がない先生でも授業ができるようなDVD」と話す。新学習指導要領ではどのように「放射線」を扱い、授業で教えれば良いのか。

■正しい知識を知ること
 「放射線」について質問すると、「危険」「身体に悪い」などのマイナスイメージばかりが多く出ます。紫外線や赤外線を放射線の一種と誤解するなど、大学生や大人でも正しく理解していない場合が多いのです。これは、これまで義務教育で「放射線」がほとんど取り扱われていなかったからでしょう。

 放射線は、太陽からも、大地や空気からも放射されています。それらは、自然放射線と呼ばれています。また、植物の三大栄養素といわれるカリウムのうち、カリウム40は、放射線を出しますから、食べ物からもごく微量ながら放射線が出ています。それがイコール「汚染された食べ物」ということにはなりません。量がとても少ないから心配する必要がないのです。

 雨の降らない宇宙に、「宇宙天気予報」があります。太陽活動などを観測し、放射線の量を予想しており、放射線の多い日には船外活動をしないようにしています。宇宙からの放射線の一部は、地球の大気によって遮断されているので、宇宙では放射線が地上よりずっと多いのです。

 「放射線」は「さえぎる」ことで量を調整、安全を配慮しながら利用することができます。医療などではメリットが大きいので、治療や診断に使われています。害(デメリット)と利点(メリット)を比べ、「量」を考慮、その利用について意思決定するには、正しい知識が必要です。

DVD「偉人たちとの授業-放射線を知る」
DVD「偉人たちとの授業-放射線を知る」
無料配布先問合せ=電気事業連合会
TEL.03-5221-1440

■初めての指導で役立つ教材も
 今回の指導要領改訂で「放射線」を扱うようになりましたが、教えたことのある先生はほとんどいないと言って良いでしょう。「放射線」についての授業を受けた経験のある先生も、多くはないはずです。

 そこで、DVD「偉人たちとの授業―放射線を知る」では、ワークシートとDVD視聴、実験を含め、1時間あるいは2時間で放射線教育を実施できるように構成いたしました。「放射線」のイメージを子どもたちに聞く、DVDを見る、学んだことをまとめるという流れで1時間。その後、身の回りの「放射線」の測定や、さえぎる実験などを加えた2時間構成で、学習指導案も添付してあります。先生も一緒に見て学べるようになっています。

 DVDには、X線を発見したヴィルヘルム・レントゲン氏、ラジウムやポロニウムを精製・発見したマリー・キュリー氏、放射線を目で見ることができる「霧箱」を発明したチャールズ・ウィルソン氏が登場、彼らによる「出前授業」が展開されます。いずれもノーベル賞の受賞者です。レントゲン氏は第1回ノーベル賞受賞者、マリー・キュリー氏は、個人で1回、夫婦で1回受賞。娘と義理の息子もそれぞれ受賞しています。

■「日常生活」と「科学技術」結びつきに気付かせる
 数年前、「総合」の時間で「放射線」をテーマに調べ学習を行った際には、「放射線は火と同じ。非常に役立つが、使い方を誤ってはならないもの」という結論を導いた生徒がいました。まさにその通りで、新エネルギー、原子力、バイオエネルギーなど様々なエネルギーにそれぞれどんなメリットデメリットがあるのか、科学的に正しい知識を獲得し、意思決定をできる子どもたちを育成していくことが必要です。

 中学校理科第1分野「科学技術と人間」は、日常生活と科学技術がどう結びついているのかがよくわかるところ。DVDを活用し、今後の生活に結びつく授業を展開して頂きたいと願っています。

関連情報リンク
→理科教育の危機は日本の危機
→新学習指導要領とこれからの理科教育

【2009年08月08日号】


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