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特集 小学校英語

「英語ノート」デジタル版は
紙ベースでできない活動を支援する

文部科学省 教科調査官 菅 正隆氏

 作家の田辺聖子氏は、「心が動かなければ、口は動かない。言葉の本当の意味を知るには、体験が必要であり、語彙を知るには読書が必要だ。そして言葉の使い方を知るには、異文化に触れる必要がある。自分以外の『他人』は、すべて『異文化』。そこでもまれていかないと、言葉の力は発展しない」と言っている。

 これは、「小学校英語」が目指すもののひとつ。

 新学習指導要領の2本柱は、「言語力」と「道徳心」の育成。特に「言語力」育成に関しては全教科に盛り込まれており、小学校英語も同様だ。

 小学校英語に関しては、英語を教えることが主体ではなく、英語を使う「モデル」を教えることを目的としており、子どもたちが「主」となる英語活動を組み立てることがポイントになる。子どもたちに、英語を使った活動をしたい、という意欲を育むことは、心を動かす、ということ。心が動けば、子どもたちには力がついてくる。

 「英語ノート」を活用した「自分の一日を紹介しよう」という単元の学習では、クラスの友達の時間の流れが分かった、世界の「時差」を実感した、といった感想が聞かれた。このように具体的なイメージを深め、意欲を生んでいくことが英語活動で求められている内容だ。

 小学校英語活動は、英語能力の育成というよりは、コミュニケーション能力の育成が目的。コミュニケーション能力を育むことで、中学校から本格的に英語力向上に取組むための土壌を育む。慣れ親しむ、を主目的としたのは、中学校英語の先取りではない小学校英語を期待しているから。ゲームなどの楽しい活動から、「気づき」をどう与えられるか、もポイントになる。「楽しい」活動とは、「fun」ではなく、「interest」。気づいてもらうことを主眼と考え、取組んで頂きたい。

 今後の「小学校英語」については、平成23年度の実施を見てから検討する。

「英語ノート」デジタル版は「英語ノート」がそのままデジタル化されている。どこをクリックすればどの画像が拡大するかなどについてはPDF版のマニュアルが添付されている。

プロジェクターや電子黒板で活用を

 「英語ノート」デジタル版は、紙ベースではできない活動を支援する。

 文部科学省としてはソフトウェアを作成、配布した。コンピュータやプロジェクターは各校にほぼ整備されているが、電子黒板については、整備されていない学校も多い。ALTの雇用が難しくなってきた教委が、簡易タイプの電子黒板を配布、小学校英語活動を支援した例もある。電子黒板の調達については、各教育委員会の力の見せ所といえる。


「英語活動」を通して子どもの”目”輝く瞬間を
大阪府教育センター主任指導主事
蛭田 勲氏

 日本語におけるコミュニケーションが苦手な子が、英語活動を通して目を輝かせる瞬間が、必ずある。その瞬間を如何に多く作り出すかが、学級担任のクラスマネジメント力。地域の人材やALTに任せきりの授業では、コミュニケーションへの積極的な態度の育成は難しい。学級担任の力が重要だ。

 英語に自信がない、という教員に言いたいのは、クラスルームイングリッシュは、英語の雰囲気作りのためのものである、ということ。教員自身に高度な英語力を求めているわけではないので、積極的に取り組んでもらいたい。

 逆に、英語力のある教員ならではの課題もある。

 英語が得意な教員は、つい自分がたくさん英語を話してしまいがち。CDや「英語ノート」デジタル版、教材などでネイティブの音声に多く触れさせ、活動したい、という意欲を持たせていく流れを作ることが重要だ。

 もうひとつの課題は、中学校英語の先取りにならないこと。小学生期に、まだ十分に読めるとは言えない「英文」を読ませようとすると、自然に声は小さくなってしまうもの。そうならないよう、文字指導については慎重にすべきで、決して教え込むことのないように願いたい。大量に音声を聞かせ、一緒に繰り返し、どんどん楽しい活動を取り入れ、英語活動を行ってほしい。

 誕生したばかりの外国語活動だが、英語が得意ではなくても、ICTや「英語ノート」、「英語ノート」デジタル版を使えば、出来る。

指示は英語、指導は日本語
頑張りすぎない英語活動を
水尾小学校 学校長
樫本佳子氏

 平成23年度、新学習指導要領の本格的実施となります。

 本校でも次年度の移行措置に向けて準備を進めており、とりわけ小学校の外国語活動について、年間35時間をどのように進めていくかは大きな課題でありました。

 戸惑いと不安感を持つゼロからのスタートでしたが、とりあえず時間割に毎週1時間、総合的な学習の中に位置づけて平成19年度より2年間実施してきました。

 下地のない学校でのスタートですので、最初は地域の児童英語指導をされている方の手助けを得、指導方法を担任が学びながら毎週1時間の英語に慣れていきました。その中で、英語指導は地域の先生が上手でありながらも、子どもたちとのコミュニケーションの取り方や状況把握はやはり担任だ、と改めて感じることもありました。

 英語指導を進める中で、担任からは「今言いたいことを英語で伝えようとしたら言葉がつまって出てこない」という悩みも出てきました。そこで、大切なのは児童が楽しめる学習であることから、簡単な指示は英語で、指導では日本語を活用する、という流れが生まれました。

 文部科学省による「英語ノート」及びデジタル版は、系統立てた学習スタイルを持たないスタートだった本校には大変助かりました。誤解を招くかもしれませんが、「私にも教えられる、頑張らない英語、高学年を担任しても大丈夫」という学習を目指して2年間進めてくることができているのではないかと自負しております。


特集1 茨木市立水尾小学校 「英語ノート」デジタル版を活用した授業

特集3 「英語ノート」デジタル版紹介