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専門職大学院の課題 従来の大学院との区別は?

  

大学学部の専門教育と専門職大学院との整合性をいかに図るか、「社会的・国際的に通用する高度専門職業人養成」を行う教育をいかに実現し、またその質を保証するか  私学高等教育研究所(日本私立大学協会)主催の第34回公開研究会「大学院改革と専門職大学院」が11月22日に私学会館で開催された。

平成15年度に高度専門職業人養成に特化した大学院として設立された専門職大学院は、平成16年度に設置された法科大学院を筆頭に、マネジメント、公共政策、公衆衛生の分野などで急速に拡大し、20年度発足予定の21の教職大学院を加えると、専門職大学院数は175になる。

しかし、従来の大学院との区別、大学学部との接続、教員組織やカリキュラムの在り方、評価体制など、多くの課題がある。

文部科学省専門教育課長の藤原章夫氏は、グローバル化し世界的規模で競争が行われる中で、従来のアカデミックなアプローチだけでは社会的・国際的に通用する人材の養成が難しくなってきたといった専門職大学院設立の目的を説明。分野共通の課題として、評価体制の確立、専任教員の確保・育成システム、デマンドサイドとの連携による教育内容などの充実・向上策をあげた。

青山学院大学学事顧問の伊藤文雄氏は、専門職大学院の前身である専門大学院のときから、マネジメント分野の専攻を設置し、その発展・充実に力を尽くしてきた。伊藤氏は、専門職大学院の教育は20人から30人程度のクラスで議論をしあい研磨していくべきものだとして、@教員は理論と実務を併せ持つ教員でなければならない、A体系的なカリキュラム、コースワークにより企業のトップに立つような人材を育成し、あらゆる課題に対応できる人材を育てていく、ことが重要と指摘。また、産学連携、国際連携を専門職大学院のキーワードとした。

東京大学名誉教授の天野郁夫氏は、いまや「高等後」教育の時代として、新しい高等教育需要が次々と生まれていると分析し、「専門学校も含めて知識基盤社会のあり方を考えなければならない」と指摘した。

また、職業大学院構想が昭和30年前後から折に触れて議論されながら、46年には大学院における研究者養成と職業人養成の分離が提言され、その後平成10年の大学審答申「21世紀の大学像」で、職業教育に特化した大学院が提言された経緯を概観。

日本の高等教育・高等後教育全体が抱える課題として、大学学部課程の専門教育と大学院の専門教育の関係をどうするか、一般大学院の修士課程とは何なのか、同一大学内で専門職大学院と学部に2つのMBA(経営学修士)スクールがある実態とは何か、専門職大学院の教員養成はどこで行うのか、大学と専門学校の境界のあいまい化、など制度が入り組み乱立している点を危惧した。