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「目で確かめ肌で感じる」個人課題研究30年の蓄積

茗渓学園中学校高等学校校長 柴田 淳氏
柴田 淳氏の写真

独立行政法人国立環境研究所、産業技術総合研究所、筑波大学など多数の研究、学習機関がある筑波学園都市にある茗溪学園中学校高等学校。同校は1979年、「世界的日本人の育成」を建学の理念に、「茗渓会」という東京高等師範学校、筑波大学の前身の東京教育大学などの同窓会により設立された。

日本の教育を引っ張ってきたという自負を持つ人たちによって研究者子弟の教育を目的に設立された同校は、初代岡本校長が行ったグランドデザインが今でも細部にわたり引き継がれている。建学の理念のもとにある5つの教育目標(1、考える学習、2、たくましい心身・豊かな情操、3、人間尊重の教育、4、時代を見定めた国際教育、5、的確な進路指導)は設立時からのもの。

「個人課題研究やフィールドワークを通して自分の『目で確かめる、肌で感じる』学びを、すべて開校当事に初代岡本校長が作り上げられた」

と語る柴田淳校長は大学院在学時に、岡本初代校長から「オリエンテーリングもやりたい」と言われ、オリエンテーリングの理論を学び直したという。

同校が掲げているスタディスキルは、生きた知識、経験、体力、創造性、国際性、ICTの6つの要素が螺旋状に絡み合って構築されており、柴田校長は「学習や行動、たくましさや人間関係など、様々な体験を通して生徒に総合的な環境を用意して、考えを深め、情操も育てる。スタディスキルとともにソーシャルスキル、コミュニケーションスキルを育てることに約30年間取り組んでいる」と語る。

同校の大きな特色のひとつである行事の種類や基本的なフレームは、30年間変わっていないという。

中学2年のキャンプは、実地調査を行いながら学校から20キロ離れたキャンプ地まで半日かけて歩いていく。中学3年の京都・広島国内研修は、「日本文化の源流を探る」をテーマに3か月前から事前調査を行う。世界的な日本人になるために、日本文化を知らなければならないからだ。

高校1年では3泊4日の臨海訓練で4キロの遠泳にトライする。水泳の不得意な生徒もいるが、「皆泳」と位置づけ、団結力も養うように全員が泳ぎきることを目標とする。

さて、高校2年生が行う「個人課題研究」。4月から12月まで毎週土曜日の3、4時間目に生徒それぞれの興味に応じて課題を決めて指導者の元で1年間にわたり調査研究を行う。締切日には、レポート本文と共にA4見開き2ページの要旨も提出し、全員の要旨集が本としてまとめられる。必要な資料を3000円まで学校の費用で買うことが認められ、研究内容をより深めるためにも外部の研究者にコンタクトし話を聞きにいくことを奨励している。よい研究を残している生徒はほとんど学校外の専門家に指導をあおいでいる、という。

この個人課題研究が「大切なのは『大学合格』ではなく、『合格してから何を学ぶのか』ということ」とする同校進路指導に生かされていることは間違いなく、大学卒業後も個人課題研究で選んだような研究を発展させ、研究を続けている生徒も多い。

同校には帰国子女が中学・高校あわせて約180名在籍するが、学習指導もきめ細かく、帰国生を対象にした日本語・国語・数学の補習、全校生徒を対象にした指名補習、高校3年次には「センター試験対応」もレベル別に行う。

英語は帰国クラス、普通クラスとも中学で週7時間、高校では海外留学を希望する生徒を対象にしたEECクラスも設置、米国の共通テストでもSAT対策も教えている。

守るべき不易と社会の変化に対する流行。

「私たちは最初から意思統一し議論しながら、岡本初代校長の指導の元に、これがいいね、という実感を伴いながらやってきた。時代の流れに合わせて今の生徒にとってよりよい方向への修正は加えているが、基本となるところは変わらずにこのまま実践し続けることだと思っている」。



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