インタビュー 小・中・高教育 大学・短大等教育 ニュース 企画のご案内 お問合せ

身近な国際的大学間競争

東京未来大学長 坂元 昂氏
鳥海十児氏の写真

  坂元昂・東京未来大学学長は、世界の大学のグローバル化、身近になる国際的大学間競争、アジアへの世界の大学の進出について「最近の世界や日本の大学の動き」と題し、Eラーニング利用を含めて語った。

  社会のグローバル化とともに、大学教育が急速にグローバル化している。EUではボローニャ・プロセス(注・・2010年までに欧州高等教育圏の形成を目指す)により、学生がEU内を移動し、大学間で単位を補完履修している。大学間の教育の流動化が起こっている。また、アジア、アフリカ、中東諸国などへ先進諸国の大学が教育進出し、Eラーニングで出前授業をしている。例えば、マレーシアの大学がアフリカの大学に学習コースを送るといったところまで来ている。マレーシアは英語だから有利といったことがあるが、韓国、中国も進出している。

  日本は何をしているのか。こういう流動的な大学教育が世界で展開されている事実が日本ではあまり知られていない。

  そこで、大学教育の流動化により、大学教育の質保証が大きな問題になっている。国際的な質保証の標準を決めようという動きもあり、国際会議がいろいろと開かれている。

  また、産学連携、社会と大学が連携して動かなければいけない時代になっている。教養を身に付けた上で実務能力を持った学生を送り出さなければならず、総合的な能力の育成が特にここ数年、産業界から求められている。
  Times High educ
ationの世界の大学ランキング2007の50位以内に日本は3大学が入る(注・・東大17位、京大25位、阪大46位)。しかし、ITインフラやネット普及率を比較した「eレディネス・ランキング2008」では、日本は18位で、アジアでは香港が2位、韓国が15位となり日本は低い。その一方、アジアの学生モビリティのデータ(Global 
Student Mobili ty 2025 Report)では、アジアの学生の教育ニーズが極端に高く、従って米国やEUなどがアジアに向かってくる。世界は急激に動いているのに、日本はのんきである。

  こうした状況を促進するのがeラーニングで、アジアのeラーニングの状況を見ると、中国には重点大学が68校あり、韓国は勤労者に向けたeラーニングが17大学ある。また、米国の4年制教師教育コースでは、すべてのコースでICTを活用している割合は88%にのぼり、インターネットを活用しているのも85%になっている。

  一方、人類が積み上げてきた知恵を有効に使い合おうと、MERLOTやARIADNE、EdNA、LORNET、Globeなど様々な教材のレポジトリー・データベースがあり、講義そのものをサーバーに蓄積してうまく使おうとしたものなど様々ある。大学の教育内容をお互いに紹介しあって有効に使おうとしている。

  そこで日本の大学は、18歳人口の減少、名目上の大学全入、海外有力大学のアジア参入、といった中で大変な時期を迎え、大学改革の動きが起こっている。
  米国のPartnershi p for21st Century Skillsでは、従来型の教科に加えて、21世紀に必要な技能項目の学際内容について、世界への気配り、財務・経済・産業と企業リテラシー、市民リテラシー、健康リテラシーをあげ、スキル項目としてコミュニケーションや情報リテラシー、社会と異文化スキルなどを学ぶ項目としている。

  こうした中で学生のための大学を構築するためには次のことが必要である。
  1、大学卒業時の学生の学科別人間像(能力構造の基準表)の確立、2、教科別の人間像に適した学習指導カリキュラムの編成、3、指導内容・指導技術の形成的評価改善、4、地域社会との連携の在り方の検討・実践、5、教職員の協働活動による各人の人間力及び学校力の向上、6、国内国際相互間における研究発表、講演、学術論文、一般専門論文などの発信による自己向上

  ACPA実務能力認定機構により実務能力基準表の作成や実務講座の提供も行われている。現在は、伝統的対面学習を補完するものとしてEラーニングが位置づけれているが、将来はEラーニングの1部として対面学習を位置づけるといった教育観の逆転が必要である。



*このページへのご意見、ご要望をお寄せください。 また、実践例やニュースなどをお持ちの方は、ご投稿ください。 検討の上、掲載させてもらいます。