教育旅行・体験学習特集

「瑞巌寺」の修復工事が終了<宮城県>

新たな学びの場にリニューアル

瑞巌寺
屋根の瓦は、右端から年代別に並べられた

7年もの歳月をかけて行ってきた「瑞巌寺」(宮城県松島町)の本堂修復工事が終わり、4月5日に一般公開を開始。

1609年、初代仙台藩主の伊達正宗によって創建された瑞巌寺は、堆積層の上に建っているため不同沈下を起こしていた。そこで、建物のゆがみを直すために平成21年9月から工事が行われた。また、同時に発掘調査も行われ、新たな事実も明らかになった。

工事期間中には東日本大震災にも見舞われた。他地域ほどの被害はなかったとは言え、参道の4分の3まで浸水したという。修復から7年、震災から5年、日本三景の一つ「松島」の学びの場が生まれ変わった。

 

 

心を揺さぶる体験を

『現状保存』で大修復
建築史上の大発見も

上段の間
藩主御成の「上段の間」(右)と明治天皇の行在所となった「上々段の間」(左)。説明者は千葉洋一総務課長
日本三景の松島
日本三景の松島は湾内に大小様々な島が浮かぶ。左奥は「五大堂」

本堂の平成大修理を終えた瑞巌寺は、1200年にも及ぶ長い歴史を持つ。伝承によると9世紀初頭(平安時代)の天台宗延福寺に始まった。鎌倉時代には臨済宗円福寺となり、1609年に伊達政宗によって再興された。明治期には明治天皇の東北行幸の際、行在所ともなった。

宮城県松島町・瑞巌寺

班・クラス別学習に適した地

大修理は、瑞巌寺が堆積層の上に立っていることから不同沈下を起こしているために不安定であったことで行われたもの。

今回新たに基礎工事を施し、さらには現状保存の原則に沿っていることから、オリジナルのポリカーボネートを壁内に仕込み、貴重な遺構を損なわずに耐震補強を行った。

平成の大修理は調査も兼ねており、それにより、「円福寺」は現在の瑞巌寺本堂の下にあったことがわかった。補強として壁に「筋違(かい)」があったことも明らかになったが、これは建築史上の大発見であった。

日本の建築で筋違が普及するのは明治以降で、室町時代の建築物からも一部に使用された例は見つかっているが、瑞巌寺のように部屋境の壁すべてに採用されている例は見つかっていない。

参道は震災被害から
 12月に再生を予定

工事期間中には、東日本大震災にも見舞われた。建物に大きな損害はなかったが、津波により参道の4分の3まで浸水したという。塩害により多くの杉を切り倒さなければならなかったため、参道の再生は今年12月まで継続して行われる予定だ。

平成30年までは、引き続き修理が進行していく。
瑞巌寺は、政宗が建築に託した強い意志が随所に施されており、見どころが多い。本堂は278坪で、聚楽第とよく似ているとされた仙台城の大広間と同じ構造を持つ。屋根瓦は約5万枚で、古い瓦も利用し、大修理で右から古い順に並べられた。

笹かま焼き体験
松島蒲鉾本舗で行える名物の笹かま焼体験は1回200円

笹かま焼体験や遊覧船
 歴史と食が織りなす街

日本三景の松島は、修学旅行の地として多くの学校が訪れている場所だ。美しい島々が浮かぶ景色、瑞巌寺などの歴史とリンクさせた学び、海産物をはじめとした食の恵みなど、コンパクトな地域に多くの学びが用意されている。

平安時代に建てられ、政宗が再建した「五大堂」、名産品「笹かまぼこ」を自分で焼く松島蒲鉾本舗での笹かま焼き体験、湾内の島々をめぐる観光遊覧船、若くして急逝した政宗の嫡孫・光宗を祀る円通院など、班別やクラス別の学習に適した施設が点在する。

 

【2016年4月25日号】

<<教育旅行・体験学習一覧へ戻る