訪日教育旅行受け入れ5割増へ<文科省・観光庁>

観光と教育を連携する

部局間交流でスムーズに

 外国の若者に日本の魅力を知ってもらうとともに、日本の児童生徒の国際理解を深める訪日教育旅行の円滑な受け入れを推進するため、政府は2020年までに訪日教育旅行の受け入れ人数を13年の約4万人から5割増にするとの新たな目標を定めた。この目標の達成に向けて文科省と観光庁は7月に「訪日教育旅行受入促進検討会」を立ち上げ、3回の議論を重ね、10月に報告書を公表した。

 H25年度は4万4千人
 台湾と韓国で半数に

訪日旅行受け入れの具体的方向性

 報告書によると訪日教育旅行受入促進の具体的方向性は、大きく6つ。▽地域の観光部局における調整・相談窓口の構築▽観光部局と教育部局の連携▽海外と地域をつなげる一元的窓口の設定▽財源の確保▽通訳の確保▽訪日教育旅行に対する理解の促進となった。

 訪日教育旅行の現状は、平成18、20年度に5万人を超えたが、東日本大震災の影響から23年度に一旦2万6000人までに減少、25年度には4万4000人となった。

 訪日教育旅行の受入促進は、異文化を直接体験し、生きた外国語に触れる機会が増え、日本の子供たちのグローバル人材の育成においても重要な要素と考えられる。

 訪問者を国別でみると台湾が最も多く、2位の韓国と合わせて全体の半数を占めている。米国、オーストラリアからも多い。様々な文化、言語の子供たちが訪れていることになる。

 日本側で受け入れ実績が多いのは東京都が1位で、長野県、大阪府、兵庫県と続く。

 増える一方で課題もある。大きく5つの課題が挙げられており、地域における課題としては「学校交流への支援が不十分」「ホームステイ・ホームビジットの希望に対応できていない」、学校における課題としては「海外との学校交流が身近なものとなっていない」「日本の学校と交流希望時期が合わない」、訪日教育旅行の共通課題として「アジアの他の国・地域と比べて旅行コストの差がある」が挙げられた。

 ミスマッチを防ぎ満足度を高める

 この課題に対し、積極的に訪日教育旅行を受け入れている長野県の事例が紹介された。同県は県の国際観光推進室が英語や中国語ができる職員を採用することなどを通じて、コーディネーターの役割を果たし教育委員会や学校との円滑な協力関係を構築している。同室には元校長を配置し、教委には訪日教育旅行の担当者を置くなど、人事交流においても強力な連携を図る。

 他にも、受入プログラムの充実やミスマッチ防止の交流申請書の提出依頼、予算や通訳の確保、ホームステイ対応といった施策において先駆けであり、課題解決の好事例だ。

 

【2015年10月19日号】

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