東北新幹線で東京から新青森まで約3時間。平成28年3月までに新青森から新函館北斗が開通予定となっている。青森県はこれまで世界自然遺産の白神山地や文化遺産登録が期待されている三内丸山などの縄文遺跡群に注目が集まっていたが、新幹線の延伸により津軽半島を通ることとなり、奥津軽も教育旅行の新たな場所として期待が持てる。地域色あふれる教育旅行を提案する奥津軽地域を紹介する。(ライター/須田佳美)
太宰の故郷で行う 文化体験プログラム
左が「歩けメロス&斜陽館」のクイズ冊子。右は斜陽館の体験プログラムに全問正解すると渡される特別割引券 |
太宰治の生家がある五所川原市金木町は今年4月、修学旅行生向けプラン「歩けメロス&斜陽館」を開発した。
小説「走れメロス」の内容に関するクイズ冊子を片手に、小説の場面が書かれた15の看板を歩いて探し、読んで答えを書き込み、斜陽館を目指すというもの。30分以内に8問のクイズに答えるとしおりがもらえる。
近くには津軽三味線会館があり、生演奏の鑑賞や津軽三味線の音出し体験も実施されていた。
立佞武多の製作体験で 本物を作る喜び味わう
五所川原では高さ20mを超える巨大な立佞武多(たちねぷた)が見学できる「立佞武多の館」がある。併設の製作所では製作現場見学や実際の祭りに出陣する立佞武多の「紙貼り」や「色付け」の作業体験が人気。横浜の中学校は3年連続で体験している。
実際に自分が手がけた箇所を示した証明書が発行され、立佞武多の一部に自分の手が加わっていることが、生徒らに感動を与えているようだ。
また「歩けメロス&斜陽館」や「立佞武多の館」などを組み込んだ「まるっと奥津軽体感メニュー」もあり、行程を組み換えた3コースで、各班80人、最大240人の受け入れが整っている。
次世代を見据えた 白神山地の環境教育
「立俵武多の館」に併設された製作所 では、実際に使われる立倭武多の製作 作業を一部体験できる |
農家民泊での小豆の収穫やインゲン豆を取り出す作業。作業内容は宿泊農家や季節によって異なる |
津軽半島を南下すると、世界自然遺産の白神山地がある。西目屋村から、天然のブナ林が広範囲に分布する中をトレッキングした。
ガイドを務めてくれた翼Gコ・遊の土岐司代表取締役は、「次世代を見据えた自然環境教育の考え方を啓発している。通常の教育旅行では2時間半のコースで、班別で行う白神山地ビジターセンター館内の勉強メニューと組み合わせると、最大300人まで受け入れが可能。子供達は自然の偉大さに触れ、命の尊さ、人に対する感謝・尊敬の気持ちも芽生えるようだ」と話す。多い年で10校ほどが体験している。
民泊の受け入れを拡大 協議会で窓口を一本化
津軽エリアでは農家民泊も充実。受け入れ農家は旅館業法の営業許可を取得している。大規模校の受け入れにも対応できるように、平成25年3月には「青森県グリーン・ツーリズム受入協議会」を設立。農家民泊の受け入れ窓口を一本化した。昨年の実績は26校で約4300人だ。
北海道新幹線の開業に伴い、奥津軽への新幹線駅の設置も決定しており、教育旅行に関しては首都圏からの大規模校が増えてきている現状を踏まえ、今後さらに強化を図っていく。
問合せ=017・722・5080(青森県観光連盟)
【2014年9月15日号】