課題解決型学習に適した新たな教育旅行のあり方ー教育旅行シンポジウム

「ふれあいと体験、教育旅行の質的転換を目指して」を主題に、(公財)日本修学旅行協会(以下、日修協)主催による「第10回教育旅行シンポジウム」が8月26日に都内で行われ、「ふれあいと体験」について学校と受け入れ地の双方による多角的な論議がなされた。

新たな概念を取り入れた 教育旅行の重要性

教育旅行シンポジウム
学校と受け入れ側が双方の思いを議論

今回、日修協が行った教育旅行シンポジウムは修学旅行シンポジウムから改題して10回目。通算30回目となる記念すべき年だ。

主催者あいさつで阿部充夫名誉会長は、「生徒の自主性、グループ行動、体験活動を重視する、といった新たな概念を取り入れた教育旅行は、学校教育の中で重要なものである」とこの10年を振り返る。また、これまで教育旅行と比較的縁の薄かった地域での修学旅行の実績が伸びていることから、河上一雄理事長は、「特別活動の基礎基本である課題解決学習の場としての役割があると予想している」と述べた。

見学は「本物志向」体験も増加傾向の高校

シンポジウムは、前・東京都立石神井高等学校長の竹内秀一氏がコーディネーターを務めた。

学校側の立場から意見を述べた都立武蔵村山高等学校長・川瀬徹氏によると、高校では「直接出かけて見学する」「本物を見る」という見学学習に重点が置かれているが、近年は体験型の学習も徐々に増加の傾向が見られ、キャリア教育、各地の暮らし体験、国際交流等が求められているという。

一方、中学校について東京都稲城市立稲城第二中学校長・亀澤信一氏によると、都立中の9割以上が、京都・奈良を修学旅行の場所として選択。その92%が伝統工芸といった体験学習を取り入れているという。

受け入れ地側からは宮城県、石川県、島根県の関係者が登壇。

課題解決型の学習を行うことのできる教育旅行として「しまね田舎ツーリズム」を推進する島根県は、自然、歴史、文化やそこに暮らす住民とのふれあいを重視。(公社)島根県観光連盟教育旅行誘致コーディネーター・早川正樹氏は「"sightseeing"ではない活動を提供している」と話す。

学校と受け入れ側 緊密な連携が重要

シンポジウムでは、学校側は受け入れ側の情報がまだまだ十分に届いていない課題があることを指摘。

受け入れ側はセミナーや視察会を実施しているが、なかなか参加者が集まらない状況があり、そのような中でもワンストップなサービスを心掛けたり、学校種に応じた内容の提案などの工夫を凝らしているという。

コーディネーターの竹内氏は「教員は数年ごとに入れ替えがある中で、行事を見直すことは大変。教員がよく知らない地域であれば相当調べる必要がある。また、適地を把握しきれていないこともあるので日頃からの緊密な連携が重要」とまとめた。

【2014年9月15日号】

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