知識を他者と深める機会 ”体験”から学ぶ学習旅行にー全国修学旅行研究大会

修旅は今 ”学び” ”体験”

新学習指導要領により、知識や技能の習得とともに思考力・判断力・表現力などの育成が重視される中、修学旅行の班別自主学習などはまさにそれらの力を育む絶好の場だ。学びの旅が「教育旅行」と呼ばれ大きな転換期を迎える中、修学旅行に関連した2団体の全国大会から、今後目指すべき道をさぐった。

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被災地復興と修学旅行 支援から得た学び

全国修学旅行研究大会
「学び」を原点に、修旅の意義を再考

"学び"を原点にした修学旅行のありかたを追求する「第31回全国修学旅行研究大会」が(公財)全国修学旅行研究協会(以下、全修協)主催により、7月29日に都内で開催された。

全修協は「感性をはぐくむ修学旅行」をテーマに長きにわたって活動しており、今大会では「学びの集大成を図る修学旅行‐被災地復興への継続的支援‐」を研究主題とした。

開会にあたり全修協の岩P正司理事長は「修学旅行は学習旅行」でなければならないと提起。見学中心から体験により学ぶことを重視した「感性をはぐくむ修学旅行」を強調した。続いて中西朗前理事長からは全修協提案として「知識を受け止めるだけでなく、他者との関係の中で深めていく」ことが重要だという視点が示された。

実践発表は、修学旅行にあえて東日本大震災の被災地を巡った九州の高校と被災地の生徒を2年間にわたり招待した愛媛県が紹介。

九州から被災地へ修旅 劇的に変化した高校生

東日本大震災から間もない平成23年6月に予定していた長野県スキー修学旅行から、翌年1月の被災地訪問(宮城県)へと、学校内外からの多くの反発や障害を越えて目的変更して実施したのは、福岡県立修館(しゅうゆうかん)高等学校校長(当時)の中嶋利昭氏。

スキー修旅との希望性にした結果、被災地訪問を希望した生徒は3分の1であった。しかし同校の修旅での被災地訪問は続いている。校訓の「世のため人のためと成れ」を実践しようと、生徒や反対者に、行くだけで被災地支援になると語り続けたという。

翌年異動した筑紫女学園中学・高校でも、修学旅行のコース選択の一つに東北訪問を加え実施にこぎつけた。

生々しい被災地の現場を見て被災者と交流し"生徒は劇的に変わる"。気乗りしないまま参加した生徒が、その後に書いた作文に力がこもるなど、苦労して実施した目的は達せられた」と話した。

基金を創設した愛媛県 3年で27校を支援

愛媛県は、中村時広知事の発案で東日本大震災の翌年に「えひめ愛顔(えがお)の助け合い基金」を創設。県民・企業・団体から寄せられた総額2億円余りを原資に、同県で修学旅行を実施する(宿泊を伴う)被災3県の高校に対し費用の2分の1を助成した。

23年度は3県10校、24年度2県8校、25年度3県9校の支援実績をもち終了した。

対象となった高校は愛媛県内の高校との学校交流や農業体験、しまなみ海道サイクリングや潮流体験などを楽しんだ。

同県経済労働部しまのわ2014推進監・佐伯登志男氏は「県民の浄財による基金だから比較的自由に裁量出来た。学校交流で県内の高校生も多くを学ぶ機会になった」と効果を振り返った。

【2014年9月15日号】

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