開館30周年記念特別展「ドーム兄弟展」―長野県諏訪市 北澤美術館

明朗快活で“わかりやすい”植物をみるような作品

北澤美術館
諏訪湖に面しJRからも近い北澤美術館

 諏訪湖畔(長野県諏訪市)に位置する北澤美術館が昨年30周年を迎え、4月3日より開館30周年記念特別展「アール・ヌーヴォーのガラス工芸 ドーム兄弟」が行われている。昨今、様々な美術館・博物館で教育利用の啓発が行われ子供達にとって学習しやすい環境が整いつつある中、同館では美術の教科書にも掲載されなじみ深い、エミール・ガレの「ひとよ茸ランプ」が展示室に入ってすぐに見られる。この「ひとよ茸ランプ」を過ぎると、特別展ドーム兄弟の作品約120点が公開されている。

ガラス工芸と日本画 計1200点の収蔵

  同館は昭和58年(1983年)に、初代理事長・北澤利男氏が地元長野に開館した美術館。エミール・ガレに代表されるアール・ヌーヴォー期とルネ・ラリックが活躍したアール・デコ期のガラス工芸作品約1000点と、東山魁夷などの現代日本画約200点が収蔵されている。

ナンシー派独特の自然観察力を作品に

睡蓮文鶴頸大花瓶
睡蓮文鶴頸大花瓶
1909年頃 h.56.0cm
ドーム家旧蔵

  ドーム兄弟は、19世紀末から20世紀初頭にエミール・ガレと同じフランス北東部のナンシーで活躍。長男オーギュストが経営者として、三男アントナンが芸術監督として父から受け継いだガラス工場を、ヨーロッパ有数のブランドに盛り立てた。
作品の特長は誰にでも親しみやすい明朗快活な美しさ。ナンシー派独特の自然の観察に基づいた花の装飾が、その親しみやすさを演出している。

日本画の影響も受けた ドームのガラス工芸

  浮世絵など日本画の影響も多大に受け、日本人にとってより親しみやすく、《睡蓮文鶴頸大花瓶》、《蜘蛛に刺草》などドーム黄金期の大作は、子供から大人まで楽しめる。

  オープニングセレモニーで同館の清水雄輔理事長は、「ドームの作品は、非常に明るく誰でもが理解できる作品。本館収集のガラス作品1000点のうち250強はドーム兄弟のもので、それも世界的レベルの作品。今回の展示を機にドーム兄弟の作品を日本に大いにひろげていきたい」とあいさつ。

理科の観点で見学も

  同館の作品はナンシー派作品が中心で、忠実に草花をガラスに再現した作品が数多く見られる。このことから、小中学生の見学時には作品中の植物や昆虫を探すなど理科の要素も交えながら見学することもできるため、長野や山梨への自然教室や林間学校等とリンクした学習もできる。

【北澤美術館】
開館時間:午前9時〜午後6時(10月〜3月は午後5時まで/会期中無休)、入館料:大人1000円、中学生500円、小学生以下無料(団体割有り)※ドーム兄弟展は、前期10月31日まで、後期11月1日から来年3月29日まで。

【2014年4月21日号】

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