冊子「福島の今を知る」現地の情報収集に一役―福島県が教育旅行誘致セミナー開催

 東日本大震災以降、東北への教育旅行は減少傾向にある。特に福島県は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響によるところが少なくない。そこで、(公財)福島県観光物産交流協会は、「平成25年度福島県教育旅行誘致セミナー」を、1月17日に都内で開催。

「命のつぎに大切なもの」

「語り部」として震災についての
紙芝居を読む村上氏

  第1部では、長崎大学大学院放射線医療学専攻教授・高村昇氏(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)による基調講演「放射線被ばくと健康影響」及び教育旅行を行っている学校の事例発表が行われた。

  福島県川内村には、長崎大学と連携した復興推進拠点が置かれ、長崎大の保健師が常駐し、健康教育・健康相談・戸別訪問を続けている。同村は帰村宣言を行い、子どものいる家庭や幼少中の除染を優先的に実施したが、若い世代の帰村は進んでいない。

  高村教授が教育旅行で考えてほしいことは、「科学(サイエンス)は社会とつながっている。サイエンスとエモーションを考えることが復興のためにできること」と話す。

  第2部では、県から現状の説明と震災語り部の講話が行われた。過去15年の教育旅行入込推移(宿泊)をみると、ピーク時の平成19年度が8193校であったのに対し、現在は4042校と半減。

  県では積極的な情報の提供に努め、県が作成した冊子「福島の今を知る」は、放射線の被ばくや影響、除染活動、食品検査など詳細な情報が得られる。第1部の事例発表者からも、この冊子が校内外の説明に役立ったという声があがった。

  また、新地町で旅館を経営していた村上美保子氏からは、被災体験を経て生まれた「命のつぎに大切なもの」という紙芝居が読まれた。地震が起きたら津波が起きるということを覚えていてほしいと、すでに約100校の学校で、この紙芝居を読んでいる。

【2014年2月17日号】

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