ボルネオに“森のひと”を求めて マレーシア ひと味違う教育旅行に

マレーシアひと味違う教育旅行

川を遡り野鳥や動物を観察

 東南アジアで日本からの修学旅行生の多い国として、マレーシアがシンガポールと並んで注目されている。学習素材が豊富、多民族社会のため国際的な視野で英語による交流ができ、親日的で良好な治安状態などがその理由として挙げられる。修学旅行生が訪れるのは主に首都クアラルンプールとその周辺に集中しているが、今回は地球環境の実情を知るうえで注目されている世界で3番目に大きな島ボルネオ島サバ州の「ネイチャー・エコロジートリップ」を紹介する。(旅行ライター/中森康友)

  ボルネオ島の北東部、サンダカン空港のロビーで豪州から訪れた大勢の修学旅行生に出会った。州政府観光局によると「密林に棲息する絶滅危惧種の野鳥や動植物を観察するのが目的ですが、とくにマレー語で"森のひと"と呼ばれているオランウータンは人気です」という。早速、郊外の保護地「セピロク・オランウータン・リハビリ・センター」へ向かう。

  東京ドーム10個分もの広大な密林内の飼育用地(4・2ヘクタール)に約11頭が暮らす。午前10時の餌付け時刻に集まってくるオランウータンの姿を、約30メートル離れた高架式の木橋の上で、観光客が息を潜めて待つ。

  やがて熱帯樹に張られたロープを渡り小柄なオランウータンの子どもたちが現われ、飼育員から籠の中の果物を手渡され食べ始める。おこぼれを狙おうとカニクイザルや小動物が集まり餌台はにぎやかになる。

 

環境教育に関連付け

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えさ場に集まるオランウータン

  ボルネオでは、1960年代から建材やパルプ材の需要で密林の伐採が進み、その結果、動物たちの"けもの道"が寸断され、オランウータンの孤児が急増していったという。保護された幼子を人間の手で育てながら野生に戻し森へ帰す、というボランティア活動が日本や各国の支援で続けられている。

  翌朝、ホテル近くの港から20人乗りのモーターボートで密林を蛇行する全長560キロメートルのキナバタンガン川を約2時間半遡上し、川岸の珍しい動植物に目を凝らす。「あそこにいます。オスは人間嫌いでなかなか顔を見せてくれません」とガイドの指さすマングローブの樹の枝に座って悠然と若葉を食べている幅広の栗毛色の背中の主が、絶滅の危機にある霊長類テングザルのオスの姿だ。

  15分待ってやおら顔を向けた特異な面相は、天狗のように高く長い鼻があごまで垂れ下がり、褐色に白が混じり合った顔に警戒のまなざし。ほかに大きな角と口ばしを持つサイチョウ、多様種のサギなど沿岸の野生動物保護区に生きるのは鳥類だけで600種にもなり、近年観光客の間で関心が集まっている。

感じて考える旅に

  時には水辺に潜むワニや巨大トカゲ、空に舞う大ワシ、まれに密林を移動する小柄なボルネオ・ピグニ‐象に遭遇するかもしれない。サバ州はウミガメの産卵でも知られ、直径1メートルの巨大な花「ラフレシア」など、世界でもまれな動植物に溢れており「感じる旅、考える旅」の修学旅行には格好な地域として注目することができる。

問合せ=03・3501・8691(マレーシア政府観光局東京支局)

【2013年6月17日号】

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