今も残るのこぎり屋根の |
県の輪郭が鶴の舞う姿に似ている群馬県。今回はその頭部にあたる東側を訪れた。稲作の裏作として麦を栽培する二毛作地帯が広がり、3月には緑色に伸びた麦が春を呼んでいた。群馬県は古くからうどんの生産で知られ、日清製粉創業の地・館林では「製粉ミュージアム」が昨秋完成。また、かつて絹織物の生産が盛んであった桐生では、今もなお残る「のこぎり屋根」の工場地帯を歩き日本の伝統を肌で感じた。歴史が残り、豊かな自然を守る、群馬県東部の見どころを紹介する。(ライター/國吉圭介)
織物の街・桐生 工場を再活用
まずは、江戸時代に整備された織物の街「桐生新町」へ。桐生新町は、徳川家康の命を受けて織物の町として生まれた。江戸初期から現在に至るまで、地区の中心を通る道幅や、通りの両側に広がる敷地形態などほとんど変えずに当時の様子を伝えている。
江戸中期には新技法により絹織物の一大産地に成長し、明治から昭和初期に最盛期を迎えた。自然採光を考えて建築された「のこぎり屋根」の織物工場も多く残り、昨年「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。
一部は織物工場として現在も使われているほか、ワインセラーやアトリエなどに生まれ変わり、親しまれている。
生命の尊さを育む
みどり市・富弘美術館
桐生に隣接するみどり市は、笠懸町、大間々町、東村が合併して誕生。旧・東村、草木湖のほとりに佇む「富弘美術館」は、多くの学校に利用されている。
同館は、不慮の事故で頸髄を損傷し、手足の自由を失った星野富弘さんが、口に筆を加えて作った詩画作品を展示する。生命の尊さ、優しさが反映された色鮮やかな草花と、心に響く言葉が印象的だ。昨年12月には、新詩画集「命より大切なもの」が発表された。
そのみどり市を本拠地とし、桐生駅から足尾の間藤駅をつなぐ「わたらせ渓谷鉄道」は、観光列車「トロッコわたらせ渓谷号」「トロッコわっしー号」が土日を中心に活躍する。
元々は、足尾銅山の銅や資材の運搬用として1912年(大正元年)に開通し、国鉄、JR足尾線として使われたが、銅山の閉山に伴い衰退していった。現在は、第3セクターのわたらせ渓谷鉄道(株)が運営する。
日本の歴史を変えた
岩宿遺跡で体験学習
「トロッコわたらせ渓谷号」が走る |
みどり市には、60数年前に日本の歴史と教科書を変えた場所「岩宿遺跡」がある。
それまで日本では、縄文時代(石器時代)以前は人が住めないとされていたが、1949年にこの遺跡で黒曜石の石槍が発見され、約3万年前と約2万年前の2つの文化があったことが判明。その後、旧石器時代の遺跡が各地で発見され、人類史は定着した。
そのきっかけを作った黒曜石の石槍などを「岩宿博物館」で展示。館外では地元住民のボランティア活動として古代料理体験も行われている(要問合せ)。
ラムサール条約に登録
渡良瀬遊水地の自然
また、群馬、栃木、茨城、埼玉の4県にまたがる「渡良瀬遊水地」(群馬県は板倉町)は、東京ドームの700倍の面積があり、大雨などの際には調節池としての役割を果たす。多くの野鳥や植物を観察することができ、昨年ラムサール条約に登録された。
米蔵を改造した「わたらせ自然館」には、遊水池の立体模型や植物のジオラマ展示などがある。多目的室、各種体験教室を利用した小・中・高校生の遠足、校外授業、総合的な学習の時間など、教育旅行利用も可能だ。
問合せ=027・243・7274(群馬県観光物産国際協会)
http://gtia.jp/
【2013年4月22日号】