創立60周年を迎えた(財)日本修学旅行協会(以下、日修協)は、8月24日、「第8回教育旅行シンポジウム」と、創立60周年の記念式典を都内で行った。
6人のパネリストから提言 |
記念式典で日修協の阿部充夫会長は、「学校行事として修学旅行は着実に発展しています。アメリカの同時多発テロに始まり、旅行時の危機管理体制の整備と充実が求められるなか、自然災害などへの対応も必要になっています。本日のシンポジウムもそれに役立たせていただきたいと思っております」とあいさつ。
日修協は、訪日の教育旅行振興へも力を注ぎ、日中韓の教育旅行シンポジウムへも協力。先ごろ第7回のシンポジウムが終わったばかりだ。
教育旅行シンポジウムは、「修学旅行を中心とした教育旅行の回顧と展望」を主題に、第1部を危機管理、第2部を訪日教育旅行とし、日修協理事長の河上一雄氏をコーディネーターに、6人のパネリストから意見が述べられた。
被災地をみることが生き延びるヒントに
パネリストの一人、教育旅行誘致の観光カリスマとして、福島県の教育旅行誘致推進に尽力し続けた小椋唯一氏は、福島県は東日本大震災で起こった福島第一原発の事故以降、キャンセルが相次いだが、それは今後自然災害等により、どの地域でも起こり得る可能性があることと指摘。「福島県はゼロから上るだけ。新しい提案を積み上げようと考えています。生きる、生き延びるヒントが福島にはあります。被災地を見ていただくことが、想定外と言わないヒントになるはずです」
また、今年度から東京都立三鷹中等教育学校・三鷹高等学校校長に着任した仙田直人氏は、中等教育学校の2年生が北関東への自然教室に行く際のエピソードを紹介。放射線の線量についての疑問が保護者と生徒からあがったが、空気中と土壌では線量が違うので、それを考えてみたらどうかと提案した。「学校の考えがぶれないことが大事です」と述べた。
震災マニュアルの都内版をJTBが作成
また、受け入れ側として登壇した(株)ジェイティービー グループ本社 旅行事業本部 教育旅行担当部長の山崎誠氏は、旅行会社が行うべきこととして、「あらゆるリスクを洗い出す」「実地踏査」「リスク対策の策定」「先生・生徒への注意喚起」の4つを挙げ、その上で学校へは「十分な準備」「自分の身は自分で守ること」「保険の加入」をお願いしているという。
また、同社では都内用の修学旅行自主研修用の「大震災対応マニュアル」を作成。次は京都用の作成に着手するという。「教育旅行は大事な学びの場。子どもたちの心に何が残せるか、先生方と一緒に作り上げたいと思います」と語った。
どこでいつ起きるかわからない、自然災害や事故。今、官民あげて、リスク回避に向けた対応が必要となっている。
【2012年9月17日号】