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歌を通じて学校交流
被災地から関東へ修学旅行に

感謝の気持ちを伝えたい【宮古市立河南中】
中学生として精一杯の日々を生きる【横浜市立六角橋中】

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両校の生徒が一緒に「大地讃頌」を合唱

 9月28日、岩手県から宮古市立河南中学校(佐々木壽校長)の3年生が関東地方へ修学旅行に訪れた。東日本大震災以降延期となっていた修学旅行だったが、ようやく実施にこぎつけた。

  最初の目的地は、横浜市立六角橋中学校(日下部幸雄校長)。共に合唱が盛んな学校として、歌を通じた交流会が企画された。一行はまず被災からの半年間を、撮りためた写真や映像で紹介。3月11日午後2時46分の河南中学校は、1、2年生が数日後に控えた卒業式の練習を終えた直後。大津波警報が発令され、多くの地域住民が避難してきた。幸い帰宅した3年生を含め、生徒全員が無事だった。

  近くの村に住む漁師の祖父と、1週間連絡がとれなかった女子生徒が「がんばろう日本と言っていますが、簡単には思えません。むしろおじいちゃんは疲れきっています」と話す姿に、六角橋中の生徒は息をのむ。

  河南中の生徒は自分たちができることは何かを考え、「本当に必要なものを地域のみんなに届けたい」と物資を配ったり、ビラを配布して学校へ来ることを呼びかけた。夏休みの宿題では、大震災の経験をレポートにまとめて発表した。

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震災の記憶を発表する河南中の生徒

  そこから得たことは「なんでもない日常がどれくらいかけがえのないものか」「自分たちができることを考える」「感謝を伝える活動をしていきたい」という気持ち。それを聞いた六角橋中の生徒からは「中学生として精一杯生きたい」「毎日のことを一生懸命取り組みたい」などの声があがった。

  その後互いに3曲ずつ披露し、最後に「大地讃頌」を両校全員で歌い、心を通い合わせた生徒らは、河南中の生徒を拍手と握手で見送った。

  河南中の佐々木校長は「生徒が考えた修学旅行のテーマは『輝跡〜自分の"みち"を探しに』です。本来は3泊4日の修学旅行が2泊3日になりましたが、将来を含めてこの修学旅行で何かを得てくれたらうれしいです」と語った。

  六角橋中の生徒会長・今村駿平さんは「体験したことを率直に教えてくれて、勉強になりました。逆に自分たちが元気をもらって何かしたいという気持ちをもちました」と語った。今後も生徒会を通じて、交流を続けていくことが検討されている。

【2011年10月17日号】