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B&G財団が水の安全教育と
事故防止体制の先進国・イギリスを視察

水辺では「楽しむ事と安全」のバランスが大切

 B&G財団では、「水の安全対策」の調査・視察を行うため、水の安全教育と事故防止体制の先進国・イギリスを訪問した。各種団体と会合を行い、今後の日本における水の安全活動ならびに「水の事故ゼロ運動」を行っているウォーターセーフティーニッポンの活動に生かすのが目的である。そこで視察に同行し、各種団体の取り組みを子どもたちへの教育を中心に取材した。(レポート/須田佳美)

水の安全教育 8歳から10歳までに必須

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RLSSとRoSPAの合同で行われた会合

■ロイヤルライフセービング協会(RLSS) ライフセービングの技術発展と教育を目的に1891年に創立され、主にボランティアが支えている。子どもたちや教員にもライフセービンクの技術教育を行っているが、2008年からは教材の見直しを図り、子ども用資料(有料)をコンパクトにして訓練する側の教員用資料を充実させた。

■王立災害防止協会(RoSPA) 水の安全に限らない幅広い分野での救命と事故防止を使命とする組織。水上安全フォーラム(NWSF)の事務局的役割も担い、「学校における安全とリスク」部門を持つ。学校でRoSPA発行の水の安全に関する冊子を教員に配布するなどの活動も行う。担当者は「イギリスでは8〜10歳までに50b泳ぐ事を含め水の安全教育を受けるのは必須。どんな所に危険が潜んでいるか子どもたちに教育することが重要であり、水辺では楽しむ事と安全のバランスが大事です」と語る。

■王立救命艇協会(RNLI) 海での救難活動を起こっている組織で、救助活動はボランティアが支えている。  水の安全教育にも力を入れ、7歳以下の子どもには「旗のある所で泳がないように」といった簡単な教え方で、年齢が上がるごとに項目を増やし、18歳までにはリスクが分かり、予防もできる様になる。ヨーロッパの救急番号を掲載した「ALL ABOARD」というツールを先生に配布し、子どもたちの教育に役立てている。またHPでは学年ごとの教材を教師が自由にダウンロードでき、子どもはゲームを楽しみながら自然に水の安全が学べる。

■王立ヨット協会(RYA) 世界でもっとも権威があるヨット協会。海の環境について子どもたちに紹介する本「GO GREEN!」は深い知識と同時に環境に関する意識を植え付けられるよう分かりやすく絵を使ったテキストだ。オンボードという子どもたちを実際にボートに乗せるプログラムには、5年間で10万人が参加した。
子ども向けのグリーンプログラムでは、安全に関するチェックリスト等が入ったキットも用意されている。ここでも担当者は「自分自身が学習してトラブルに巻き込まれないことが大切」と教育の重要性を語った。

■海事沿岸警備庁(MCA) 海難防止や救助に対応する政府機関。ヨット・カヌーの団体と協力し、学校で安全に対する意識向上の運動も展開。また初の試として水の安全に関する動画を子どもたちから募集するコンペティションである。年末には表彰式も予定されている。
現在イギリスでは、ライフジャケット着用キャンペーンを実施中。着用しないと低体温症になることを説明し、認知度を高める努力をしている。

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ライフジャケット浮遊体験で安全性を体感
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水辺での安全について紙芝居で学ぶ子どもたち

日本における水の安全教育 ウォーターセーフティーニッポン 自然体験と安全教育を柱に

 「水の事故ゼロ運動」を推進するウォーターセーフティーニッポンの幹事団体・B&G財団は、ライフジャケット浮遊体験や紙芝居による安全クイズ等「水の安全教室プログラム」を展開している。学校での体験プログラムは水に親しむための「自然体験」と、水の事故を防ぐ知識と技術を学ぶ「安全教育」の2つが柱。自然体験は、道徳観や正義感を育む事にもつながるという。既に月島第三小学校等、多くの学校でプログラムが実施されている。

  視察を終えて同財団の大島康雄常務理事(ウォーターセーフティーニッポン事務局長)は、「視察先で『危険だからと水辺から遠ざけるのではなく、安全に楽しむことが大事』と聞き、私たちが目指す水の安全対策活動の方向性が裏付けられました」と、ウォーターセーフティーニッポン普及促進部の遠藤卓男部長は「自然体験を通し、自分の命を守るための知識や技術を身に付ける安全教育が重要であると再確認できました」と語る。

  水の事故から子どもたちを守るためには、水の安全教育を実践していく事が大事ではないだろうか。

 



【2011年4月18日号】