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長崎・島原半島

自然が学べる世界ジオパーク

 今年10月現在、世界25か国77地域で認定されている「世界ジオパーク」は、地球の歴史が学べる野外博物館として世界に認められているもの。昨年、日本で初めて認定を受けた3エリアの1つが、長崎県の南、雲仙市・島原市・南島原市の3市で構成される「島原半島」だ。島の中央部には雲仙普賢岳(1359メートル)がそびえ立つが、平成2年から約5年間続いた噴火は、多くの人の記憶に残っているだろう。あれから20年。当時の記憶は記録として残され、人々は災害からの復興と火山の恵みを生活に取り入れている。そんな人々の生活や自然について修学旅行で学ぶ学校も多い。島原半島の今を中心に長崎県を取材した。

噴火による爪痕を保存

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災害の大きさを伝える校舎跡と
大野木場砂防みらい館
(上の写真左奥)

 雲仙・普賢岳は、平成2年11月17日に198年ぶりに噴火。わが国の災害史上例のない長期災害となり、死者・行方不明者は44人、2511棟の損壊、2000億以上の被害総額となり、直接の被害地である島原市や深江町などにとどまらず、島原半島全体が人口の減少や経済活動の停滞などの影響を受けた。

  特に、平成3年9月15日に起きた大規模火砕流では、山の東側にある深江町の大野木場地区を熱風が襲った。大野木場小学校が全焼、他多数の家屋の消失により、43人の命が奪われた。
現在は、「旧大野木場小学校被災校舎」として残され、災害の爪跡を間近に見ることができる。丸裸に焼け焦げた校庭の樹木も、現在は緑が蘇っている。

  同校舎隣には、噴火災害の脅威や砂防事業の必要性を火山監視や本物の砂防を見て、体験学習できるミュージアム「大野木場砂防みらい館」が建っている。

被害家屋から分かる 土石流のすさまじさ

  また、普賢岳では火山灰などが積もった山腹に長雨が続くと、何度も土石流が発生した。それは、火砕流が届かなかった下流地域にまでおよび、民家や橋、道路、鉄道などを押し流し、耕作地を土砂で埋めつくした。
その土石流で甚大な被害を受けたのが、平成4年8月8日から14日。現存されている「土石流被災家屋保存公園」では、被害を受けた家屋を保存展示している。

  大型テント内に3棟、屋外に8棟の合計11棟の家屋を見ることができる。土石流災害の凄まじさを身近に感じ、防災事業の重要性を学ぶことができる。隣接する道の駅「みずなし本陣ふかえ」は、島の文化・経済的復興の発信基地として活躍している。

今は静かに聳える 雲仙の美しい山々

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土石流被害の家屋を保存
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普賢岳(写真手前)と平成新山(写真奥)

  また、仁田峠駅からは、「雲仙ロープウェイ」で展望台に行くことができ、360度の大パノラマは、四季折々の雲仙を見せてくれる。

  島原半島は、先に述べたように「ジオパーク」と呼ばれており、地球環境を含む地球科学全般に関する教育・普及活動を行うことにより、地質遺産を観光する「ジオツーリズム」を発展させ、それによって地域振興を図っている。

 

 

【2010年12月18日号】