九州観光推進機構は九州7県と合同で、首都圏の中学校及び高等学校の教職員へ向け、8月24日、都内で「平成21年度九州7県合同¥C学旅行説明会・相談会」を開催し、九州全体のモデルコースや各県の体験メニューなどの素材説明、さらには中学校・高等学校それぞれの修学旅行事例発表が行われた。また、同機構では、大阪・名古屋でも8月中に同様の説明会・相談会を実施。なお、九州観光推進機構は、九州7県と経済界からなる組織で、官民合同で九州への観光誘致を目的に平成17年4月に発足した。
各地域のおススメ体験学習の情報 |
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開会に先立ち、同機構の大江英夫・事業本部長は「九州には、さまざまな観光資源があると同時に、環境教育、平和学習、農林水産資源を使った体験学習ができる素材があります。九州の観光のキャッチフレーズは感動がある。物語がある。九州≠ナす。生徒さんたちへの感動のお手伝いをしたいと思います」とあいさつした。
続いて、(財)日本修学旅行協会の河上一雄理事長、(財)全国修学旅行研究協会の中西朗理事長がそれぞれ来賓あいさつで登壇。
河上理事長は「修学旅行をめぐる最大の問題は5月以降の新型インフルエンザの影響についてだと思います。危機管理の問題と地域の経済活性化を通して、修学旅行を我々が守り育てていかなければなりません」と修学旅行の危機管理と今後の修学旅行の発展について述べた。
また、中西理事長は「教育改革の流れのなかで修学旅行の存在理由が問われております。その中心テーマが人間力です。九州には九州でなければ学べない素材が目白押しに並んでおります。それが九州の誇りであると共に、豊かな人間性を育んでくれるものだと思っております」と期待した。
続いて、同機構国内誘致推進部の北島隆文部長が「修学旅行モデルコース・素材集」を紹介した。
トピックスとしてあげたのが、平成23年春に全線開業する「九州新幹線(鹿児島ルート)」。九州内の全線開業と同時に、新大阪から鹿児島中央間を直通の新幹線「さくら」が運転を開始し、最速で新大阪から熊本までが3時間20分前後、鹿児島中央までが4時間前後と、大幅な時間短縮となるため、特に近畿エリアからの新たなコース設定が可能になる。
今回の説明会では、2泊3日9コース、3泊4日6コース、4泊5日2コースの全17のモデルコースを設定し紹介。
例えば長崎・佐賀・福岡エリアを巡る2泊3日コースでは、1日目は各地域から長崎へ入り、長崎市内での班別学習後、夜には宿舎で被爆者講話を聞く。2日目には今年8月に世界ジオパークに認定された島原半島へ移動し、火山・環境などの体験学習を行い、その後有田焼窯元見学(絵付け体験)して嬉野温泉や武雄温泉へ宿泊。3日目は、吉野ヶ里歴史公園から太宰府・九州国立博物館などを経由し、福岡から各地へ帰るという設定。
また「九州修学旅行素材集」も配布され、素材や各体験施設の所在地や問合せ先、受け入れ人数や見学について、料金設定などが一目瞭然だ。
その後、東京都板橋区立板橋第二中学校の吉田傳男教諭と、東京都立晴海総合高等学校の齊藤光一校長が修学旅行の事例を発表(詳細は下記)。
修学旅行事例発表の後は、九州7県の担当者から最新の体験メニュー・修学旅行素材等の説明がなされた。
福岡県には、10月3日に「筑前町立大刀洗平和記念館」が開館し、同県にもやっと平和を語る施設が登場する。お隣の佐賀県には、九州新幹線の全線開通と同時に「新鳥栖駅」が誕生し、北部九州最大規模の大型観光バス用駐車場が完備されるという。
9つの学習テーマをもとにした、多数の体験プログラムがある長崎県では、地元高校生との平和学習交流も可能。熊本県は、熊本城、阿蘇五岳、水俣病、農家・漁師民泊など、生きる力を養う体験が目白押し。
大分県は、近年福祉や一般企業、大学等でキャリア教育を学ぶ体験学習が盛ん。快晴率が全国1位の宮崎県は、マリンスポーツと食育を学ぶ絶好の場所。民泊実績は少ないが、オーダーメイドの農業体験が魅力。
鹿児島県は、鹿児島市から程近い場所で、農業や漁業を体験できるのが利点。知覧や鹿屋では、他と違った切り口の平和教育で「心の教育」が学べる。
説明会終了後は、九州7県のブースで相談会が行われ、教職員や旅行会社の担当者が熱心に意見を交換していた。
板橋区立板橋第二中学校の吉田傳男教諭は、平成20年5月8日から10日までの3日間、佐賀・福岡・長崎で実施した修学旅行について発表。
同校では、平成20年度の3年生が入学した平成18年度、「修学旅行=奈良・京都」のままでよいのかという意見のもと、教員らが修学旅行について徹底的に話し合った。同校では、運動会、文化発表会などの行事を生徒たちの手で創りあげることが目標で、修学旅行はいわばその総仕上げ。しおりも実行委員会が全て作成する。
教員らが日本全国の歴史や文化について考え、板橋区の上限6万1000円の予算で可能ということで候補地域となったのが、東北・関西・北九州の各方面。「教員ではなく生徒や親が選んだらどうだろうか」という考えのもと、アンケートを実施し、生徒は9割、親は7割が九州という結果となった。
なぜ九州だったのか。「最終的な目的は、クラスに平和を、級友に愛の心をという気持ちを育てることでした。それが平和教育の第一歩と考えております」と平和教育や環境学習などができる九州を目的地とした。
保護者に関しては「有田でのろくろ体験を本当に時間内でできるのか≠ニ心配する方もいましたが、文化発表会の展示では感動していました」と話す吉田教諭の手には、生徒の立派な作品が掲げられていた。
事前学習は吉野ヶ里から担当者が上京し、縄文時代に関する出前授業を実施したほか、航空機に関してもパイロットの航空教室が行われた。
最後に吉田教諭は1日目の宿泊地嬉野温泉にふれ「費用が安い上に広い部屋に数人。生徒は余裕をもって修学≠オて旅行≠オたという気持ちになったでしょう」と語った。
東京都立晴海総合高等学校の齊藤光一校長は、京都・奈良、沖縄から、九州へと修学旅行の行き先が変遷していった経緯を紹介した。
同校は、平成8年度に開校した総合学科の高校。選択科目が多く、修学旅行についても「課題研究」学習活動の一環として位置づけ、総合学科の特色を反映した修学旅行を実施している。課題解決のために、グループ別の行動時間を多くとることも特徴である。
実施に際しては、@歴史や芸術・文化に直接触れる A現代社会、国際社会における諸問題や関連事項に直接触れる B自然の成り立ちや変遷に直接触れる C生き方や将来の希望についての課題発見と課題解決に資する の4つを配慮し、事後学習につなげていく。
平成9年度から12年度までは京都・奈良で実施していたが、これは課題設定がしやく、活動が広範囲だったため。平成13年度からは、平和学習を加味し、沖縄に変更し、17年度まで続いた。だが、同地域が長く続くと、テーマなどが安易になってきてしまうため、これまでの実施の評価をもとに、平成18年度からテーマ設定の素材が豊富な九州へ変更した。
当初は、江戸から明治維新との関わりを知るために良いだろうと、鹿児島を起点とし長崎へ向かっていたが、バス移動が非常に長く、平成19年度からは熊本を起点にコースを見直した。
修学旅行では、1年次の「産業社会と人間」(キャリア教育の一環)の成果をグループ学習などに活用することもでき、「3年生で行う課題研究の手法を学ぶことにもつながります」と3年間の流れの1つとなっている。
「メインは長崎での平和学習で、同じようなコースをとっております。私も体験し、長崎の路面電車を使って普段見落としがちなことをみつけたり、街の匂いを感じたりと良い体験となりました。今後交通網が広がることで九州のほかの地域に夢がつながるでしょう」とまとめた。
10月3日、福岡県に平和学習施設「筑前町立大刀洗平和記念館」が誕生する。この地にはかつて「東洋一」と謳われた広大な飛行場があったが、昭和20年3月の大空襲により多くの人命が失われ、基地機能も大損害を受けた歴史がある。忘れてはならない真実を語り継ぐため、世界で唯一の現存機である戦闘機2機の実物展示や、戦争経験者達の様々な物語を語り部の朗読により伝える「語りの部屋」が特徴の施設だ。
また、太宰府市の九州国立博物館では高校生の文化交流展が観覧無料となったほか、北九州市の門司港レトロ地区では新たに海上保安に関する体験学習「マイスター118」が利用可能となっている。
問合せ=092・643・3429(国際経済観光課・吉水)
唐津市は九州北西の海・山・川の豊かな自然に恵まれ、大陸との交流によって生まれた文化や歴史、伝統が息づく町。その風土は、その長い歳月をかけてじっくりと醸し出された中に、時代の流れによって忘れ去られようとしている知恵、技術、文化、そして人の営みを今に伝えている。
このように恵まれた環境のなかで行われる「唐津体験学習」は、農作業や漁業体験、豊かな素材を生かした食体験及び多様な体験学習で、食や命の大切さについて考えるだけでなく、生きる力を育む絶好の機会となる。
日本有数のヨットのメッカである佐賀県ヨットハーバーでのヨット体験をはじめ、地引網、唐津焼、渓流滝登り、イカダづくり、田植え、お茶摘み、菓子作り、各種料理など多彩な体験プログラムを用意している
問合せ=0952・26・6754(観光連盟・大屋)
長崎県は、「平和学習」をはじめ、海外交流史を中心とした「歴史学習」、西洋・中国・日本文化が融合した独特な「文化体験学習」、普賢岳災害後、世界ジオパーク(地質の世界遺産)に認定された島原半島や次世代エネルギーパークの認定を受けたハウステンボスなどの「自然体験・環境学習」、軍艦島等の近代産業遺産など、豊富な学習素材をもとに、その教育的効果を検証しつつ、次世代を担う青少年の「生きる力」を育む実践教育を全県あげてバックアップしていく。
特に新しいところでは、平和の尊さについて地元の高校生との平和交流も可能で、現在は、9期生として23校53名が活動中。事前学習や講話などアレンジも相談にのる。
問合せ=095・826・9407(観光連盟・法人旅行部教育旅行課)
子ども達が「生きる力」を身に付け、社会人として自立した力を育むことを目的としたキャリア教育を体験プログラムとして取り組んでいる。
障がい者と健常者がともに働く「ホンダ太陽」では、福祉を通じて「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の似て非なる考え方を体験でき、立命館アジア太平洋大学では、留学生との国際交流で世界の文化や歴史を学び、「人とのふれあいや交流」から生き方を学べる。
グリーンツーリズムでは、心のふれあいを重視した農村民泊を通じて、暮らしに残る豊かさや命の尊さ、そして、自分や友達、家族について見つめ直せる。さらに大分の雄大な自然を舞台としたブルーツーリズムの取組やくじゅう連山、日本一の湧出量を誇る温泉、そして、日本一の九重夢¢蜥ン橋など日本一の大分県が体験できる。
問合せ=0977・26・6250(教育旅行誘致協議会 コーディネーター・小田部)
県内で体験出来ることをテーマ別に紹介すると…
@歴史・文化を学ぶ=本丸御殿が復元された「熊本城」、化石発掘が出来る「御所浦島」、国宝に指定された「青井阿蘇神社」、その他「八千代座」「鞠智城」等が学習できる。
A自然を学ぶ=雄大な阿蘇の散策では地学や生物環境を学べ、天草の海では、イルカウォッチングや漁体験ができる。
B環境を学ぶ=水俣病を通して環境を考えたり、リサイクル工場の見学やゴミ分別体験ができる。
C暮らしを学ぶ=農家や漁師の家に民泊し、その家の仕事を手伝う等、熊本の人と自然を丸ごと体験できる。
このように色々な体験が出来る魅力溢れる熊本県は、県自体が、「でっかいテーマパーク」といえる。
問合せ=096・382・2660(教育旅行受入促進協議会事務局・小田、後藤)
宮崎県には豊かな自然やおいしい食べ物、各地に伝承されている神楽やまつりなど地域の中で守り続けられているたくさんの資源がある。
大都市に食料を供給する生産地での農漁業体験はもちろん、世界大会が開催された海でのサーフィンスクール、一流の施設でレッスンプロからコーチをうけるゴルフ体験など、宮崎ならではの「本物体験」ができる。
また、何よりも、ここで幸せに暮らす人々がいて、外からのお客様をあたたかく迎え入れる豊かな人情にあふれている。
「みやざき」の温かい人情とふわりとした空気感にふれ、豊かな自然と大地の恵みを五感で感じることにより、修学旅行で訪れた子ども達は一生忘れられない思い出を宮崎から持ち帰ることができるだろう。
問合せ=0985・26・7103(観光推進課・松木)
鹿児島県は、手つかずの大自然、昔ながらの食文化、豊富な温泉、あたたかい人情など、多彩かつ本物の素材があふれており、個性ある歴史・文化とともに大きな魅力となっている。
こうした特性を背景に、霧島、桜島、指宿、屋久島、奄美等での自然体験、他地域にはない知覧での平和学習、鹿児島市での班別学習や歴史学習、日本有数の農業県で冬でも可能な農業体験や農家民泊、黒豚などの郷土料理体験など、県内各地に特色ある多彩なメニューを用意している。
これらの農業体験などは、鹿児島市からの移動もスムーズで、漁業体験が人気の垂水市は鹿児島市から40分。
多彩かつ本物の素材があふれる「本物。鹿児島県」
修学旅行は、鹿児島へ。
問合せ=099・223・5771(観光連盟国内誘致課・原田)