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教育旅行・体験学習特集

「九州は1つ」を理念に
豊富な学習素材を提供

 九州観光推進機構、九州7県、観光連盟等は、8月11日、都内にて首都圏の中学校、高等学校の修学旅行担当者等を対象に「九州7県合同¥C学旅行説明会、相談会」を開催。約100人の教員及び関係者が参加し、モデルコース説明や、7県の代表的な農林水産等の体験や平和、環境、歴史・文化学習素材の説明、今年初めて航空機を利用した九州への修学旅行を実施した市立中学校と、35年もの間九州への修学旅行を実施している私立高等学校による事例発表などが行われ、多彩な観光資源に恵まれた九州の教育旅行の状況が説明された。

”九州7県合同”修学旅行説明会、相談会

点から面になる広域観光の必要性

 第1部の説明会は、まず、九州観光推進機構の大江英夫事業本部長から「私どもは九州は1つ≠フ理念のもと、県境を越えた観光推進に力を入れております。生徒さんに感動を味わってもらえる修学旅行の実現を目指してお手伝いをして参りたいと思っています」と述べられ、続いて(財)日本修学旅行協会の河上一雄理事長と(財)全国修学旅行研究協会の中西朗理事長による、来賓あいさつが行われた。

 河上理事長は「九州は修学旅行における学習素材が充実しています。今注目されている産業観光も大きく発展しつつあり、環境教育、キャリア教育の最先端地域であると考えています。同時に農産漁村体験も充実し、安全対策についても一歩先を行く地域と感じています」と教育における学習素材の重要性について語った。

 続いて、中西理事長は「素晴らしい学習素材に子どもたちがぶつかった時、知的好奇心が湧いてきますが、それを膨らますのが体験だと考えています。自分というものをぶつけ、限りなく力を注ぎ生まれてくるのが感動です。観光は点ではなく線であり、面に広がっていくものです。これからこのような広域観光の必要性が十分にあるのだと思います」と期待を述べた。

資料”うんちくの旅”は歴史・文化の学習に

 その後、同機構から修学旅行モデルコース・素材説明及び「歴史文化を掘り下げるうんちくの旅=vについて、説明がなされた。モデルコース集には、2〜3県にまたがる多彩な11コースが紹介され、1ページに行程表と主要施設の簡単な紹介を掲載。素材集には、各県の主要施設等計97か所について、そのアクセスや受け入れについて紹介されている。

 また、同機構ではより付加価値の高い旅にしてもらいたいと「歴史文化を掘り下げるうんちくの旅=v集を作成しており、昨年第3巻目が完成した。長年培われてきた九州の歴史・文化を中心に、絵画、食などテーマに沿って知的好奇心が満たされるルートが紹介され、その数は全3巻で150もあり、ホームページにも掲載されている。

 1つのテーマについて、序文・観光のポイント紹介・モデルコース・うんちくの手引きが記載され、県を越えた深く長い九州の歴史が紐解かれている。同機構国内誘致推進部の甲斐和郎部長は「当初はシニア層をターゲットにしていましたが、学校から歴史・文化の学習体験の素材として活用していただいております」と幅広い活用について語った。

35年九州へ修学旅行
人とのふれあいが印象的 
事例発表 藤沢翔陵高等学校

城坂真教諭

 同機構からの説明の後は、神奈川県の藤沢翔陵高等学校(発表者・城坂真教諭)と横浜市立鶴見中学校(発表者・手島史喜教諭)から修学旅行の事例発表が行われた。

 藤沢翔陵高等学校は、35年間九州への修学旅行を実施しており、現在は2年生の3月に5日間行っている。同校では、異国情緒・重厚なる歴史遺産・世紀を超えた街並み・湯けむり旅情・悠久の大自然・伝統と歴史ロマン・人情あふれる街・郷土の味の8つの魅力に注目している。

 5日間の行程で重視しているのは、平和学習・歴史学習・班別自主行動の3点。昨年度は、鹿児島、熊本、長崎、佐賀、福岡のコースを辿り、初めての試みとして、鹿児島の自主見学の実施と九州新幹線利用が加わった。九州新幹線にはバスガイドも同乗し、生徒たちの評判も上々。

特攻隊の真実を真剣に聞き入る

 事前学習は10月頃から本格的に実施し、ホームルームや日本史の授業等で歴史・平和学習を実施している。昨年度は各クラス2名の実行委員を設け、事前に見学地を調べ廊下に掲示。教員も参加し、方言や新幹線などを通じて修学旅行を盛り上げようと努めた。

 事後アンケートによると、鹿児島の知覧特攻平和館や長崎の原爆史料館の印象が強かったようで、城坂教諭は、特に知覧で同年代の少年たちが特攻に行った事実に真剣に耳を傾ける姿に感心したという。「最初はなんで九州なの?≠ニいう生徒もおりましたが、帰ってからは平和学習や気軽に話せる現地の人とのふれあいが良かったと話しており、強い印象をもった有意義な修学旅行であったと信じています」と城坂教諭は締めくくった。

航空機利用の許可で
修学旅行と自然教室を一体化
事例発表 横浜市立鶴見中学校

手島史喜教諭

 今年度初めて航空機を利用した修学旅行を行った横浜市立鶴見中学校からは、まず従来の京都・奈良から九州へと行き先を見直した3つのきっかけが説明された。

 まず、3学期制から2学期制に移行したことに伴う他行事との調整が必要となったこと。2つ目は、施設の老朽化や他行事や他校との時期の兼ね合いから、従来の自然教室を見直す必要があった点。3つ目は、保護者負担額軽減があげられた。

 そこで、修学旅行と自然教室一体化の実現が案に上り、横浜市が平成17年に航空機利用の許可を通達したことで、それは大きく前進。目的地の選定にあたっては、総合的な学習の時間との関係・自然教室との関係・費用などの条件があげられた。
 沖縄からの移住者が多い鶴見という特性上、沖縄が最も身近にあったが、2年前に行われた九州7県合同修学旅行説明会・相談会の参加やその後の検討により、平和学習・環境学習・豊富な体験学習やグリーンツーリズム・3泊で7万円程の費用等から九州に決定した。

ふれあい重視で満足の4日間に

 初の九州修学旅行に当たっては、集合住宅に住む生徒が多い同校の特性を踏まえ「人とのふれあい」が重視された。そして、7万5000本弱の爪楊枝と発泡スチロールを使用した世界平和のモニュメント作り、総合的な学習の時間での平和学習等、教科横断的に事前事後学習を実施。

 行程は、1日目・長崎における平和学習、2日目・長崎市内自主行動での歴史風俗学習、3日目・平戸市生月島での民泊を含めた自然体験学習、4日目・吉野ヶ里歴史公園と太宰府天満宮での歴史学習と設定され、生徒たちの満足度も非常に高いものとなった。

 手島教諭は「今まで行われていた形を変えていこうと資料を集めるうちに、いろんなアイデアを得ることができました。各学年に内容は任されていますので、特色を生かし修学旅行を行うことができればと考えていますが、いろんな場所を選ぶことが出来るのが九州の魅力だと考えています」と発表を終えた。

事例発表総括・7県発表
”よか”の文化が九州の魅力に

相談会は各県がブースで説明

 ここまでの内容を踏まえ、(財)全国修学旅行研究協会の岡野正巳部長から事例発表総括が述べられた。岡野部長は、藤沢翔陵高校が九州を回る中で、変化をもたせることに気を配り、新幹線を活用しガイドさんも一緒という案に感心し「総括すると、人が良かった、のひと言に尽きると思います」と語った。

 また、鶴見中学校については、説明会に出席したことが九州修学旅行の原点になったという話に印象を持ったと話し、そこには人柄や懐の深さがあり「九州の魅力はよか≠フ文化ではないかと思います。この言葉に救われた人、癒された人がどれほどいることでしょう」と語った。

 続いて、7県による体験メニュー・修学旅行素材等の説明が行われ「教育」を念頭にいれた効果的な説明がなされた。トップバッターの福岡県は、産業観光や100年ぶりに建設された国立博物館等を紹介し、佐賀県は、5つの主要地域について体験学習を中心に説明。長崎県は、新学習指導要領に沿って見直した5つのテーマを提案。熊本県はDVDを用いて広大な自然を紹介した。
 さらに、大分県は海をテーマに宇佐・国東半島と佐伯市周辺の体験を紹介。宮崎県は食の安全の観点から、生産地と消費地である首都圏の生徒との交流を提案、7県最後の説明となった鹿児島県は、桜島や屋久島など雄大な自然をメインにした4つの魅力を述べた。(各県の特徴は本ページ下部に記載)。

 説明会が終わった後は相談会に移り、各県のブースに説明を求める教員や、事例発表した2校と情報交換をする姿があり、各自持ち帰った情報がいかにして今後に反映されるかが期待される。